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NO.212 |
日時:2025年6月21日(土)14:30〜17:30(途中入退出は自由)
場所:早稲田大学 早稲田キャンパス11号館 804号室 (11号館は、1階にファミリーマートがある建物です。エスカレーターで8階まで上がってください。エレベーターは8階には止まりません。)
◆テーマ:同じ教材を1年目と2年目でどのように使い分けるか
今年度は、各例会でTP(travaux pratiques:授業案等作成演習)を実施することになっています。 6月の例会では、共通のdocument(s) をもとに、1年目のクラスで使用する場合と2年目のクラスで使用する場合、それぞれの授業プランを作成・共有しましょう。参加者間のプランや観点の違いを出発点に、FAUX-DEBUTANTS 向けの授業についてアイディアを深める機会としたいと考えています。(提案と進行:姫田麻利子)
早稲田キャンパスへのアクセス: https://www.waseda.jp/top/access/waseda-campus キャンパスマップ: https://www.waseda.jp/inst/student/assets/uploads/2020/08/15_campusmap_2020.pdf
01/06/2025
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PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.212
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加入者名:PEKA
■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時:2025年6月21日(土)14:30〜17:30(途中入退出は自由)
場所:早稲田大学 早稲田キャンパス11号館 804号室 (11号館は、1階にファミリーマートがある建物です。エスカレーターで8階まで上がってください。エレベーターは8階には止まりません。)
◆テーマ:同じ教材を1年目と2年目でどのように使い分けるか
今年度は、各例会でTP(travaux pratiques:授業案等作成演習)を実施することになっています。 6月の例会では、共通のdocument(s) をもとに、1年目のクラスで使用する場合と2年目のクラスで使用する場合、それぞれの授業プランを作成・共有しましょう。参加者間のプランや観点の違いを出発点に、FAUX-DEBUTANTS 向けの授業についてアイディアを深める機会としたいと考えています。(提案と進行:姫田麻利子)
早稲田キャンパスへのアクセス: https://www.waseda.jp/top/access/waseda-campus キャンパスマップ: https://www.waseda.jp/inst/student/assets/uploads/2020/08/15_campusmap_2020.pdf
■■■例会報告 (2025/04/26) //////////////////////////////////////////////<第二言語教育におけるディスレクシア理解と支援を考えるワークショップ>
今回PEKAにお招きした橋本洋輔さんは、国際教養大学で留学生に日本語を教える一方、特別支援教育士として発達性ディスレクシアの支援に携わっています。言語処理や言語習得に関与する脳の活動の研究に取り組むなかで、認知神経心理学研究会に参加したことをきっかけに、ディスレクシアや学習障害(LD)について学び始めたそうです。
現在は、発達性ディスレクシア研究会(JDRA)や日本LD学会の活動に深く関わるほか、ASDやADHDについても知見を広げているところです。例会では、ディスレクシアの理解と支援について、1.見逃されやすい障害であること、2.認知の過負荷による遅れが積み重なるとはどういうことか、3.言語による出現頻度の仮説、4.支援の事例という順で、お話しいただきました。
発達性ディスレクシア研究会による定義は、以下でご覧いただけます。http://square.umin.ac.jp/dyslexia/factsheet.html
1. 見逃されやすい障害
はじめに、グループに分かれてディスレクシアについて知っていることを話し合い、それを全体で共有しました。参加者の認識は「文字認識が苦手」「読むことや書くことが苦手」「鏡文字になってしまうケースがある」といったものでした。また、「日本の学生は自分から言い出すことが少ないが、フランスでは『私はディスレクシアがあります』と自ら伝える人に出会うことがある」といった経験も紹介されました。 橋本さんによれば、ディスレクシアは今も失読症と呼ばれることがあるが、「発達性読み書き障害」と言い換えてよく、実は書く困難の方が現れやすいということです。発話・会話に困難がない子どもなら、真面目に練習していないだけと見なされやすく、気づかれにくい障害であることも説明されました。気づかれにくいけれど、発達障害のなかでも最も頻度が高く、40人クラスに3人存在するそうです。
