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NO.95

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 95
08/02/2006

ここまで主に教員の立場から、教科書を選ぶ時/使う時の分析基準を考えてきましたが、前回の例会では、学ぶ側からの意見を聞きました。そこであがった項目を反映することだけが今後求められているわけではなく、彼らのsavoir-apprendreの向上についても教員の対応が求められているのだと思います。

例会報告1

教材分析:学習者の視点 1
ー 学習経験から

松川雄哉さん 守田悠佳子さん
坂本恵さん


テーマ:教材、教科書



  今回の例会は途中での出退席者を含めて合計27名の参加があった。第1部では現在大学院生の松川さん、守田さん、坂本さんから学部生時代の経験を聞き、第2部では司会の善本さんが学生アンケートの結果報告、分析を行った。

●松川さん:Champion 1を使った経験
「フランス語の授業は週に文法2回、会話1回、LL1回、総合が2回あり、文法を除いてこの教科書が使われた。第一印象では、高校時代の英語の教科書に比べカラフルで好感が持てたが、登場人物や絵柄は好きになれなかった。
 教科書の構成は16のunités からなる。 1年間の授業ではunité10まで進み、やらなかった箇所もあった。会話のクラスはフランス人講師が担当し、すべてフランス語で説明され、その後に生徒同士でdialogueを練習するというものだった。LL教室は音声教材を用いてphonétiqueをし、生徒全員がおなじフレーズを聞き答えさせるというものだった。総合の授業は文法問題や会話などをやっていた。使った感想は、タイプされた字体しか見たことがなかったので、手書きの文章が読みづらかった。その他exercices の答えを埋める箇所に点が3つあるだけで戸惑った。当初馴染みのなかった教科書も一年生の終わりには違和感がなくなった」
← LL機器を使いこなすには教師が工夫しなければならず、教科書がLLに向かない場合にはプリントや音声教材を用意する必要がある。
← 総合の授業は本来lectureとécritを学ぶ筈だが、会話の授業と重複していたと思われる。理由としては教師の連携不足、授業進行のずれなど。

●守田さん:Le Nouveau Sans Frontières 1 を使った経験
「LLの授業でphonétique とdialogueが使われた。教科書の印象は高校までのものと違う大きさで、イラストが多く、文字が詰まっていて、余白に書きこみをしづらかった。一年生にとって教科書の見た目は重要で、開いてみたくなるような教科書がいいと感じた。厚みがあり、一年間やっても終わらなかったので達成感はなかった。
 使ってみて良かった点はleçon毎に何を学べるのか示されており、また、unité毎に話題が変わるので、新たな気持ちで次のunitéに進めた。問題点ではないが、文法事項が提示されているだけだったので、他の文法の授業を頼りにしていた。
 英語の教科書では英語圏が思い浮かばなかったが、この教科書ではdocuments authentiquesから学んでいる国のことを実感できた。教師が自らの体験を語ってくれたことも参考になった」
← コラムなどでフランス文化を伝えるものがあるといいいのでは。
← 大学受験を目標とした英語文法とフランス語の勉強は根本的に違うので、教師の側から文法書を紹介した方がいい。
← 生徒はフランス語の文法用語を知らないのだから、表を示した方が分かりやすいのでは。

●坂本さん:Panorama2の経験
「3年生の時にフランス人による総合の授業でこの教科書を使った。第一印象は大きい(持ち運びしにくい)、重い(辞書も持たなければならないし)、高い(cahier d’exercicesを含めて4000円ぐらい)の3重苦。
 使ってみると、気に入っていつも持ち歩いていた。理由としては絵、内容にヴァリエーションがあって興味をもてたから。体裁としてはdialogue, grammaire, vocabulaire, civilisationが各2ページずつだった。
 不満点は、書き込むスペースがないので、他にノートを用意していた。2年次にはノートをつくったが、activités が多い授業ではとる暇がないので、授業によってどうするか決めた。テスト勉強にはメモを使った」
← 書きながら理解できることもあるので、教師が生徒にノートをとることを喚起する必要がある。
← 穴埋め問題は穴を埋めさせるのではなく、全文書き取らせるべきだ。
← 一人が言い、もう一人がそれを書き取るなど、書くことをactivités に取り入れるべきでは。
← 教科書への書き込みは、フランスでは教科書を借りたりするので、出版社も書き込むことを想定していない。これは穴埋め問題の欄が小さいことにも関係するだろう。

