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NO.72 |
- 例会報告
タイトル:「学習者中心」について考える
担当者:左合桜子
Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 72
17/04/02
いよいよ、新学期のスタートですね。
みなさん新鮮な気持ちで、授業の準備をなさっている頃ではないでしょうか。
3月の例会では「学習者中心」について、意見を交換しました。
■例会報告
「学習者中心」について考える
左合桜子さん
今回の例会は、まずPéka文献案内の文章を検討し、次に前回のテーマ「ゆずれないもの」「メソッド」「アプローチ」などのおさらいをしてから今回のテーマ「学習者中心」について考えるという流れでした。
@ Péka文献案内の文章の検討
根岸さんが書いてくださった原案をもとに文献を紹介する文章を考え、次のように決定しました。
「このリストはフランス語教育に関する基本的研究から関連領域の最新研究まで、Pékaのメンバーがそれぞれの視点から推薦する文献の一覧です。」
A 前回のおさらい
前回、英語圏の文献をもとにApproach, Methodなどの用語を検討したので、今回は小松さんがフランス語教育で扱われている用語をH.
BESSE、C. GERMAIN、C. PURENの文献から紹介してくれました。紙面の都合上、ここでは簡単な説明に留めます。
1. Henri BESSE, Méthodes et pratiques des manuels de
langue, 1985, Crédif-Didier (pp. 13-14)
- hypothéses :言語学、心理学、教育学的仮説がまとまってできた言語・言語習得・教育効果に関する理論
-manuels ou ensembles pédagogiques :
理論の実践方法を具体化した教科書や教授法
- leur mise en oeuvre dans la classe :
ある特定の状況で学生のために教師がクラスで行うこと
- méthode :言語教育や言語学習をうまく行うための言語学・心理学・社会教育学的提案や方法
2. Claude GERMAIN, Evolution de l'enseignement des langues : 5000
ans d'histoire, 1993, CLE INTERNATIONAL, collection ''didactique
des langues étrangères" (p. 16)
彼はBESSEの分類にCourantというレベルを加えています。
- courant : 複数のméthodesやapprochesに共通の一般的原則の総体
- méthode ou approche :
学習をうまく行うために考えられた原則、提案、方法の総体
- ensemble pédagogique (ou manuel) :
教科書や教授方法
- pratiques de classe :
教育現場で実際に行われること
3. Cristian PUREN, Histoire des méthodologies de
l'enseignement des langues, 1988, CLE INTERNATIONAL, collection
"didactique des langues étrangéres" (p.
16)
一般に、méthodeは以下の三つの意味で使われる。
- 教科書
-
ある活動を学習者に行わせる方法とテクニック(Purenもこれをméthodeの定義として採用)
-ある時代に独創性のある授業を行えると考えられた方法、テクニック、メソッドのまとまり(Purenはこの定義にméthodologieという用語をあてている)
méthodesは比較的変化しないのに対し、méthodologies
は歴史的形成物である。時代によって目標、言語文化的内容、理論、教育現場の状況などに対する考え方が異なっている。
PURENの分類は非常に階層化されていて、enseignement→didactique→méthodologies→méthodes→techniques→procédésとなっている。
méthodologiesという用語は融通が利かない印象を与えるので、approche(目標、内容、教材のタイプなど学習者以外の要因を考慮して多様化させたméthodologies)やdémarche(学習者の心理や経験を考慮して多様化させたméthodologies)という用語のほうが最近は好まれる。
というわけで、知れば知るほど複雑でこんがらがってくるのですが、色々な用語の共通点も見えてきた気がしました。
B 「学習者中心」という用語の検討
そして今回の議題「学習者中心」の議論へと移ります。まず、「あなたにとって学習者中心とは何か?」「学習者中心にするためにどんなことに気をつけて授業をしているか?」という問題についてグループディスカッションをしました。
学習者中心って? | |
グループ1 | ‐学習者が「学ぶ」ことを教師がサポートする。 「教える」プログラムを優先するのは「教師中心」。 |
グループ2 | ‐学習者が教えてほしいことを見極める |
グループ3 | ‐学習者の希望、目標、理解に合わせる ‐学習者集団のコンセンサスを見つける(しかし人数などが制約条件になる?) |
グループ4 | ‐一人一人に対応する ‐学習者の興味を知る ‐自律的に参加するようにさせる ‐学ぶことをサポートする |
気をつけていること | |
グループ1 | ‐学習者の疑問に答える(場合によっては補講も) ‐学習者の「必要」を見極める ‐学習者に発見させる ‐学習者の立場に立って考える |
グループ2 | ‐学習者へ発問し話す機会を与える ‐グループ活動‐教材を工夫 ‐難しいことも楽しく感じさせる工夫をする |
グループ3 | ‐学習者の理解に気を配る ‐先生に「教わった」気にさせない(自分でやった気にさせる) |
グループ4 | ‐個人としての学習者に気を配る ‐興味を引き出す‐なぜこういうことをやっているのか説明し納得してもらう。 |
そして休憩後、グループディスカッションに出てきたキーワードについて検討しました。
(興味について)
学習者がもともと持っている興味が「ファッション」「料理」など狭い分野に限られている場合、それに追随するのは学習者中心か?
→むしろ、学習者が持っていなかった興味を色々な工夫で作り出してあげるべきではないか。
→学習者にとっては「フランス語ができるようになること」が一番興味のあること。その気持ちを持続させることが大切で、それには達成感を持たせる必要がある。
(達成感をどうやって与えるか)
‐成果を数字化したりして、一人一人にそれぞれの目標を与える
‐少しのことでもほめて評価してあげる
‐一面的な評価にならないように多様な目標設定をする
‐フランス語を実際に使う機会が少ないから、工夫しないと達成感を与えにくい
‐シラバスがきちんとしていないと達成感を感じにくい
(教師の力量について)
‐演劇の素養がある面白い先生の授業を聞いて学習者が自分で勉強するようになるのは学習者中心?
→きっと先生は学生の反応を見ながら興味を引き出しているから学習者中心ではないか(意図的ではなくても)。
こうした議論を通して、「本当に学習者中心であるべきなのか?」という基本的な問いかけや、「学生が興味を持っていることを扱うことだけが学習者中心ではない」、「意識していなくても実は学習者中心の授業になっていることもある」といった興味深い意見が出てきました。次回はもう一度同じテーマを扱い、具体的な実践例をもとに学習者中心を阻む要因を検討しつつ、言語教育理論ではどんなことが言われているかを探ることにしました。
( R.T)
■次回のPékaは...
4月 27日(土) 14:30-18:00
明治大学 リバティタワー
1122教室
お茶の水駅下車、お茶の水橋口を出ると
すぐに左手に見える周辺でいちばん高い建物です。
「学習者中心」について考える 2
(左合桜子さん)
+
大学生が好きな授業活動
-アンケート調査から
(姫田麻利子)
前回のディスカッションをふまえて、今回は、みなさんの授業の具体例とともに「学習者中心」を考えようと思います。
「学習者中心」をめざしたつもりが失敗だった授業、「教師主導型」でもたいへんうまく行った授業など、教師として、あるいは学生として、印象に残っている授業のようすを発表しあいましょう。
(また、参考文献をご存知の方、いいアイディアがひらめいた方、左合まで
( tel&fax : 042-385-****)お知らせください。)
大学生を対象にしたアンケートの結果から、学生が「いい」と思う授業、また「スキ」なタイプの授業はどういうものかも見る予定です。大勢の皆さまのご参加をお待ちしてます。
(左合桜子)
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