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NO.210 |
日時:2025年2月22日(土)14:30〜17:30
場所:慶應義塾大学SFC 東京サテライト 三田東宝ビル4階(港区三田3-1-7)2025年度の例会テーマを企画します。
2025年度中に話題提供や研究発表などご希望の方は、ぜひご参加ください。
ハイフレックス形式で行われます(どの参加形式でも無料)。
会場に行かれる方は申込みの必要はありません。
11/02/2025
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PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.210
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加入者名:PEKA
■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時:2025年2月22日(土)14:30〜17:30
場所:慶應義塾大学SFC 東京サテライト 三田東宝ビル4階(港区三田3-1-7)2025年度の例会テーマを企画します。
2025年度中に話題提供や研究発表などご希望の方は、ぜひご参加ください。
ハイフレックス形式で行われます(どの参加形式でも無料)。
会場に行かれる方は申込みの必要はありません。
◆ 今後の例会日程は、2025年4月26日、6月21日、9月20日、10月18日、12月20日、2026年2月21日を予定しております。
ぜひご予定ください。
■■■例会報告 (2024/12/21) //////////////////////////////////////////////2024年度のPEKAは、年間テーマを「教師の引き出しを整理する・増やす」と定めた上で、それぞれの例会では「語彙」「文法」「発音」と個別のテーマを絞り、意見交換を続けてきた。12月のテーマは「作文」だった。
参加者の一人から、以下のような発言があった。「来年度より、仏作文の授業を担当することとなった。大学の仏文学科2年生が対象のクラスである。これまでに作文に特化した授業を担当したことがなく、どのように授業を組み立てていくか思案している」。そしてこの参加者は、既刊の作文に関する教科書・参考書を3つのタイプに分けて紹介した。
1)
文法・構文型:「動詞ETRE」「形容詞の用法」等で章立てがされている。もっとも古典的かつ体系的な形である。学習者にとっては説明が単調であり、飽きてしまう可能性が大きい。
2)
「言いたいこと」型:「依頼する」「人を誘う」等、状況に応じた表現を提示している。内容的に類似した表現の異なるニュアンスを理解するのに役に立つ。条件法・接続法を含めた文法をひととおり学んでいることが前提となる。
3)
Calque型:自己紹介文・メール文等、モデルとなる文章が提示され、それを真似て作文をする。学習者が自分事として楽しんで取り組むことが出来る。ただし、言いたいことが先行して自らのフランス語力を超えたことを書きたくなり、翻訳ツールに頼りがちになるため、教師の持続的な注意喚起が必要となる。◆THEMEなのか、EXPRESSION ECRITEなのか:日本の作文教育との関連性
これを受け、別の参加者は、フランス語授業での「作文」の話をする場合、まずTHEME 和文仏訳なのか、あるいはEXPRESSION
ECRITEなのかを明確にしなくてはいけない、と語った。
多くの日本人は、中学・高校の英語の授業でいわゆる和文英訳を「作文」として学んできている。その延長線上のことを大学のフランス語の授業でするのか、あるいは自由に考えたことをフランス語で書かせるのか、授業設計にあたりまずそこを考えるべきである。
1) の教科書を使用した場合、これまで学習した文法をフランス語に投影させる、いわゆる和文仏訳に終始することになるのではないか。
この意見に対し、別の参加者は、「大学の作文の授業で求められているのは、これまで学んだ文法を定着させ使えるようにすること。そうであれば、和文仏訳もやり、自由表現もやり、でいいいのではないか」と発言した。
一般的な大学2年生であれば、1年次の学習事項は春休み中にほぼ忘れてしまっている。初めは文法事項の復習から入り、そこから並べ替え作文、そして和文仏訳へと移行してくのは自然な学習の流れと言えるだろう。また別の参加者は、日本の教育で作文というと、遠足の感想文・読書感想文といった感想文のようなものが想起されることを指摘した。その結果、日本では、思ったことを自由に書けばそれで作文になると思い込んでいる学習者が多い。
この参加者によると、「フランス語で日記を書いたから添削して欲しい」と学習者が持ってくることがしばしばある。「今日はこれをした、あれをした」といった内容を辞書を頼りに書いているが、主語と動詞の並び、文と文のつなぎ方等が滅茶苦茶である。おそらく、言いたいことをまず日本語で考え、それをフランス語にしようとして意味不明な文になってしまうのではないか。
フランス語で書くとはどういうことかを知るために、まずは型から入らなくてはならない。その意味で、3)
のCalque型、モデルの文章がありそれを真似て書くというのはとても大切である、そうすることによって構造的に間違っていない文章を書くことが出来る、自由に書くのはもっと後でいい、と主張した。◆日本の作文教育の弊害
日本では、思ったことや感想を自由に述べればそれが作文になると思い込んでいる学習者が多い、との指摘は、フランスでは、書くことや話すことは、すなわち相手を説得することであるのだが、その視点が日本人には欠けているのではないか、との問いにつながった。
