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NO.86

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 86
13/09/04

9月になりました。新学期です。
今回は、communicatifな教材の中で行なう文法説明について、
教案例のご報告です。次回のご案内(シャンソンの授業ための教案)は裏面です。
Qui chante ?

例会報告

「文法」の授業の教案について

根岸 純さん
善本 孝さん

テーマ:構成,実践,クラス運営,文法
キーワード:授業の構成,授業のイメージ,教材

  「教案」をテーマにした今年度第2回目の例会が、6月12日、24名の参加を得てにぎやかに行われました。今回は、担当である根岸さん、善本さんの司会で、文法の授業の教案を作成しました。最初に根岸さんの方から、教案に基づいて実際に行われた授業についての報告がありました。

1) 根岸さんの報告
 根岸さんは普段は詳しい教案を書かないとのことですが、今回はあらかじめ作成した教案に基づき、A大学の経営学部で1クラス、B大学の法学部で2クラスの授業(いずれも第二外国語初級クラス)を行いました。教案はA4を横長に用いたもので、時間配分、授業の流れ(教科書の該当箇所)、学習項目、文法項目、教師の指示、実際の時間経過などが書き込まれていました。実際の授業を行った結果、A大学では教案の一部しか消化されなかったそうです。一方B大学では同じ内容の授業を行った2クラスのうち、最初のクラスではほぼ教案どおりに進行したのに対し、次のクラス
ではあまりうまくいかなかったとのことでした。A大学についてはactivitésに必要な時間の見積もりを誤った(10分の予定が45分に、等)、B大学では、片方のクラスの学生が積極的に参加しないというクラスの特性に原因があるのではないか、というのが根岸さん自身の見解です。教案を作成した上で授業を行うことについては、教案の存在がプレッシャーになり、「かえってしんどい」との感想が。しかし教案を作る利点としては、授業の流れ、文法項目、何をやったかなどを後で確認でき、自己批判にも役立つことが挙げられました。また質疑応答では、教案は、授業の流れや時間配分だけでなく、教科書以外の教材について、板書の内容のメモなど、さまざまな情報を書き込んで活用できるのではないか、との意見が出ました。

2) 教案作り
 次に善本さんから、今回の教案作りの設定について説明を受けました。
- Taxi ! 1 (Hachette) (根岸さんがB大で使用した教科書)のLeçon 1 ≪ Bienvenue ! ≫を題材に教案を作る。
- クラスは初級で、導入部のLeçon 0を学習済みとする。
- 90分の教案、つまり全体の大まかな時間配分を示す教案を作るが、特にLeçon 1に登場する文法に関する部分を細かく作成する。その際、「文法」の範囲はどこまでか、何をどれだけ扱うかを考える。
 このような設定が提案され、参加者は4人1組になって教案を作成し、順次発表を行いました。

3) 各グループの教案
林さんのグループ
 最初の10分でウォーミングアップ、次の65分で今日の学習内容、残りの15分はまとめ。目標の提示→文法説明→ペア/4人練習→まとめ(目標の確認)という流れが基本。Façon de dire (Saluer, Se présenter, Demander et dire le prénom et le nom)から入る。文法は、まず教師が少し実演し、「今日の目標」として文法項目を説明する。次に学生にペアになって練習してもらう。êtreの活用も同様に学習。次にペアを2つくっつけ、il, elleを導入し、最後に活用表を導入。s'appelerは説明なしで、表現として扱う。男性形、女性形の違いは、学生たちに発見してもらう。聞き取り練習を行い、その後にLeçon 1冒頭のDialogueに移り、それからまとめ。

井上さんのグループ
 最初にdialoguesを聞かせ、リピートさせる。教師がつづりと発音の説明を行う。次に、1人ずつ指名してリピートさせる。Grammaireの項目を、Dialogue 1を使いながら説明し、発音(リエゾン)も解説する。s'appelerをDialogue 2によって簡潔に説明。同じようにDialogue 3を使って、男性形、女性形を説明する(ただし、ごく簡単な例にとどめる)。Qui est-ce ? はひとまとめにして覚えてもらう。その後に、Exerciceに入る。このグループの教案は、「文法は教員による説明によって理解してもらう」という方針にのっとって作成されていました。

