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NO.205 |
日時:4月20日(土)14:30〜17:30
テーマ:年間テーマを決める
場所:慶應義塾大学SFC 東京サテライト 三田東宝ビル4階(港区三田3-1-7)
*Zoomでもご参加いただけます。
Zoomでのご参加を希望する方は、お手数ですが 4月18日(木)までに以下のリンク先からお申し込み下さい。例会前日にご指定のメールアドレスに招待URLをお送りします。 https://forms.gle/ByCsPmXsq7qB1qAP8
07/04/2024
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PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.205
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日時:4月20日(土)14:30〜17:30
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■■■例会報告 (2024/02/17) //////////////////////////////////////////////2024年2月のPEKA例会は、対面でもオンラインでも参加できるハイブリッド方式で開催された。「2年目の授業をどうするか」というテーマで、ディスカッション形式で行われた。
今回のテーマを提案したKさんから次の現状報告があった。 「フランス語やフランス文学を専門としていない、いわゆる第2外国語としてフランス語を学んでいる大学2年生の授業の運営が難しい。1年では週2コマ、2年では1コマ、必修科目として履修しているというのが主なパターンである。1年生のときには、入学後の高揚感や新しい言語を学ぶ新鮮さ等が学生側にあるためか、比較的うまく授業を運営できる。 しかし2年生になると、各学生間のフランス語力の違い、モチベーションの違いなどが顕著になってくる。2年生になると大学生活にも慣れバイトなどで忙しくなる学生がいる一方、きちんとフランス語を学びたいという学生もいて、バランスを取るのが難しい。どのように授業を運営すればいいのか悩んでいる。」 このKさんの悩みに対し、多くの反応があった。
◆制度の問題
多くの大学で、1年では教科書の1巻、2年ではその続きの2巻を学習する、という形になっている。しかし実際には、1巻から2巻への移行が強引である、2巻で内容がつまらなくなる、といった事例がしばしば見受けられる。1巻から2巻への内容の連続性、また収めるべき内容とページ数の兼ね合いなど教科書作成には難しい面もあり、著者達も2巻目を作成するのには苦労しているのではないかという指摘があった。 そもそも、2年になったら1年の教科書の続きを扱うという設定自体に問題があるのではないかという疑問があがった。こうした設定は、学習事項が直線的に発展していくことを前提としている。しかし実際の語学学習とは、同じ項目を横に広げていったり、あるいは後ろに戻ったりしながら続けていくものではないだろうか。 語学は、たとえばスポーツなどと同様、知識の積み重ねではどうにもならず、多くの練習・実践を繰り返すことにより身につけ使えるようになっていくというところがある。にもかかわらず、制度的には直線的progressionのみを語学学習の前提としている。また、教員も学生も、教科書を使用するのならそれをすべて終えなければいけないと思い込み、内容をきちんと身につけないままとにかく先に進めようとする、というケースがよくあるようだ。 膨大な時間をかけて英語を勉強しても使える人がいない、ということはずっと以前から言われているのに、そこに対する反省が教員にも学習者にも足りないのではないかという批判があった。 単純なコマ数の問題で、1年のときは週2コマだったのが2年になると週1コマになる、という点に関して、教師の立場から「学生は前の週にやったことをすべて忘れてしまうので、毎回またゼロから始める、の繰り返しになってしまう」という嘆きの声があった。 学生の立場から考えても、週1だとクラスメートと仲良くなりにくい、授業そのものを受けるというより友人に会うために出席するという側面も学生にはあるだろうから、出席への意欲は減るのではないか、という指摘があった。 また、長期休暇も大きな原因の一つではないかという声もあった。春休みや夏休みの間、ほとんどの学生はフランス語に触れないので、そうすると好き嫌いの問題以前に忘れてしまう。1年の教員と2年の教員の連携というのも基本的にない。しかし、では長期休暇中に大学として何かをやるかといっても、教師も学生も実際問題としてそこまでは出来ない。
