Pékaトップページ       過去ニューズレターMENU    

 

NO.85

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 85

31/05/04

今年は5月から台風が来たり、真夏のような日の後に寒い雨の日が続いたり、
風邪も流行っているようです。のど・咳の風邪の時、授業は本当につらいですね。
長い6月、体調を整えて乗り越えましょう。
♪♪

例会報告

大学2年生の授業で
document authentique - publicité
を使う場合の教案づくり

小出石 敦子さん
姫田 麻利子さん


テーマ:構成,実践,クラス運営
キーワード:授業の構成,授業のイメージ,教材文化, 評価

  4月の例会は、2004年度年間テーマ「教案づくり」の第1回目として、参加者全員で一つの材料を取り上げ、教案づくりに取り組みました。まず今回の担当者である姫田さん、小出石さんより、題材の内容、教室の設定などについて説明がありました。

教材について
  今回の教材は、実際に小出石さんが大学から指定されているもので、主に書き言葉としてのフランス語習得を目標としているテキストです。各課に一つdocument authentiqueが載せてあり、それについての問題を解いていく形式になっています。今回扱ったのはSNCFの広告で、電車に乗って窓を眺めている女性の写真、時間通りに運行すること、安全性をうたった黒字と青字のコピーがついていました。

クラスの設定
  大学2年生(小出石さんが受け持つ学生たちは一年次に必修科目として週3コマのペースでフランス語を学んできたそうです):必修としての週1回90分の授業。必修としては唯一の授業なので「書き言葉」だけでなく、総合的にコミュニケーション能力を伸ばす方向で。

その他
  各々が学生に身につけさせたい目標に合わせてテキストに載っている要素を取捨選択可、Exerciccesはテキスト以外のものも使用可。

  参加者は、以上の設定の下でペアになって実際に教案を作りました。作成した教案について発表する前に、まず小出石さんと姫田さんの作ったモデルの教案が配られ、これについて話し合いました。以下に、お二人の教案の特徴を比較して記しておきます。

○小出石さんの教案       
 -設定として一人作業が出来る学生を想定。
 -教師が引っ張っていく授業。
 -広告であることは、最後に伝える。
 -教科書の問題通りの指示(最初は学生の反応をみるため)。
 -時間配分:写真の描写15分 / 黒字部30分 / 青字部5分

○姫田さんの教案
 -一人で書くことが無理な学生を想定
 -学生がグループで活動することが中心になっている授業。
 -先に広告であることを示す。
 -写真についてペアで文章や会話を作らせる(会話を生み出すアクティヴィテとして)。
 -時間配分:写真の描写30分 / 黒字部25分 / 青字部5分
 
  次に二人組になって作った教案について、授業の流れや工夫したアクティヴィティ、そして苦労した点などを発表しました。

○宝田さんのグループの教案
  授業の流れ:90分のなかで扱うのは写真と黒字部とそれについての問題のみ。最初の45分で写真についての問題をする。全員参加が大切なので、6つのグループを作り答えを書かせる。黒板に書くと時間がかかるので、書き込み用のプリントを作っておき、それを集めて、プロジェクターで映しだして直していく。まず最初の設問に20分、その答え合わせに20分。次の45分で黒字のコピーについての問題を教科書通りに5人グループで行う。グループ活動にして学生に参加させるのが目的。
  苦労した点:写真のatmosphèreを表す単語を挙げる問題については、答えがないので難しい。この教案に対しては、5人組みでは活動に参加しない学生が出てくるのではないか、という指摘がありました。

○松岡さんのグループの教案
  授業の流れ:5人グループになり、各グループ毎写真をみてストーリーを作る。写真提示の際、文字があると影響を受けるので、スキャンなどして写真のみを示す。グループではまとめる人、書く人、発表する人など役割分担をさせる。模造紙を上下二つに分け、上に単語のみ、下に物語を書かせる。写真の描写を紙に書かせる。配られた模造紙に書き込んでいき、それを黒板に張り出す。この教案については、いつ添削をするのかという質問が出ました。教師が各グループを回って授業中に訂正させるという回答でした。

○根岸さんのグループ
  授業の流れ:3人組で写真の描写をし、発表は口頭でする。教師はそれを板書するが、添削は板書しながら。教科書通りに問題を行う。Atmosphèreを表す単語の問題は抜かす。条件法の問題は難しいので最後にする。最終的に新しいコピーを作らせる。
  難しい点:学生が何をどれだけ学んできたかによってポイントを置くところが異なってくる。このSNCFの広告の大切なところは青字なので、辞書を使いtrainを確認する。この教案に対するコメントとしては、他の広告をみせたり、日本の鉄道との比較もおもしろいのではないかという指摘や、青字の方が短いし使いやすいといった意見が出ました。

