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NO.88

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 88
18/10/04

フランスやフランス語学習について日本人学生が持っているイメージは
stéréotypeである..というのは,実は教員の学生に対するstéréotypeでしかない
のかも...。ふだんの教案を紹介し合うのは,自分が持っている学生に対する
イメージを相対化するのにも,役立つ気がします。

例会報告

Comment essayer de développer les compétences orales
avec des débutants non-spécialistes en vue d'une autonomie en français,
à travers divers supports pédagogiques?

Philippe Callensさん
& Gaël Crepieux さん


テーマ:実践
キーワード:コミュニケーション,学生の希望,授業のイメージ

 PhilippeさんとGaëlさんによる今回の発表は,そもそも,大学でフランス語を選択した学生たちが,フランス語への関心を抱いているにもかかわらず,時間を追うにつれ脱落していくのはなぜか,また他方で,大学外の語学学校が隆盛を示しているのはなぜかという疑問から出発しています。大学のフランス語教育が抱える問題を,( I )学習者と学習目標,( II )教師と教育環境の面から問題点を整理し,最後に( III )教材を使って具体的に教案を練りながら,何らかの解決のヒントを探そうとするのがねらいでした。

I.学習者と学習目標

 今回対象とするdébutants non-spécialistesは,週1-2コマ,第2外国語でフランス語を学習する初級者です。彼らの動機とニーズとは?...グループになって話し合いました。
−英語以外の言語を学びたい。
−フランス文化への関心。しかしかなり表層的で,ステレオタイプ化したイメージしか持っていない。
−旅行に行ったり,映画を理解したい。
−単位取得等々。

 学習目標については,PhilippeさんとGaëlさんは次のように考えているということです。
−会話力の養成をメインにする。教室では,学生が一人でできない会話練習を中心にすべきであり,宿題を与えてそれを定着させる。
−聞く,質問する,答えを理解するという一連のコミュニケーションを,学習者が助けを借りずに自律的に行えるようにする。
−フランス語で覚える。カタカナ表記の問題:カタカナ表記したものを,ただしくフランス語に書き直せない。例えば,“Je n’ai pas.”→ “Ju ne pas”, etc.
−よりよいフランス語授業のために,学習者と教師の情報交換を行う。目標については,Cadre Européen Commun de Référence pour les Languesを参考にできる。


II.教師と教育環境

 まず実際にクラスで授業を行う際に教師が出会う困難はどんなものかを,グループで話し合い意見を出し合いました。
−文法に関する困難:日本語にない冠詞,動詞活用,発音など。
−英語からの移行
−学習者の姿勢を変えること:いかに学習すべきかを学ばなければならない。既習事項をスパイラル方式で定着させるべき。しかし学生の欠席の多さが学習の進行を妨げる。
ー異なるタイプの学生(学年,専攻等)をどう扱うのか。
−ネイティブの教師の抱える問題:利点は学生を刺激できること,不利な点は,学生が怖気づいて黙ってしまうことなどがある。
−クラスの雰囲気づくり。学生の緊張をといてクラスに参加させることの難しさ(学生は間違いをするのが恐いので発言しない。教師が権威的すぎる?)

教材について)
 使いやすい教材として,学生が興味を持つ題材,学生の生活などに関係する題材を扱っているもの,教師にとっても興味あるもの,ゆっくりした進度のもの,Illustrationsのあるもの,Chansonsなどを取り上げているもの(難しさもある)。自分でプリントを作るという意見もありました。
使いにくい教材としては,話題が学生の関心をひかないもの(例えばタイヤ交換の話題),つねに新出語彙ばかり使っているもの,一文が長すぎるものなどが挙げられました。

教師の役割について)
 教師はすべてを説明すべきという意見では,学生は全部分かると自信になる,説明なしですぐ実践するのを難しく感じる学生がいる,説明をほしがる学生がいるという理由が挙がりました。
 対して,説明ばかりだと,学生は黙りコミュニケーションができない,実践を通じてできるかぎりメカニズムを練習させるのがよいという意見もありました。その際,コミュニケーション型の授業のやり方が分からない学生もいるので,説明が必要との指摘がありました。これについては,PhilippeさんとGaëlさんから,Conversations dans la classeの日本語での前書きにある「教育契約」が有効ではないかと提案されました。

授業で使う言語について)
 フランス語使用の利点は,耳をならすことができる,余計なことを言わずに,簡単に説明できる等々。(学生にフランス名をつける工夫,しかし学生同士では使わない傾向...)
日本語への翻訳は,フランス語の正しい意味合いを教えずに,日本語の意味合いにすりかえてしまうという指摘もあがりました。


III.教案作り

 TaxiのL.29 ”Souvenirs, souvenirs”の最初の2ページと,イラスト,そしてGaelさんとPhilippeさんが用意してきた教案ガイドラインが配られ,グループで具体的な教案を作りました。各グループが作った教案の内から,いくつかのactivitésが紹介されました。

−ペアになって,インタビューの文中の”Quand j'étais petit(e), je voulais être…”を使って会話。その後,テキストにある半過去形の動詞をリストアップして,共通点を探させる。『フランス語21』のイラストを使って練習させる。
−まずイラストを使って学生に喋らせ,学生の能力を調べる。次にインタビューを聞かせ,知っている単語から内容を想像させる。これがどんな種類のdocumentかを想像させる。学生に,主人公になったつもりで,インタビューをさせる。
−ペアで,「前は…が好きだったが,今は…が好き」という表現を使って会話しながら,互いの共通点を探させる。Sujetを変えながら。
−P.84,2の問題をさせる。黒板に覚えるべきフランス語の文をまず書いて,リピート。次に問題の単語を日本語に書き直して,元のフランス語で言わせる。今度はその部分を消して,元のフランス語を言わせる。(Elle voulait être chanteuse.→Elle voulait être歌手.→Elle voulait….)
−半過去と複合過去と混同させないように,必要があれば説明する?あるいは,なにも説明しない?

まとめ

 I, IIに関してお2人が考えたことが,最後に紹介された教案ガイドラインとどのような関係にあるのか,お2人がこの教材に対してどのような教案を実際に作ったのか,話していただく時間がなかったのが残念でした。口頭コミュニケーションを中心にした教案には,特別のむずかしさがあるのか,これは今後の例会で検討するべき課題になるのでしょう。
 雨の中,みなさまお疲れ様でした。
(A.O)
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■次回のPékaは...

次回のPékaは…

12月11日(土)
14:30-17:20

明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)


料理のrecetteを教材として使う場合の教室活動について

竹内京子さん


例会後には,忘年会もあります。
ぜひご参加ください。


フランス語で書かれた料理の作り方を教材にして調理実習まで行う授業の実践を,まずご紹介します。その改善策について参加者の皆さんからご意見をいただいた後,皆さんにもrecetteを使用する授業の教案を作成していただこうと思っています。
(竹内京子)

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