◆モチベーションの問題一般的に言って、新しい語学の学び始めはとても楽しい。新しい表現を覚えて実際にそれを使ってみたり、英語とは異なる文法に出会って新鮮な気持ちを味わったりして、毎回の授業で新たな発見に出会うことが出来る。しかしそれが、ある時点でつまらなくなってしまう。それはなぜなのだろうか。 単純に、内容が難しくなってくると嫌になることはあるだろう。文法が複雑になったり、暗記事項が増えてきたりすると、課題やテストへ対応するのも負担になってくる。また、最近の学生はコスパの重視という観念にとらわれている。 語学とは元来多くを投資しないと身につかないものだが、将来使えるようにならないものに時間を割くことに意味が見出せない、この時間を使っても自分が得られるものは単位しかない、と思うと学習意欲は下がるだろう。 これはフランス語に限った問題ではない。1年後期頃になると環境にも慣れ、大学自体がつまらなくなっている学生は少なくないと考えられる。またアルバイト等で忙しくなる一方、取得するべき科目はたくさんあり、その中でフランス語というのは重要度が高くない。 フランス語学習コミュニティに自発的に参加した学生に聞くと、2年生のクラスでの学生間の温度差はすさまじいということだ。フランス語好きは数人しかいない、そうしたコミュニティに参加するとフランス語好きがたくさんいて感動する、とのことである。 学習者がモチベーションを保つためにはどうしたらよいのだろうか。例えば仏検3級を目標にしたとして、合格して目標を達成してしまうとその後が続かないというケースがある。それは、分かりやすい外発的モチベーションで頑張ったが、続けるための内発的モチベーションがなかったからではないだろうか。 大学の単位も、一時的な外発的モチベーションに過ぎない。一般的に言って、普通に日本に住む日本人にとって、フランス語学習への内発的動機付けは生まれにくいのではないか、という声があった。 こうした意見に対し、「単位のためもあるが、受動的態度を必ずしも否定すべきではない。制度的に強制されてやっているが、その中でだんだんと好きになっていくという経験もあるのでは」という声もあった。この参加者は、「大学での学習が終わり、しばらくたってから興味を持つということも起こりうる。 卒業して3年たってフランス人のパートナーが見つかるかもしれない、そのとき後悔しないように、勉強というのはいつ役に立つか分からないから出来るときにしておくべきだ」と学生に伝えるということだ。 また別の参加者は、「毎回の授業で本当に力がついたということが実感出来ていないのでは。90分の授業の前と後で、間違いなく自分のフランス語力が上がったという実感が得られていないのでは」という意見を述べた。 その参加者によると、1つのやりとりを2〜3回ロールプレイングするだけでは定着しない、15〜30分かけてクラス全員で言ったり聞いたりを繰り返し音として忘れないようにする、そうすればしっかり身につき、今日の90分でこれは絶対に言えるようになったと実感できるので、そうして学習したことは簡単には忘れないのではないか、ということだ。 学生のモチベーションというのは非常に繊細な問題であるという証言もあった。ある大学の英語学科でのアンケートによると、小さいときから英会話教室に通い英語には優越感を持っていたが、大学に入ると自分よりずっと出来る学生がたくさん存在し劣等感を感じ英語を勉強しなくなった、という学生もいれば、教師の些細な一言でやる気を失ったという学生もいる。 英語が嫌になった時点で第2外国語のフランス語や中国語に救われる学生もいれば、日本語と英語の両方を出来るというところで自分の場所を見つけていくしかない、との認識に達する学生もいる。 これらの証言は学生がアンケートに答えてくれたものだが、普通こういったことはクラスの中で話さないので、教師がそこを救うことは難しい、教室の中では一定の価値基準で評価するしかない、とこのアンケートを実施した参加者は述べた。 これに対し、「大学には大学の役割があるので、教師の方針についてこられる学生だけを育てればいい、去る者を追う必要はなく、残った少数を厳しく育てればいい」という考えを述べた参加者がいた。 一方、「出来ない学生でも、こちらのやりようでやる気を見せる場合がある。フランス語が好きな学生とそうでもない学生がいるが、フランス語が好きな学生たちだけを相手にするのが我々の仕事ではない」という意見を言う参加者もいた。
◆いくつかの解決法
こうした議論をもとに、2年生のクラスを運営するための具体的なアイディアがいくつか挙げられた。
・線的PROGRESSIONを求めない。1年で学習したことを、別の形のアクティヴィテとして提示する。終わってから、「教科書の何ページを見ると今やったことが載ってるよ、思い出した?」と促す。また、文法事項やトピックが同じであっても、この間はDIALOGUEをやったけど今度はCOMPREHENSION ECRITEをやる、のようにすると学生達は同じことを繰り返しているとは感じない。結果的に、縦ではなく横に広がり、4技能のようなものに膨らむ。
・初級を深める。PENSERとCROIREの違い、EXAMENとEPREUVEの違い、COMMEの使い方、CERTAIN(E), QUELQUE, CHACUN(E)やCHAQUEの使い方等、基本的なことのはずだが1年の教科書に載っていないことがたくさんある。
・接続法等の難しい文法は扱わず、単語を増やしていく。
・2年生の初日にJEU DE L’OIEをする。内容は1年で学習した簡単なこと(AVOIRの活用、1〜10まで言う、等)。ワイワイとゲームをしながら、各学生が何を忘れているか、分かっていないかを学生自身も教師もチェック出来る。
・Duolingoをさせ、一定の成果を達成したら評価を与えると公言する。 ・英語との比較をする(英語学科の例)。
・LIAISONS OBLIGATOIRES, INTERDITES, FACULTATIVESの問題と絡め、REGISTREの話をする。