そしてこういった議論に関しては、渡邉雅子『論理的思考とは何か』(岩波新書)に詳しいと紹介された。筆者は、アメリカ・フランス・イラン・日本の学校で教える作文の型から、各国が考える「論理的思考法」の型がそれぞれ異なることを(各国間に優劣をつけることなく)論じている。
また日本の国語教育は道徳・倫理といったものと分かちがたく結びついており、それが作文にも影響しているという指摘があった。
「…を見習いたいと思いました」「…は悲しいことだと思いました」といったことを書くと先生に褒められる、逆に「運動会は大嫌いです」と書くと書き直しを求められる、そういった環境で多くの日本人は作文というものを書いてきている。その結果、作文とは意見・考えを書くものではなく、感情・感想を書くものだと捉えている。フランスにおける作文とはそうではなく、人とは違う自分の意見を述べるものなのだが、それを学習者に理解してもらうには、いろいろな実例を少しずつ提示するなどの必要があるだろう。
フランス語を学ぶ目的が、フランス語を用いてフランス人とやりとりすることにあるのならば、そういった文化を教師が学習者に伝えることも大切だ、との意見があった。
ただしフランスの学校にも、作文と言えばラテン語のVERSIONやTHEMEを思い浮かべる人たちがいて、自らが受けた昔ながらの教育法の優位性を唱える向きが存在するのは事実である。
また、日本の大学入試では小論文が求められることがあるが、この書き方を高校で教えることはあまりなく、受験生は予備校に行くということである。一般に高校の先生は大変忙しく、例えば40人分の小論文をすべて添削するのは難しいようで、これは教育の構造的問題とも言える。
作文は、日本でもフランスでも現場の教師たちが抱える厄介な問題の一つなのかもしれない。◆EXPRESSION ECRITEの導入
日本の作文教育に慣れた学習者たちに、フランス的なEXPRESSION ECRITEを書いてもらえるようにするには、どうしたらよいのだろうか。
ただ単に「作文を書きなさい」と言われても、誰も書くことなど出来ない。ましてや外国語で書くとなればその難易度は途方もなく高いだろう。
そこで、参加者の1人がACTIVITEの例を示した。例えば、「週末にしたことを作文にしなさい」と指示されて、すぐ書き始められる学習者はいないだろう。まずは事前に教師が質問票を用意する。
これを元に、EST-CE QUE TU ES SOIRTI(E) ? EST-CE QUE TU AS REGARDE LA TELE ?
といった、これまでの学習事項で無理なく理解できる質疑応答をペアでさせ、相手の答えをメモさせる。そのときのメモは完全な文でなくてもよい。そのメモを答えた本人に渡し、そのメモを見ながら文を書いてもらう。自分の言ったことなのでメモから文にするのは難しくない。
次に、個々の文を見ていると、この中でこれとこれを言いたい、この順番で言いたい、もっと別のこれも言いたい、ここに説明を加えたい、というのが出てくるので、それらを補いながら文をつなげ、完成した文章に近づけていく。
そうして、次第にもとの質問票から離れた、本人が言いたい内容へと広がっていく。それを音読させたり、他の学習者の音読を聴いて分からないことは質問させたり、そうやって繰り返すことで、フランス語の表現が定着していく。
この活動例は、「ふだん週末に何をしますか」であれば動詞の現在形で、「今度の週末に何をしますか」であれば未来形にアレンジすることが出来るだろう。大切なのは、まずは教科書のDIALOGUEなどを元として、出来る限り多くの正しい文を学習者が自分のものにすることだろう。自分のものにするとは、読んで意味が分かるだけではなく、音のみで聴いても分かる、そして正しい形で再現できるレベルまでを指す。
そうした文をたくさん持っていれば、次の段階としてそれをどのようにつなげていくか、どのような順番で並べていくか、といった練習をすることにより、EXPRESSION
ECRITEの文章に近づいていくのではないだろうか。◆他のACTIVITEの例
前章で紹介した実践例以外にも、具体的なACTIVITEの例が参加者により多数挙げられた。
-
まずは正しいフランス語の文を手書きで写させる。書かせると、アクサンの有無や向きなど、正確に書くことの出来ない学習者は少なくない。発音しないがここにeがある、sがある、というのは実際に手で書くことで身につく。また、きちんと写すことにより発音の習得にもつながっていく。
- 友人にCARTE POSTALEを書く:実際のCARTE
POSTALEを用意し、手書きで書かせる。最近の若者達は手書きに慣れておらず、新鮮だと言って楽しむ。
- PAUL ELUARDの詩 DANS PARIS
を読み、真似をして詩を書く。Calqueの一種である。身のまわりのものを表す名詞と位置の表現があれば出来るので難しくない。
- CADAVRE EXQUIS : 主語・動詞・直接目的補語等、あらかじめ用意をした上でゲームをさせる。文法の復習にもなる。
- OULIPO的な遊びだが、Dから始まる単語、または
-ierで終わる単語等の条件を指定して、出来る限り多く集めさせる。集めた単語から出来る限り多くの単語を使って文を作らせる。制約がある中でCREATIVITEを求められ、学習者は集中する。
- 自分の部屋を想像し、そこに何らかの分野の単語を置いていく。例えば動物に関する単語であれば、IL Y A UN ELEPHANT SUR LE
LIT. 等。そして、その象は何を見ているか考える。L'ELEPHANT REGARDE LA SOURIS
DANSER.こうして知覚動詞の使い方も確認する。これは語彙習得の方法の一つだが、奇異性効果といって奇抜なイメージほど頭に残る。
- 出会い系サイトに載せる自己紹介文(ポジティブな面ばかりを強調)を想像して書く。書いたものを交換してC’est qui ?