橋本さんが共有した動画 (https://square.umin.ac.jp/LDDX/ で視聴可能) には、音読がうまくできない小学生が、家で練習してこなかったのかと教師に責められる場面が描かれていました。参加者から「入門クラスではスラスラ読めないのが当たり前なので、動画のような学生がいてもディスレクシアとは気づけない」という声が聞かれました。他には、「合理的配慮願いは受け取ることがあるが、ディスレクシアと特定された例を見たことがない」「他の生徒より冗舌なのに音読ができない生徒がいた」「板書をさせたら大きな字で遅く書く生徒がいた」「USAの大学ではディスレクシアなら第二言語の履修を免除するところがある」といったコメントがありました。
一般的には、読むことや書くことは言語学習の発展を助けるとされていますが、ディスレクシア支援の考え方では、読み書きの克服にこだわらず、音声中心の工夫など、弱い部分を使わずに他の強みを活かして「ハックする」(なんとかやり抜く)方法を工夫することが重要です。ディスレクシアの場合、訓練によってある程度まで読み書きを克服できても、困難は完全には解消しないためです。2. 認知の過負荷
つぎに、ディスレクシアの認知負荷を体験する時間が設けられました。課題は、橋本さんの短い講義(言語使用の「土台」)をノートに取りつつ、イ段とウ段の文字を暗号化する(イ段は2、ウ段は3、ア行カ行サ行…は、漢数字で一、二、三…、とする。例「き」=「2二」)というものでした。文字の読み書きに時間がかかり、それが積み重なって理解が追いつかなくなる体験をしました。 この状態が続けば、途中であきらめる、復習ができない、やる気がなくなる、周囲と比較して自尊心が下がることが想像できました。合理的配慮として試験時間延長が認められても、疲労により十分な効果が得られない場合があることも指摘されました。遅くてもできるので見逃されがちですが、教室活動には一定のスピードが求められ、秒単位の遅れが積み重なって追いつけなくなるという説明がありました。3. 言語ごとの粒性と透明性にもとづく仮説
暗号の形式によって難易度が変わるように、言語によりディスレクシアの出現頻度が異なるという仮説(Wydell 2012)が紹介されました。 この仮説は二つの軸で構成され、ひとつは言語の粒性(granularity = 音と文字の対応の細かさ)に関する軸で、粒が大きい(漢字、日本語など)と意味にアクセスしやすく、ディスレクシアが出にくいというものです。もうひとつは透明性(つづりと発音の規則性)に関する軸で、規則的な言語ほどディスレクシアが出にくいとされます。
さらに、粒性が細かい言語(ラテンアルファベット言語)では音韻能力の弱さが、粒性が粗い言語では視覚認知能力の弱さが大きく影響するという仮説も立てられています。実際、英語では困難があっても日本語ではほぼ問題なく読み書きできた事例も紹介されました。4. 支援の事例
橋本さんは、支援の例として、英語L1でディスレクシアの診断を受けている留学生に対して行った「聴覚バイパス法」について説明しました。これは、文字の形と音を結びつけることが難しい場合、50音表を音だけで覚え(あいうえお、あかかきくけこ、あかささしすせそ、…を早く言えるまで練習)、それから文字とつなげる方法です。これにより、ひらがなの書き取りで満点を取ることができたそうです。 また、試験時にはフォントを大きくする、問題文をささやいてよい許可を出す、助詞穴埋め問題を口頭で実施するなどの工夫を行いました。筆記試験に偏った評価方法はディスレクシアの学習者に負担が大きく、能力を正しく測れない場合があるとし、この気づきは一般の学習者への指導にも活かせると橋本さんは言います。日本のフランス語教師のなかには、フランス語のつづり字と音の規則について、はじめにすべてを教える意義をうたがう人も一定数いて、筆者もそのひとりですが、規則を知ることが有効な学習者もいることを思い出させる事例でした。 支援のためには、教師のふだんの理想的方法論に固執しない柔軟な発想力が求められます。
5. さいごに
橋本さんがLD(学習障害)理解の参考書として紹介したのは、次の3冊です。
- 千葉リョウコ&宇野彰『うちの子は字が書けない』(ポプラ社、2017)
- 品川裕香『怠けてなんかない!』(岩崎書店、2003)
- 宇野彰ほか『標準読み書きスクリーニング検査』(インテルナ出版、2017)例会の最後に、参加者は次のようなコメントを残しました。
「負荷の体験により、どのような発達障害か実感できたことが収穫だった」
「音韻能力と視覚認知能力のどちらに困難を抱えているかで異なると聞き、腑に落ちた」
「認知能力の障害が、負荷の高さによる困難ということを理解できていなかった」
「読み書き困難を抱える学習者により敏感になる必要性を感じた」
「一般の学生に対しても認知負荷を減らすという観点から授業を行うことは重要だと改めて思った」
「合理的配慮と公平性のバランスについて、今後さらに検討が必要だと感じた」末筆となりましたが、あらためて橋本洋輔さんにお礼申し上げます。 (M.H. & Y. H.)
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2025年度の例会日程は、以下の予定です(いずれも土曜日 14:30から17:30まで。変更になる場合もありますので、毎回の案内をご確認ください)。
6月21日(上記参照)
9月20日(テストの作問と評価)
10月18日(Totem 1を用いた授業設計)
12月20日(AIをどのように使うか)
2026年2月21日(2026年度のテーマ)
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