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NO.93

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 93
20/10/05

 教材分析をめぐる例会3回目の報告です。ふだんは「使いにくい」印象の教科書も、例会でグループディスカッションをする時には、使い方についてどんどんオリジナルな工夫が思いつくのは何故?...

例会報告1

教材分析のさまざまなcritères

黒木朋興さん
常盤僚子さん
根岸純さん

テーマ:教材, 評価, 問題形式


 前回の議論の延長として、Initial, Studio60,Taxiの三冊にしぼって、さらに詳細かつ実際的な分析を試みました。
 まず、三冊を使った経験のある、あるいは現在も使っているanimateursの3名が、「試験、成績評価(授業と試験の関係、どういう試験にするか、特に、筆記試験をどうするか)」について現場からの報告をしました。

☆Initial(黒木さん)
長所:予習していない学生でもついてこられる構成。
問題点と対策:知らない人名等が出てくる→無視 ? 雑談の材料に。文法が単元毎に並んでいない→ペアのもう一方の授業が文法重視なので一任。もっと文法を勉強したいという要望がある→未解決。communication の授業をしていると筆記試験が作りにくい。
試験:書取りを学期末2,3回、範囲をしぼって予告し、授業中に模擬試験を行った上で実施。その他:エクサンプロヴァンスでフランス人学生に日本語を教えた時、3,4年生用の教科書がなく、特に試験に苦労したので。その他当時日本製の日本語教科書がフランス人教員に不評だった。日本人教員がフランス製の教科書に感じる「使いにくさ」と同じかもしれない。

☆ Studio60(常盤さん)
選んだ理由:会話を勉強したいが話すのは苦手、という学生には聴きとりから入るのが良いと考え、聴きとり重視のStudioを選んだ。授業週2回のうち1回はLL教室を使い、3~40分を独習と個人指導にあてている。
問題点と対策:dialogue にイラストがついているだけで文が書かれていないため、学生が戸惑う。録音のスピードが速い。未習事項、未習単語が出てくる。全体に「ここで何をするか」「どこで何を学習したか」が見えにくい→補助プリントを多数作成。向き、不向きがある→帰国子女や、勘のよいタイプに向く。
試験:聴きとり3割、文法等7割の筆記試験を2回実施。聴きとりは授業中と同じ内容をテープで一斉に行う。学期末に一人ずつ読み方などのインタビューテストをする。

☆Taxi!(根岸さん) 
問題点と対策:一年で終えるには分量が多すぎる→内容を取捨選択する。文法が体系づけられていない、文法項目が網羅されていない→参考書ではないのでラフで良いのではないか。各課に一回の授業をあてている。3人で組み、順番に交代しながら2人がdialogueを演じ、一人が教師との連絡役になって発音、演出について指示を伝える。初めは日本語訳を与えるが、段々宿題にしていく。dialogueの書写を重視。目標:辞書を使って文を読み書きできること。日常会話に触れるのは発音と文字の関係に慣れるため。話せるようになりたければ、よそで勉強するように、と恩師に倣って明言している。試験:60分で3問の筆記試験。持ち込み可。授業中に行った activité をそのまま出すが、指示を一部かえて、創作させる。

 次に、出席者が各自興味のある教科書を選んで5グループにわかれ、発表者が配布したコピーを材料に、「料理の仕方」と「試験」を話合いました。

☆Initial(8課、カフェで注文する) 
Groupe A. 授業:Vocabulaire→録音をとめながらEcoutezの内容の確認→重要表現をピックアップ→対話練習→グループ練習→カフェのメニューを使って会話の創作、実演。
試験:毎月一回実施。授業を反映した成績評価にする。 
Groupe B. 授業:Vocabulaire→Ecoutez→教科書を伏せて録音を聴く→復唱→教科書を見ながらモデルを覚える→Activité を順に→2はメニューを使う。日本語のメニューも可→3を全員で→二人で→設定を決めてオリジナル会話を創作。
試験:聴きとり3割、語彙と文法7割。その他1対1やグループでインタビューテスト。

☆Studio60 (1課p.12〜p.13、自己紹介、挨拶、etre 動詞、職業)
授業(p.12):イラストを見ながら挨拶の仕方を学習→教師主導でリレーしながら練習→イラストからストーリーを想像→録音を聴く→イラストと対応させる→簡単な部分を復唱→内容の確認→(p.13):説明しながら既習内容を復習→録音を聴く→tu / vous で自己紹介と対話の練習。
試験:重要な点を部分的に書き取り。p.13についてvrai / faux で問う。