小出石さんのグループ
 Façon de direからはじめる。≪ Je suis Aline Dore ≫, ≪ Je m'appelle Lucie Ferro ≫ のところまで練習しながら、Je suis, Vous êtesまでを教師が説明する。次に絵を見て場面を想像しつつ、Dialogueをペアで練習。そのとき、Grammaireのêtreの項目を見て、動詞が活用するという話をする。Dialogues 2, 3も同様に学習する。なおDialogue 3では、il /elleについても説明する。Activité 3は宿題にする。ここまででおよそ75分の所要時間とのことですが、このグループによれば、「90分の授業では、75分ぐらいの内容でちょうどいい」とのことです。

常盤さんのグループ
 まずDialogueから聞かせる。説明なしでフランス語を聞かされたときの「わからなさ」を体験させつつ、想像力を働かせてそれぞれのDialogueと絵とのマッチング(Découvrez)の練習をしてもらう。次に、Façon de direに移る。Saluerは、簡単にペアで練習してもらう。Se présenterは、男性形/女性形の説明をしつつ、語彙としてjaponais(e)を付け足した上でペア練習。その文法的説明として、être(英語のbe動詞との比較しつつ)とs'appelerを導入する。再びDialogueに戻り、最後に練習問題を行う。

小松さんのグループ
 主として学生たちによる会話練習、推測を重視する。最初に、Leçon 0の復習。各自、教室内を歩き回り、次々と挨拶する。席に戻ってもらい、Qui est-ce ? C'est... を導入する(挨拶はすませたので、名前はわかっている)。ここまででおよそ25分経過。次に、教師がJe suis japonais(e)から発音し、il est japonais, elle est japonaiseと続け、êtreの形に注目させる。学生が「音」の違いに気づいた後に、活用表を確認する。Exercice 2を行う(ここまでで45分)。次に、男性形と女性形の導入。japonais/japonaiseを強調してから、Exercice 4を行う。残った時間で、本文(Dialogue)を読んだり、読み合わせたりして終了。

高瀬さんのグループ
「主語と動詞、男性形と女性形がわかってほしい」という目標のもとに授業を行う。まず、テキストなしでDialogueを聞いてもらう。グループごとに、絵だけを見て状況を想像する。Découvrezを行う。次にテキストを見て、どの人物がどの名前なのか、考えてもらう。その上で、Dialogue 2の ≪ Je m'appelle... ≫をもう一度聞く。Grammaireのs'appelerを説明し、2人グループになり、自己紹介の練習。今度は4人グループになり、ほかの人を紹介する。このときに、je, vous, il, elleの違いを説明しておく。Dialogue 1と3を聞く。êtreについて、je, vous, il, elleにおける違いをグループごとに発見してもらう。Dialogue 3のnationalitéでjaponais(e)を言えるので、CommuniquezのExercice 5を行う。このあたりでJe m'appelleとJe suisの違いの質問が「出てくるはず」なので、説明。もし出なかったら、こちらから提示する。

4) まとめ
 以上の6つの教案が提示された後、意見交換とまとめが行われました。司会の善本さんの感想としては、もちろんこれには時間や材料の問題もかかわってくるが、文法説明をexpliciteに行うものが結構多かった、とのことです。姫田さんからは、学生のどこに信頼を置くか、学生が「気づくだろう」「気づかないだろう」と考えるかでやり方に違いが出てくる、という指摘がありました。林さんからは、グループのなかでもみんな違うし、学習者にもよる、という補足がありました。文法の教案づくりがテーマだったのだから、もっと文法説明だけの教材を取り上げてもよかったのではないか、という意見に対して、善本さんからは、「文法」と「コミュニケーション」という区別自体がおかしいのではないか、どんなテキストにも文法があり、それを意識する上で教案を作るのはよいことではないか、との意見がありました。これに対し小松さんからは、両者の違いは大きいし、分けるべきところでは分けるべきでは、という意見が出されました。

 なおも活発な議論が続くなか、残念ながら時間切れとなり、例会は終了となりました。
(N.M.)

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次回のPékaは...

9月25日(土)
14:30-17:20

明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)

「シャンソンを活用した授業の
教案について」

富田 今日子さん

ぜひご参加ください。


まず、私が行なっているシャンソンの授業と、先日ご協力いただいたアンケートの結果からいくつかのユニークな取り組みを取り上げて、ご紹介します。その後、シャンソンを実際にどうやって授業で使うか、いくつかのシャンソンの歌詞をその場で配り、曲を聴いていただいて、教案作成作業に入りたいと思います。
(富田)

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