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NO.89

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 89
03/02/05

この時期に悩むのは、評価のことと来年度の教科書のこと。採点に追われて、
えいやっ!と直感で教科書を決めてしまうと来年度中苦しくなるし。
みなさんは、どういうcritèreで教科書選んでいますか...

例会報告

料理のRecettesを教材として使う場合の
教室活動について

竹内京子さん


テーマ:構成,教室活動
キーワード:授業の構成,高校のフランス語,活性化

 今回のテーマはお料理!楽しみに集まった参加者は20人を超す大盛況で、調理実習のアルバム写真に見とれながら、皆教案作りに励みました。


I.調理実習を組み込んだフランス語授業

 竹内さんは、以前ある高校の食物調理科のフランス語を担当したのをきっかけに、調理実習を組み込んだフランス語の授業をしているそうです。この授業の目的は以下のようにまとめることができます。
○ 調理実習をフランス語授業の “イベント”として位置づける。フランス文化紹介の場とする。
○ 辞書を引く機会を与える。Recettesのフランス語に特徴的な不定法や命令法、冠詞の使い方などを学習する。
○「料理を作る」という具体的な目標をもってフランス語を学び、運用する機会を提供する。

 現在は普通高校で、年に一度調理実習をしているそうです。定番メニューはQuicheとTarte Tatin。この組み合わせは、予算(一人300円以内!)や作業効率の点でお勧めとのこと。また日本であまり知られていない料理を扱うことによって生徒の関心を惹く、という効果もあるそうです。

 竹内さんのフランス語授業の調理実習へいたる流れをまとめると次のようになります。
1.まず6月頃、QuicheとTarte Tatinについて、インターネットなどで日本語の情報を調べ、レポートにまとめてもらいます。
2.夏休み直前には、辞書の引き方を教えるとともに、Quiche Lorraineのrecetteプリントを配布し、意味を調べてくることを夏休みの宿題にします。
3.夏休み明けに宿題を回収。その後しばらく(ビデオコンクールなどの行事が目白押しのため)期間をおいて、2学期末に夏休みの宿題の答え合わせとTarte Tatinのrecette説明、実習時の役割分担その他の相談をします。
4.1月中〜下旬に実習本番。2時限(50分x2)の授業時間内に、調理、試食、後片付けまでを済ませなくてはなりません。

 今後、竹内さんが改善したいと考えているのは、以下の点についてです。
◎ 調理実習中にもフランス語を使う場面を増やせないか。
◎ 生徒が自主的に作るものを選ぶようにできないか。
◎ 日本料理について同じ表現を使って作文するなどの応用ができないか。
◎ Recettesを他の教材と同様に気軽に授業で使えるようにできないか。


II.教案づくり

 竹内さんの授業紹介のあと、参加者はグループに分かれ、教案の作成をしました。選んだRecettesについて、年間計画+準備の日+調理実習当日+その後の教案を作ることが目標です。竹内さんから渡されたRecettesは次の3種類でした。
Cuisine facile en français facile, Paris : Hachette, 1974. から:動詞は不定法、短く簡潔な説明のもの。
−以前の勤務校にあった本(詳細は不明)から:最初に材料リスト、命令法で書かれた詳しい手順のあるもの。
−ALTの先生手書きのRecettes:フランス人の筆記体、材料リスト+命令法の文。


グループ1
 年度初めから予告し、何を作りたいかを学生に決めてもらう。/文の構造がだいたいわかった頃に、全3回を調理実習関係にあてる。
1.材料、手順、道具について日本語で話し合う。recetteをばらばらな状態で提示し、並べ替え練習。日本語で作り方をまとめる。
2.当日、recetteを大きく張り出す。ALTにフランス語で指示を出してもらう。
3.実習後、体験したことをpasse composéで作文。余裕があれば、C'était bonなどの感想もつけてもらう。


グループ2
 ポトフを作る。11〜12月はじめに実施。
1.準備日。テキストを読ませる。動詞だけをまず辞書で引く。lasser cuireなどの表現を説明。部分冠詞、数量表現などの学習。命令法にする練習。ママゴトごっこなど。
2.当日。班長が命令文で指示。試食時、レストランの場面を復習(注文の仕方など)。
3.実習後、passe composéでまとめ。C'était+形容詞で感想を述べる。