☆Taxi (1課、Bienvenue ) 
Groupe A. 授業:クラスを二つにわけて挨拶、自己紹介の練習→二人で練習→本文の録音を聴く→読む→イラストと対応させる。文法は宿題か自習。
試験:口頭 = 二人で創作した会話を実演。筆記 = 語群から主語に合う活用形を選んで書き込む。
Groupe B. 授業:教科書に入る前に挨拶を学習→録音を聴く→聴きながら時々文法説明。細部よりも全体を考えさせる。教科書なしで activité をどんどんやる。翻訳はしない。動詞活用で、教科書が省いている人称も、出した方がわかりやすいと思ったら出す。わかりやすくなることが大切。
試験:筆記 = 会話の穴うめ、自分で人物を設定して会話を書く。口頭 = 二人でそれを実演。授業中にあらかじめ写真などを材料に文を作っておく。

 最後に感想、意見、新たな疑問、そしてフランス語教育の根幹にもどって...
<教師が教科書に出てくる有名人などを知らない場合どうするか?>:
「本当に有名ならば紹介する価値がある」「学生がどれ位フランスを知っているかを見る指標になる」「固有名詞は綴りの読み方の練習に最適」「学生と教師が一緒に学ぶことでクラスの融和がはかれる」「思考力を養うという語学の授業の主眼からははずれる」
<日本製の教科書と比較して、使う側の意識の差は?“使いにくさ”の違いは?>:
「日本製には会話が少ない」「日本製は流れが読めて面白味に欠ける」「日本製かフランス製かよりも大切なのは目標、教科書を学ぶのではなく教科書で学ぶのだ」「クラスによって千差万別」「教師との相性もある」「フランス語を教えるのだからフランス製が使いたい」
<“穴うめ聴きとりテスト”について>:
「=擬似書取り?聴きとり能力は測れない?」「内容についてvrai / fauxで問う方が良い?」「全員で答える書取りにしている。教師が「主語は?」「目的語は?」などの質問で誘導しながら答を板書する」「本文を“虫食い”にしたプリントを渡し、3回録音を聴かせ、下から正解を選ばせる」
<“聴きとれる”とは?>:
「ある語を全体の中から拾えること?全体が理解できること?」「“あてはまるイラストを選べ”はイラスト次第!」「本当にフランス語が出来なくても出来る?」「これが出来たらフランス語が使えるようになる?」「学生は“聴き方”こそが教わりたい!」
<communicatif って何? communicatif の授業って何?>:
「communicatif=会話??」「教科書に出てくるのは他人の人生、それをなぞるだけ、覚えるだけでなく、自分の人生を語れなくてはいけない」「話す主体は本人、本人が使えるようにしなくてはいけない」

 今回は台風の影響が心配されましたが、幸い満員の盛況でした。
(Y. N.)
    

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Péka Info

2006年フランス語教育国内スタージュ

日本フランス語教育学会、日本フランス語フランス文学会、駐日フランス大使館の共催で、2006年3月23日から26日間での4日間、フランス語教育国内スタージュが東京(恵比寿)の日仏会館で開催されます。これは、2003年まで開催されていた蓼科(志賀高原)スタージュに代わる新しいスタージュとして両学会およびフランス大使館の緊密な協力のもとに実施されるものです。本国内スタージュ修了者は、2006年夏にフランスで実施されるフランス政府のスタージュに派遣される予定です。
 参加を希望される学会員は、学会ホームページに近日掲載される募集要項にしたがって2005年11月30日までにご応募下さい。

Péka Info2

Haïku翻訳コンクール


月刊情報誌「フラン・パルレ」では、在日カナダ大使館、ケベック州政府在日事務所、日本フランス語教育学会から後援を受け、フランス語圏カナダ・ケベック州の俳人、アンドレ・デュエムの俳句集「Pelures d'oranges(オレンジの皮)」収載俳句の日本語訳コンクールを開催しています。詳しくは、
http://franc-parler.main.jp/
をご覧下さい。




次回のPékaは...

10月29日(土)
14:30-17:20
明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)


Consignesから見た教材選び

司会: 土屋良二さん


 選んだ教材の使いやすさ・使いにくさと、consigneの関係に注目して、クラスにおける指示の役割について考えてみたいと思います。
(土屋良二)


*ご案内が間際になってしまったこと、お詫びしますと共に、みなさまお誘い合わせの上、ご参加いただきたくお願い申し上げます。(姫田)

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