・言いよどみを教える。会話中に言葉が出てこないとき、黙ってしまうと相手のフランス人が話し始めてしまうが、euh...と言っておけば相手は待ってくれる。 これを使うためにはeuhの発音が出来なくてはいけないから、その練習をする。また、常にきちんとした文を使ってコミュニケーションをしているわけではなく、考えながら話したりするわけだが、フランス語話者は途中で考えがまとまらないときに、動詞で止めずに冠詞まで持って行く。そこで、どの単語がいいかと考えて、さっきunと言ったけれどこれはuneだと思ったら戻ってuneと言い直す。これを真似して練習してみる。
・ネットニュースを読む(=DOCUMENTS AUTHENTIQUESを使う)。例えばリサイクルについて日本の制度、フランスの制度、ケベックの制度を比較して違いを学ぼう、など。政治の勉強をしている学生が「これ知ってる」と反応することもある。
・内容的に教師も初めて読むような文章を提示し、学生達に「あなたたちは知ってる? 分かれば教えて」などと逆に教えを請う。
・宿題にしなくても、駅まで歩く間に10回言ってみて、とか、あちらの教室からこちらの教室に移動する間にフランス語思い出して、とか、しつこくやる。しつこくやらないと身につかないものだとわかってもらう。もともと語学が得意な人たちというのは、こちらが言わなくてもそうしている。
・自分がフランス語で俳句を書くことを学び、学生にも俳句を書きましょうと提案する。
・1年のときに覚えた表現を使って、1文ではなく、ひとまとまりの内容になるよう書かせる。テーマを決めて、つながりのあるCOHERENTなひとまとまりの文章にさせる。
・世の中にないがあったら便利なもの(読みたい本を出してくれる本棚、etc.)を考える。それぞれが発表し質問し合う。 2年生になるとクラスの学生のレベルがバラバラになり、しかも30〜40人のクラスになると、どこにフォーカスを置くかが難しい。 これへの対処法として、毎回一人一人に合わせるというのは出来ないが、例えばグループ分けのときにある回は出来る人と出来ない人を同じグループにする、別の回は出来る人・出来ない人で固める、そして今回はあちらは放っておいてこちらのグループをしっかり見る、 対応できないグループには「すみません、今度の授業でしっかり見ますね」みたいなことを毎回やっていると、学生達も理解してあまり問題にならなかった、という経験が語られた。 2年生はゲームみたいなことをずっとするのでいいのでは、ゲームにしていかに勉強っぽくしないかが重要では、という意見がある一方、そればかりだと学習事項が学生に定着しない可能性を指摘する声もあった。 また、PRODUCTION ORALEやPRODUCTION ECRITEの活動をただ単にやらせると学生はGoogle翻訳やDeepLにすぐ頼ってしまう。そうさせないために、あらかじめ文のひな形や使用する語彙を提示するなど、教師側の準備を求める声があった。 また、学生本人が書いたものかどうかを確かめるためには文を音読させるのも一つの方法だとの指摘があった。 近年ではAI翻訳の技術進歩がめざましい。学生は授業中に、もう文字を打ち込む必要もなく、テクストの上にスマートフォンをかざすだけで翻訳文を手にすることが出来る。確かに実用的な内容(買い物をする、タクシーに乗る、ホテルの予約をする...)を伝えるためにAI翻訳は便利であり、その存在を否定することはできない。 しかし、AI翻訳で例えば友人関係を構築することは可能だろうか。これまでのフランス語教育では、海外旅行に行ったときに役立つ表現のようなことを教えてきたが、それはAIがあればいい、ということになってしまう。そうではなく、実用を超えた部分で外国語が必要になるということを学生に伝えるのも教師の役目ではないか、との議論があった。
◆おわりに
これまでのPEKAの例会で、「2年生」「中級」「A1からA2へ」など呼び方は異なるが、同様の問題を何度も扱ってきている。しかし、これ、という決定的な解決法が見つからないのが現状だ。 初心者への対応の仕方、初級のモデルは各教師がだいたいすでに持っている。その先のモデルがなく、各自が模索しているのではないだろうか。今後のPEKA例会でも、2年目をどうするかは一つの大きなテーマとなり得るだろう。 (m.k.)
■■■例会報告 (2023/12/16) //////////////////////////////////////////////
2023年12月の例会では、日本出身学生と留学生との共修授業や交流授業に関する実践報告がおこなわれた。 まず長年国際共修に取り組む正宗さんによる実践、つぎに姫田さんがフランス語圏からの留学生をローカル学生のクラスに招いて対面でおこなった交流授業が紹介された。 両授業の目標が完全に一致するわけではないが、二人の講師による活動の設計、提案された活動の例、そして参加者のコメントで述べられたこれらの経験の影響を比較すると、コミュニケーションの困難を言語的および非言語的手段で克服する戦略を明示し、定期的に学生と共に反省を行う重要性が明らかになった。 詳しくは、EDFJ 33号(2024年5月刊行予定)をご覧ください。(m.h.)
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