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NO.43 |
タイトル:「日仏語の音声」公開研究会報告(1)
テーマ:講演、コミュニケーション
キーワード: 身振り、言語
タイトル:「日仏語の音声」公開研究会報告(2)
テーマ:講演、コミュニケーション
キーワード: 身振り、言語
Péka Pédagogieを考える会
NEWSLETTER 43
le 08 avril 1997
〒102東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学外国語学部
田中幸子研究室tél. 03 3238 3742
郵便振替口座00120-1-764679 PEKA
■例会(「日仏語の音声」公開研究会)報告(1)
コミュニケーションと言語教育におけるジェスチャーの重要性
一ジェスチャーは偶然の産物ではない一
Jacques MONTREDON(フランシュコンテ・ブザンソン大学教授)
前半の講演は仏語で行われ、それが日本語に訳されるすぐ横で、その日本語訳がすばらしい手話によって同時通訳されるという3つの言語を用いて行われました。講演のポイントは、以下の3点でした。
1. paroleとgesteは双子の兄弟である
人が発話しようとする時は、まず自分が言おうとしている内容が頭の中で作られます。そしてその内容は、paroleとgesteの両方のチャンネルを通じて、発話という形をとって現れます。つまり、発話はparoleとgesteの両者で構成されており、この意味において、両者は双子の兄弟であると言えます。この説明の後に、実例として録画ビデオ(日本人・フランス人の発話の2本)が上映され、どちらの場合においても、話者かparoleとgesteの両方を使ってメッセージを送っていることが確認されました。
2. 2種類のgestes:gestes argumentatifsとエンブレム
gestesには、gestes argumentatifsとエンブレムの2種類があります。前者は、論理的関係を表すgesteで、無意識に行われます。例えば、antithèseの時に行われる「指をひっくり返す動作」や、"par ailleurs"と言う時に行われる「首を傾げる動作」がそれにあたります。もう一方のエンブレムは、ある文化を共有する共同体に共通の動作で、意識的に行われます。例えば、"fou"を意味する「人差し指を額でひねる動作」や、ずっと何もしないことを意味するse tourner les poucesの動作がこれにあたります。
3. gesteの起源
gesteの起源を求めると、gesteの使用者が先祖代々にわたって暮らしてきた環境に源を発していることがあります。つまり、住んでいる環境が異なれば、gesteも異なるのです。この実例として、「時間」を表すgesteに関して、フランスとオーストラリアのアボリジニ一の比較がビデオを用いて行われました。
フランス人は、昔から「時間」を「空間」に喩えて来ました。そして、色々な時間を、自分の体とその周りの空間の位置関係で表して来ました。例えば、futurは自分の体の前にあると感じ、動作も自分の前を指すものとなります。passéは自分の体の後ろにあり、passéを表す時は体の後ろを指します。これに対しアボリジニーは、自分違の体の空間的位置によって時間を表すことはしないようです。
それでは、色々な時間を表すgesteが何と結びついているのかというと、彼等の祖先が行ってきた狩猟採取生活と結びついているのだそうです。例えば、彼等の「未来」を表すgesteは、拳を握ってトントンと空をたたくようにするものです。このgesteがまるで杖をついているように見えることと、同じgesteがattenteを表すことを考え合わせると、おそらく杖をつきながら食物採取に出かけること(=これからの未来時間において食べ物を手に入れること)がこのgesteの源と考えられます。
(M.I.)
■例会(「日仏語の音声」公開研究会)報告(2)
ジェスチャーと談話研究
大木充(京都大学教授)
後半の講演は、日本語で行われ、やはり手話の同時通訳がつきました。
1. ジェスチャーとfocus
まず、人が話している時に、ジェスチャーを使って言葉のある部分にfocusを置いている様子が説明されました。最初にビデオで、Jacques Chirac大統領が、イントネーションとジェスチャーの両方を用いて、自分の演説の数カ所にfocusを置いている様子を観察しました。次に、語業とジェスチャーを用いてfocusを置く例、そして構文とジェスチャーを用いてfocusを置く例が解説されました。
2. ジェスチャーの種類と機能
ジェスチャーには、@類像的、A暗喩的、B直示的、Cビート(音声上のストレスと同期している身振り)、Dバターワース(言い間違いや言葉を捜している時の身振り)の5種類があります。ジェスチャーの機能は、@発話を正確に伝える「伝達機能」、A発話の生成に寄与する「認知的機能」、B身振りによる演技を楽しむ「詩的機能」の3つがあります。これらの機能は、一つのジェスチャーに同時に存在し、そのうちのどれかがdominantになるという関係にあります。
3. ジェスチャーと発話の生成過程
ジェスチャーと発話の生成過程としては、2種類が考えられます。まず、これから表現しようと思っている内容が、「発話」と「ジェスチャー」の両方のチャンネルを同時に通じて外に出てくる過程が考えられます。そしてもう一方では、これから表現しようと思っている内容が、まず「発話」のチャンネルを通り、次に「ジェスチャー」のチャンネルを通って出てくる過程も考えられます。後者の考え方だと、ジェスチャーはまず言葉が先に決まり、それをもとにして生まれてくるものとなります。このどちらの考え方が正しいのかという論争には、まだ決着がついていません。
4. ジェスチャーとその談話機能
とりあげられた談話機能のうちの4点を、以下に列挙します。@新しい名詞句を談話に導入する機能(指さしジェスチャーに関して)。A発話のレベルを区別する機能。B話者の視点を区別する機能。C談話にcohésion(結束性)を与える機能。
最後に、両講演を通じて参加者が感銘を受けたのは、手話のすばらしさです。同時通訳もさることながら、手話による質疑応答には会場全体が感動しました、
(1997年2月22日(士)於国立国語研究所日本語教育センター)
(M.I.)