グループ3
 週100分授業、高校1年生の2学期を想定。Pot au feuを鶏肉 (poule au pot ?)で作る(経済性を考慮)。
1.普段の授業のあと、レシピを配る。不定法、数量表現に線を引かせる。調理の主な手順(4つ)を区別し、まとめさせる。
2.2週目、宿題で単語の意味を調べてきてもらい、結果を発表してもらう。
3.3週目、調理して食べる(圧力鍋を使用)。

グループ4
後期の終わり頃、cassouletを扱う(あまり知られていない料理であるため)。ただし、実際の調理実習は行わない。
1.フランス語のレシピを配り、どんな料理か想像してもらう。cassouletについて宿題で調べてきてもらう。翌週授業前に提出してもらい、教師は授業までに結果をまとめておく。
2.授業中、chefのグループとapprentiのグループにわかれる。chefグループは日本語版の作り方をもらい、フランス語版と比較しながら、材料リストを作る。apprentiグループはフランス語版のみをもとに材料を考える。両グループ間で会話を行う。
Qu'est-ce qu'il faut ? - Il faut une tomate.
Vous avez des tomates ? - Oui.
Vous en avez combien ? - J'en ai deux. など。chefが動作を指示し、apprentiはそのしぐさをする、など。

グループ5
料理をすることが目的ではない、ということを大前提として、いかに調理中にフランス語を使わせるかを検討。準備時にたくさん口頭練習しておくことが肝心。
不定詞、冠詞、数量表現を復習として “使う”。
1.最初に出来上がり写真を見せ、Qu'est-ce qu'il faut pour faire ce plat ?などの質問と答えをグループで練習。特殊な語彙(saler, poivrerなど)は絵つきリストを配り、actionや道具を見せる。chef役とapprenti役に分かれて会話練習。役割分担、買い物リストなどをフランス語で話し合い決める。
2.実習当日は、必ずフランス語で、準備時に練習した文を使うことを徹底する。試食時にはappréciationの表現を練習する。


グループ6
2年生の授業で3週を使う(50分x3)。
1.goût, alimentの表現復習。日仏の食文化について(この日はレシピを使わない)。
2.写真を使って買い物のシミュレーション。Il faut acheter du sucre. Prends du chocolat.(命令法)、 Il en faut combien ?(量の表現)などを用いる。レシピをもとに料理の動作、手順を理解する。
3. 4人グループで調理実習。交替でchef役、指示を出す。
4.実習後、接続詞やpasse composé、appréciationの表現を使ったまとめ。


                ***

 調理実習によってフランス語が現実の目的に結びついて学習され、達成感と満腹感!を味わってもらうことができるのであれば、こんなに素晴らしいことはありません。ぜひそういう授業を私も受けたかった・・・
 しかし一般的に、フランス語授業の枠内で調理実習を行うことは、設備その他の事情が許さない場合が多いでしょう。また教師にとって調理実習の指導は、多大なエネルギーと細かな気配り、そして何よりもフランス語教育以外の技術(料理)を求められることであり、なかなか竹内さんのようにうまく実現することは難しいかもしれません。
 ただ、実際に料理しないまでも、フランス語レシピは、量の表現、不定法・命令法などの学習教材として、また文化についての学習教材としても、ぜひ積極的に活用していきたいと思いました。
(S.K.)

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次回のPékaは...

次回のPékaは…

2月19日(土)
13:30-16:30

ちよだパークサイドプラザ
7階会議室B

千代田区神田和泉町1
tel 03-3864-8931
JR・地下鉄日比谷線秋葉原駅から徒歩7分
/都営地下鉄岩本町駅から徒歩10分
下記地図をご参照ください。

http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/sisetu/sports.htm
(↑の下の方に地図があります。)

場所と時間がいつもと異なります。
ご注意ください。



「読解能力を高めるには?」

常盤僚子さん 西川葉澄さん

 話し言葉の教育が注目されがちな昨今、以前より学生の読解能力が下がったという報告も出ているようです。訳読一辺倒に陥らず、コミュニケーションのための読解能力を伸ばすには?教授法のトレンドや私たちの試行錯誤の例をご紹介した後、皆さんと一緒に「講読」の授業の教案をつくってみたいと思います。
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