○フィリップさんのグループ
  授業の流れ:写真には最初の45分を充て、一般的な導入をする。SNCFや写真のイメージについて質問する。書くよりも会話を重視する。次に黒字部を扱う。表現や文法の説明などをし「電車に乗るか?」「いつも同じ電車か?」といった簡単な質問を口頭でする。さらに「電車で同じ人に会うことがあるか?」「日仏間の電車の雰囲気の違いは?」などフランス語での会話を基本に授業を進める。条件法はJe voudais un caféなどで練習。テキストの設問ではなく、もっと簡単な質問を口頭で。設問は宿題にして提出してもらう。

○土屋さんのグループ
  授業の流れ:写真とテキストを理解すること、習った表現で的確に表現することを目標とした。作業は4人組で各々10分ぐらい。テキスト通りに進め、回答はなるべく文章で答えさせる。女性の描写も10分ぐらい。Atmosphèreは難しいようなら、「出来る」学生にあてる。黒字部は一人ずつ読んで、設問について考えさせ、発表させる。条件法の復習は口頭でするが、学生があまり分かっていないようなら、例文を出す。Document authentiqueは色々な要素があるので、目的を明確に設定。そしてコミュニカティヴな活動をする。
  難しい点:クリエイティヴな活動に発展させることが難しい。この発表で「難しい問題は出来る学生に」という発言について、教案には書かないことだが、教師が授業の流れ的に行なっていることだという指摘がありました。

○冨田さんのグループ
  授業の流れ:4人組で写真について話し合う。まずは「いつ」「どこ」「SNCFは何か」を明らかにした上で、女性についてのみ表情や服装、動作、年齢などを単語レベルで考えさせ板書で発表。それをもとにグループで描写を5行程度作り、口頭で発表。さらに写真についての好き嫌いを学生に答えさせる。 ≪ C’est triste ? ≫ ≪ C’est romantique ? ≫など好き嫌いの理由も引き出す(atmosphèreの代わり)。つぎに黒字を学生に音読させる。その際雰囲気を出すように感情を込めて読ませる。
  このactivité=「雰囲気を出して音読」については、グループ間でcompétitionまでもっていけたら面白いのではないかという意見がでました。

○鵜澤さんのグループ
  授業の流れ:写真を長く使いたいが、学生がどの程度できるか分からないので描写はしない。写真には時間をかけず、写真の女性に話しかけたらどうなるかを想像させる。あるいは彼女になって日記を書いてみる(グループで授業時に。その際過去形とje voudraisを使って書くことを指示)。

  このように、一つの教材を扱っていながら、様々な教案ができあがりました。全体のまとめとして、次のようなコメントがありました。
 -どういう学生をイメージしているかで違いが出てくるかと思っていたが、どのグループも「それほど出来ない」という学生のイメージは共通。
 -グループの人数は様々だったが、グループの人数が授業の途中で変わるものがなかった。
 -当該Document authentiqueは何か、の提示の仕方にも違いが見られた。

  例会の最後には、「教案作り」の例会のオーガナイズについても、話し合いました。
 -今回やってみて、テキストと学生のレベルが合っていないことが難しい。
 -今後設定をどこまで決めるかを考えた方がいいのではないか?
 -制約があった方が色々でてくるのではないか?
 -皆が同じものに携わる方が色々な面がでてくるのではないか?

 最後まで白熱した意見交換が行われ、予定時刻をややオーバーして終了となりました。
(M.T.)

上へ



Péka Info

中村啓佑さん
Problèmes typiques des apprenants japonophones du français (駿河台出版社)
刊行のご案内

 中村啓佑さんが過去の論文や学会での発表を一冊の本にまとめられました。この『Problèmes typiques des apprenants japonophones du français (フランス語学習者が直面する典型的な問題点)』(駿河台出版社)には、フランス語学習者が直面する問題点が文法・音・意味、及び日仏の文化の違いの面から扱われています。
 Pekaのメンバーにお贈りくださるとのことです。希望される方は、メールで宝田までご連絡ください。
*なお本の郵送料に関しては自己負担とさせていただきます。

次回のPékaは...

6月12日(土)
14:30〜17:20

明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)

「文法の授業の教案について」

根岸 純さん  善本 孝さん

5月に実施した授業の教案と、
その教案をどれだけ生かせたか、それとも生かせなかったかについて報告するつもりでいます。学生・生徒たちに伝えられる文法とはどういうものが理想的なのか、についても提案したいと思っています。大学で行った三つの授業をサンプルにします。
 いやー、それにしても5分とか10分刻みの授業は辛かった...  (根岸)

上へ


Pékaトップページ     過去ニューズレターMENU