と誰が書いたものかをあてる。
- MICHEL TOURNIER, VENDREDI OU LES LIMBES DU PACIFIQUE (1969)
に、主人公が自分の犬をいろいろなものに例えてSI C'ETAIT..., CE
SERAIT...という描写が続く一節がある。この文章を模倣して、何らかの動物や人物を描写する文を書く。
Calqueの一種だが、「何・誰」を描写している文なのかクイズにしてグループ同士で当ててもらうゲームにする。シンプルだが学習者は楽しく学べる。
- ERIC
ROHMERの映画を鑑賞後、真似をしてシナリオを書く。「偶然の出会い」という縛りをつける。自己紹介をする簡単な会話を作ることが出来る。それを、スマートフォンを用いて動画にする。
- MARTIN MARGIELA がHERMESのデザイナーに就任したときの広告で、女性が登場するのに合わせて Tu es aimable, tu
es amoureuse...
とナレーションがつぶやく動画がある。これを利用し、まず穴埋めのテクストを用意して聞き取りをさせる(難しそうな単語はあらかじめ出しておく)。
こうして形容詞の復習をし、新出単語は意味を調べさせ導入、また発音の練習もさせる。最後に、もとのテクストを真似て、自分たちの大学の人はこんな人、と新入生に紹介するための作文を書かせ、それをもとに動画を作らせる。学生達は面白がって、とても盛り上がった。◆評価の問題
こうして学生達に作文を書いてもらったとして、大学の授業である以上、評価の問題は避けて通れない。長く書いて情報量が多いが文法やつづりの間違いが多いもの、文法・つづりの間違いは少ないが短いもの、どちらを高く評価するのかは難しい問題である。
ある参加者は、作文である以上INFORMATIFであるべきであり、またORIGINALITEが重要ではないか、と主張した。長く書いていても、同じ構文を繰り返しているのであれば高く評価することは出来ない。
間違いを恐れずに、勇気を持って書いている態度を評価するような基準が必要ではないか。
一つの解決策として、DELF等での採点法が紹介された。ORTHOGRAPHE, GRAMMAIRE,
ORIGINALITEといったいくつかの項目があり、それぞれに1〜5の評価をつけることが出来る。あらかじめ学習者にこのBAREMEを渡しておけば、どこを評価されるのかが分かり、努力の方向性を定めることが出来るのではないか。
あるいは、「今回は時制を学習したから時制を正確に書けていれば評価する」というようにピンポイントで評価する箇所をあらかじめ指定しておくという方法もあるだろう。長さに関しては、短すぎるのも長すぎるのも問題になる。答案用紙の解答欄に線を引き、「ここまでは必ず書くこと」「解答欄をはみ出さないこと」などと指定しておくのも一つの方法だろう。また、「授業で学習したこれこれの構文を必ず使うこと」「シチュエーションを決めて、これこれの内容を必ず入れること(夏休みにホームステイに行った家庭に手紙を書く、忘れ物をしたので送ってくれるようお願いする、等)」といった縛りを設定することも提案された。縛りがあることにより、書く側のCREATIVITEが刺激されることも期待できるのではないか。
◆おわりに
作文の授業は、学習者にとっても教師にとっても厄介なものである。学習者にとっては、黙って教師の言うことを聞いているだけでは済まず、何かを書かなくてはならない。そして書く内容によっては自分の学習レベルやごまかしをすべてさらけ出すことになり、多大なストレスとなり得るだろう。
教師にとっては、課題設定を誤ると学習者にただ苦痛の時間を過ごすことを強いた挙げ句、意味不明の提出物を添削しなければならない羽目になる。
そもそも「書く」という行為は、何かを表現するためのものだ。本例会の最中に、参加者の1人が、「表現をするとは、何を表現したいかというと、人が知らないことを言いたい。みんなが知っていることを表現しても面白くない」という趣旨の発言をした。
「語学の授業をしなくては」「作文の授業をしなくては」という義務感が先に立ち、表現をするという行為の根本にある当然の前提を忘れてはならないだろう。書くことで他人の知らない何を伝えることは、本来楽しいことであるはずだ。その楽しさを学習途中の外国語でも体験できるような、そんな授業の形を探していきたい。(m.k.)
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