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例会報告2

教材分析:学習者の視点 2
ー 学生アンケートの報告

善本孝さん


テーマ:教材、教科書



 第二部では善本さんがアンケート報告を行った。このアンケートは今年11月後半、大学、短大でフランス語を学ぶ学生168名に実施された。
 まず例会参加者にアンケート用紙が配られ、学生の意見を想像して答えることが求められた。
 設問1では「よい教科書」について:
-「難しくても内容が豊富/簡単で内容が軽い」-「詳細な説明/要点だけの説明」
-「白黒でシンプル/色刷りで絵や写真が多い」-「文法/会話」
という2項のどちらがより重要かを5段階で問うものだった。設問2は「勉強しやすい教科書」に関し:
-「文法などの説明文の明快さ」
-「レイアウトの明快さ」
-「音声教材の付属」
-「会話や文章の面白さ」
-「フランス文化への言及」
-「安価であること」
の6点の重要性を問い、こちらも評価は5段階だった。
 アンケート結果のいくつかは我々の想像に反していた。まず、設問1では「難しくても内容が豊富」「詳細な説明」「色刷りで絵や写真が多い」という項目が望まれ、「文法」と「会話」についてはどちらにも偏りがなかった。専門、第二外国語の学生ともに、難しくとも説明の詳しいカラフルな教科書を望んでいるという結果が出た。
 設問2では「説明の明快さ」が7割以上の学生に支持されたのを筆頭に、「レイアウト」、「フランス文化」が高い支持を得たが、「内容の面白さ」や「音声教材」、「価格」はそれ程重要でないという結果が出た。
 これらの結果から、善本さんは学生の知識偏重傾向を指摘した。
 報告を聞いた参加者からは、以下の意見、質問があがった。
−学生は教科書に知識のすべてを求めているのではないか。  
−詳しい教科書を求める要因として、全部分からないと嫌になるのではないか。 
−フランス語はテストのための勉強でないと分からせること、一つの答えではなく、答えの多様性を教えることこそが重要ではないか。
−詳しい教科書をあえて選ばないほうが、教師の能力が問われる。
−アンケートの設問について、「難/簡」と「内容の豊富/簡素」を別にして問うべきでは?フランス語の教科書のイメージがない生徒には比較検討できないのでは?という意見があった。善本さんは「今までどういう教科書を使ってきたかも考慮に入れ、質、量の調査も加えていきたい」と返答なされた。

 今回のアンケート結果は大変興味深いものだった。なぜ学生は詳しい教科書を望むのか。第一部で語られた方達と違い、あまり熱心でない学部生だった私には、その理由がテスト前に自習する為だと思えた。もしそうだとすれば、詳しすぎる教科書は授業軽視に繋がる。
 いずれにしろ学生の要望を理解した上で教科書を選ぶことは重要である。また、設問を変えることで学生の関心や問題を知ることができるだろう。こうした意味で今後も定期的にアンケートをとるべきだと思った。
(R.K.)    

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次回のPékaは...


2月18日(土)
14:30-17:20
ピアソン・エデュケーション
102/103会議室 (地階)
(杉並区高円寺南2 - 44 - 5
tel 03 - 3314 ? 8181
JR中央線高円寺駅徒歩5分
地下鉄丸の内線新高円寺駅徒歩7分)
http://www.pearsoned.co.jp/map.html

A la découverte !(第三書房)について
司会:竹内京子さん

 高校生のためという名目で出されている唯一の教科書ですが、他の教科書と比較して様々な点で違いがあります。今回のPekaにおいては、教科書と指導マニュアルを見ていただき、どのような授業ができるのかを話し合いたいと思います。
 実際の実践例を紹介し、この教科書の特徴である小劇を演じる際にどのような点に注意したらよいのか?成績などの評価方法はどうしたらよいのか?について参加者の皆さんと一緒に考えます。

Péka Info

2006年 例会日程:
4/15
6/17
9/16
10/21
12/16
いずれも土曜日
14h30-17h30
ピアソン・エデュケーション
会議室の予定
です。

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