■Péka Info
会計報告一今回のmot clé「カンパ」一
Compte rendu:1996年度の会計報告は表のとおりです昨年度は、宣伝活動が足りなかったためか、単に不景気だったためか、カンパは13件だけでした。新しい項目として、例会参加費があります。これは、外部の方を講師としてお願いする際の謝金をカバーするため、その回に限り徴収したものです。
Remerciement:1996年度自発的にカンパしてくださった個人・法人の皆様ありがとうございました。尚、表にはあらわれませんが、忘年会費用にもカンパを頂きました。この場で、重ねて御礼申し上げます。また、会場を無償提供してくださった上智大学、Pékaの封筒を格安でつくってくださった株式会社耕文堂にも感謝致します。
Agitation:来るものは拒まず、去るものは追わず、ひらかれた集団であり続けようとするP嗣aの活動は、フランス政府補助金と皆様のカンパとによって支えられています。一見余裕のありそうなP嗣aの財政は、実は極めて危険な状態にあります。次年度繰越金のうち50万円は「中川氏基金」です。これが年間の活動費として取り崩して使う性格のものでないことは、会員の意見の一致するところです。これを除く253、061円が実質上の繰越金ですが、支出は今年度も96年度とほぼ同額が見込まれています。皆様のご協力をよろしくお願い致します。
Question technique:送金の仕方を尋ねられることがあります。NewsLetterのタイトル下に書かれている郵便振替口座をご利用ください(手数料60円/通常は振替用紙を領収書とさせて頂いていますが、別にPékaの領収書をご希望の方は振替用紙の通信欄にお書きください。/近況なども通信欄にお書き頂ければ幸いです)。またカンパは例会の折にも受け付けています、会計係に声をかけてください。
*フランス語教授法セミナーは、1996年度は行なわれましたが、収支決済がまだ終了しておりません。これについては追ってご報告申し上げます。
(会計係 鵜澤)
■Péka Info
次回例会について
今回のテーマは「評価」です。「評価」と一言に言っても、いろいろな意味に受け取ることができ、Pékaでも「コンピュータを使ったSP表」や''Foire aux testes"など、いろいろな切り口から取り上げてきました。今回は2つの観点を提案します。(1)授業の中で、「ぺ一パーテスト」以外の部分の評価は、どうやるか?1年間続く授業が、ちょうど4月から始まります。「この授業の評価は、○△の方法で行います」なんて、もう「予告」したりした人もいるのでは?「話す」活動をたくさん取り入れた授業をやったら、その部分の評価をどうやっていますか。その他の部分との関係はどのように位置づけていますか。皆さん、いろいろ工夫しているやり方を、出し合ってみよう。Animatriceの田中は、去る1月にCIEPでformation de concepteurs de sujets de DELFという研修に参加しました。そこで学んだ内容の中から、自分の授業に役立ちそうな部分を少し紹介したいと思います。(2)それにしても、Pékaでやっていることも「評価」してみたらどうなるか。いつも学習者ばかり「評価」しているので、今回はPékaを評価してみよう。学習者を評価するときは、普通、「だいたいこのへんのことはできるようになっているはずだ」というような基準かあって、それに照らして到達度評価みたいなことをやっていることが多いのに対して、「Pékaの評価」は何を基準にしたらいいのでしょうか……みんなPékaにはどうあってほしいと思っているのでしょうか……Pékaのcycle de vieを考えたとき、今どのへんに来たのでしょう。今後は?……そういうことを何も材料なしで話し合おうとしても、なかなかうまくいかないので、とりあえずチェックリストみたいなものを使って評価する作業をしてみたいと思います。当然、チェックリストでは言い表しきれないこともたくさんあるはずなので、そんなことをそれぞれが考えてきてもらえれば、いいのではないかと思っています。
●日時:1997年4月19日(土)14h30?
●会場:上智大学四谷キャンパス10号館3階322会議室
(S.T.)
97年度例会年間スケジュール
●日程
第1回 4月19日(土)
第2回 6月21日(土)
第3回 9月27日(土)
第4回10月25日(土)
第5回12月13日(土)
第6回 2月21日(土)
●時間
いずれも14h30開始、17h30終了予定
●会場
10号館3階322会議室
ただし、6月21目(7号館11階第2会議室)及び2月21日(未定)を除く
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