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NO.96

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 96
03/04/2006

新学期の教室は、教歴ン十年の先生も緊張するものとか。
今年初めて出会うクラスをいい雰囲気にもっていけるように、みなさんちょうどあれこれ考えてる頃だと思います。今回は、著者を交えて行った教材分析最後の例会報告と、2006年度年間テーマに関する議論へのお誘いです。

例会報告

教材分析:
A la découverte !(第三書房)
について


竹内京子さん


テーマ:教材、教科書



 今回はA la découverte !(第三書房)」を取り上げ、はじめに参加者全員で教科書の分析を行いました。その後animatriceの竹内さんから実践例の紹介があり、この教科書の特徴であるScènes(小劇)を演じさせる際にどのような点に注意したら良いか?という質問が投げかけられました。

1. 教材分析
例会参加者は3グループに分かれ、竹内さんが用意した記入シートに沿って以下の観点から分析を行いました。各グループから挙がった意見をまとめてみると次のようになります。

@ 教科書の外観について
- 大きさ・厚さ・重さ・紙の質・・・手ごろ/紙質が良い
- 表紙・本文の絵*の印象・・・物語と合っている/可愛い⇔もう少しカラフルなほうが良い/絵が説明的すぎて絵解きに終始してしまう(*中井先生によればこの絵は仏人教師が2年かけて描いたものだそうです)
- 余白・レイアウト・・・書き込めるのが良い⇔余白がありすぎる/字がつまっているところと余白がアンバランス/区切りがわかりづらい
- 使用活字・・・会話と文法事項などの活字を変えてあって良い⇔活字が堅い/フォントなどもう少しメリハリをつけたほうが良い/「I(アイ)」と「l(エル)」の区別がわかりづらい
- 値段・・・やや高めだがCD付きなので仕方ない⇔千円台にとどめてほしい

A 全体について(目次のページ参照)
- 各課の構成(目次)・・・良い⇔順序を追っていて良いが「服装」のテーマがあるとなお良いのではないか
- 扱う文法項目・・・適当⇔順番に問題あり/文法用語が難しい(直接目的語など)/動詞の数が少ない

B 各課について(Leçon 3参照)
- 課の構成・全体の流れ・・・sensibilisationから productionへ移行していて良い⇔ 1課を2回で終わらせるにはリズムが作りづらい/実際の授業の流れとページの進みが合わない
- 単語の選択・仏文の自然さ・・・自然な言い回しが多くて良い⇔ expressionが細切れ/もう少しvocabulaireがほしい/高校生は「食品」のvocabulaireに興味があるのか?
- 文法事項の扱い・・・シンプルで習得すべき表現と連動している⇔難しいところがあり理解が困難。用語なども難しい
- 発音の扱い・・・選択する形式になっているのが良い/口の形が説明してあって良い⇔口の絵があると良い/各課ごとに習得項目が載っていると良い/発音を区別させるのなら別の発音を聞かせたほうが良いのでは?
- フランス語圏の文化的要素・・・身振りがあるのが良い/絵の中に文化が表されている⇔教員の体験が反映させづらい/ハム、チーズ、キャンプ、お城の修復などの文化的要素が盛り込まれているが政治や日常といった仏語圏文化の様々な側面が入っても良いのではないか
- テープの発音・速さ・・・速い・遅いのスピードがわかれているので良い⇔子供の発音に生徒が物怖じしてしまう/ナチュラルスピード(若者のスピード)で大丈夫か?
- 時間配分・・・Scènes(15分)やPrononciation(5分)の時間が短い
- 絵のわかりやすさ・・・フランスの漫画的で良いが、カラーではないので顔が似ていて見分けにくいときがある/感情を説明する絵がわかりにくい
- Exercicesの量と内容・・・理解・表現・記述・口語全ての要素を満たしているのは良い⇔難しい、足りない、文法が定着しない、いきなりproductionになっている/生徒の語彙を増やすためにはリストの選択肢が少ない/「通訳」の必要性をあまり感じない
- Devoirsの量と内容・・・量的に良い⇔量が足りない/難しい/訳がついているのは不要/穴埋めでなく書き写させたほうが良い

C Scènesについて(Leçon1〜15のテープ参照)
- 場面設定・面白さ・・・よく考えられている・続きが知りたくなる
- 演じやすさ・・・セリフが短いので感情をこめにくい

D 教師用マニュアルについて
- マニュアルのわかりやすさ・・・教員自身の勉強になる/細かい指示があって良い・わかりやすい(初めての先生には使いやすい)⇔細かい指示があって大変・しつこい/レイアウトが悪い

 各グループが分析結果を発表した後、参加者からは質問や意見が挙がりました。高校生がこの教科書に興味を持っているかどうかに関しては、生徒たちは教科書の内容よりScènesを「演じる」ことを楽しんでいるというのが竹内さんの感想のようです。これに関して別の参加者からは、準備時間を十分にとり配役を割り振るとみんなよく練習するという意見も出ました。教師用マニュアルがあることやビデオコンクールの存在を知らなかったという声も聞かれ、知っていれば授業のやり方が違っただろうという意見も挙がりました。  
  この教科書を使うことの難しさに関しては、登場する人物のキャラクターが好きになれるかなれないかも大きな要因であり、教師である自分自身があまり好きになれなかったので話を追うだけの授業になってしまったという声や、生徒に役を割り振る都合上、欠席者が出ると面倒なことになるという意見、クラスの人数が30人くらいだと多くて難しいという声もありました。例えばScènesをしっかりやらせるなど、教える側が教える「的」を絞って教科書を使わないと難しいのではないかという指摘もありました。

2. Scènesの評価について
  竹内さんから「Scènesを楽しく演じるのを最大の目標とする授業」の実践例が紹介された後、Scènesを評価する場合どのような基準が良いかについて例会参加者は再びグループで話し合いました。参考として竹内さんからは高校生のフランス語コンクールでの審査基準の紹介があり、参加者からはそれらの評価基準を踏まえたうえで以下のような意見が挙がりました。
- 1人芝居をさせる場合は、教師が目をつぶっている状態でその生徒が「なにを言っているかわかる」ということを基準に評価する
- グループで芝居をさせる場合は、「だれに話しているのかわかる」といった点も重要であり、特別な演技力は必要ないが、コミュニケーションが成り立っているか、自然に演じられているか、心や身体がついていっているかという点も重要である
- 公平に評価を行うためには1人が色々な役を演じる、あるいはセリフが少ないScènesもあることを考えると、複数のScènesを演じさせる必要がある
- わかりにくいフランス語でも教員はなんとなく想像してどんなことを言っているのかわかってしまうので、生徒同士で評価させるのも良いのではないか

3. まとめ
 時間的な余裕がなかったため、最後に参加者全員がグループごとにScènesを演じ実際に評価し合ってみることはできませんでした。
 今回の例会では主にひとつの教科書を取り上げたわけですが、教科書を選ぶ際の基準やScènes(oral)をどう評価するかなど、この教科書を使ったことのない教員にとっても非常に興味深い内容だったと思います。
 著者のお1人である中井珠子先生の参加ということもあり、お作りになった先生ご自身から作成時の苦労話などを伺うことができたことも非常に有益でした。また著者を前にしても、時にはこの教科書に対する「厳しい」意見も出るなど、Pékaが非常に自由な意見交換の場であることをあらためて感じさせる例会でした。
(M.T.)    

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Péka Info

2006年例会日程:
4/15, 6/17, 9/16, 10/21, 12/16
いずれも土曜日14h30-17h30
ピアソン・エデュケーション会議室の予定。


次回のPékaは...

4月15日(土)
14:30-17:20
ピアソン・エデュケーション
102/103会議室 (地階)
(杉並区高円寺南2 - 44 - 5
tel 03 - 3314- 8181
JR中央線高円寺駅徒歩5分
地下鉄丸の内線新高円寺駅徒歩7分)
http://www.pearsoned.co.jp/map.html


2006年度 年間テーマについて
提案者:鵜澤恵子さん


 みなさん、こんにちは。新年度も始まりお忙しい事と思います。今年も頑張りましょう!
さて、pékaの今年度ですが、少し前から考えていることがありました。自分たちの事はあまり話題になっていないなあ、ということです。
 2002年度は、学習者に焦点をあててみました。2005年度は教科書でした。2004年度に、教案をテーマとしたときにも、教材や学習者はの事は取り上げられていましたが、教師が何をするのかはあまり語られなかったように思います。
 同じ事をやっているのだから、みんなわかっていることでしょう?Pékaのみなさんを思い浮かべても、そうではないと気づきます。いろいろな雇用形態、就業形態、人間関係…。どこまでの事が教師に求められているのか、教師とは何をする人なのか。自分の事、自分たちの事を中心に考え、一年をかけて客観的な視点が浮き彫りになっていく事を期待しています。
 で、年間テーマは、「教師の仕事」。
 4月の例会では、問題提起から話し合い、その内容に沿って各例会のテーマを決めたいと思います。ご自分のことを少し意識して捉え、例会に参加してください。「教わる」立場からの教師像でもかまいません。
 では、15日にお会いしましょう。
     (鵜澤恵子)
       

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