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NO.84

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 84

09/04/04

さて、新学期。今年の学生はどうですか?
毎年、4月初回の授業は、期待半分、不安半分、こちらも緊張しますね...
今年度のPékaは、いろいろなタイプの教案づくりに取り組もうと思っています。
教案しっかり作ってあると、教室に入るときの緊張度が少し和らぎませんか?


例会報告1

フランス語教材としての映画の活用法
L'exploitation des oeuvres cinématographiques en classe de langue

宝田 麻美子さん


テーマ:文化, 評価
キーワード:コミュニケーション

  2月の例会では、宝田麻美子さんの修士論文の一部分についての発表が行われた後、2004年度の計画についての話し合いが行われました。
 まず、宝田さんの発表についての報告から始めます。宝田さんの修士論文は、日本のフランス語教育における映画の活用法についての研究で、今回の例会では、その一部として以下の2点について発表が行われました。
(1)まず、映画に関し、フランス語教員に対して行ったアンケートの集計結果に対する分析が加えられました。
(2)次に、宝田さん自身が映画を使って行った授業についての活動報告がありました。
(1)教員へのインタビュー
 16名の日本語を母語とするフランス語教員に対し、インタビューが行われました。質問は、「映画を使ったことがあるか?」「何を教える目的で使ったのか?」「問題点・工夫する点は?」「映画(又は映像)を使って教えると良いと思うことは何か?」「学生の反応は?」等です。このインタビューの結果、映画の使い方に関しては次の3つのカテゴリーがあることが判明したとのことです。
カテゴリーA:初級レベルに対し、特定の学習目的を持って映画を使用する(例えば文法を教える、会話表現を教える等)。
カテゴリーB:中級レベルに対し、特定の学習目的を持って映画を使用する。
カテゴリーC:特定の学習項目のために映画を使うのではなく、フランス語学習への意欲を高めるために映画を見せる。
 カテゴリーBよりもカテゴリーAの方が活用例が少なく、初級者に特定の学習目的を持って映画を使うことは難しいと考えられていることがわかったそうです。次に、カテゴリーCを挙げた教員からは、学習に結びつくような映画の使い方がわからないし、準備も大変であるというコメントが多かったそうです。そして、特定の目的を持って映画を利用しているカテゴリーA・Bの教員からは、体系的な利用をしようなどとかたく考えずに、自分が教えたいと思うことを映画を利用して自由に教えればよいのではないかという意見もきかれたそうです。
 以上の調査結果から、現在のフランス語教育の現場においては、様々な状況(レベル・人数・授業時間数など)に対応できるような映画利用法のガイドラインがあると便利なのではないかという結論を、宝田さんは導き出しました。これに関しては、例会参加者からも賛同の意が示され、是非そのようなガイドラインが欲しいとの希望が出されました。宝田さんの修士論文にはそのガイドラインが載っているそうですが、今回の例会では時間の関係からガイドラインの紹介は見送られました。ガイドラインには、クラスの規模や設備、三択や穴埋めなどの問題形式など、いろいろな選択肢が用意されているそうです。
(2)映画を使った授業の活動報告
 宝田さんは、映画を使った授業について、その準備から反省までを4つのetapesに分けました。
Etape 1:使用する映画を選び、授業で使うシーンを選択し、学習目的を決める。
Etape 2:授業で行うactivitésを準備する。すなわち、教案を作成し、fiches de travail(タスクシート、ここでは実際の授業で配布して学生がそれを使って学習するプリントのことを指す)を準備する。
Etape 3:étape 2で準備したactivitésを見直して、修正を加える。そして授業を実施する。
Etape 4:授業時の学生の反応を思い出して、反省を加える。
 授業に使われたのは、セドリック・クラピッシュ監督の『猫が行方不明』から、「バカンスの間に知人に預けてあった猫がいなくなり、その猫をクロエという女主人公が探す」というシーンでした。このシーンをさらに3分割し、それぞれについてfiche de travailの試作品が作成されました。上記のEtapes 2と3に従って、fiches de travailの試作品に見直しと修正が加えられ、授業に使う完成品に至るまでの過程が、具体的な例をともなって説明されました。
 例えば、宝田さんがもっとも重要視した部分に、白人であるデュボワ夫人が、アフリカ系のジャメルについて話す場面がありました。その場面に関するfiche de travailの試作品には3つの質問しかなかったのですが、見直しと修正の結果、完成品としてのficheでは、その場面がさらに2つの場面に分割され、質問の数も増やされました。質問の形式も、リストや選択肢の数を増やすなど、より工夫された形になりました。
 以上が、宝田さんの発表の内容です。
参加者との質疑応答
 発表後の例会参加者からのコメントを、以下に列挙します。
コメント1:デュボワ夫人が、アフリカ系のジャメルに関して"ils viennent des pays chauds mais ils ont pas invente l'eau tiède..."と言ったこと。そして、クロエが猫について無意識に"Il est tout noir."と描写した発言に対して、アフリカ系の労働者が皮肉な笑いで反応したこと。これらの場面に関しては、宝田さんの指摘のとおり、フランスでのracismeの存在が感じられる。
コメント2:デュボワ夫人の発言は、racismeではなく、単に隣人としてのジャメルに関する発言であり、単純な近所づきあいの諍いとしてとらえた方がよいのではないか。
コメント3:猫をあずかっていたのになくしてしまった女性が、クロエに1回も謝らないという点が、いかにもフランス的だ。この点も、授業でとりあげたらどうか。
コメント4:老人が、クロエとの会話をできるだけ引き伸ばして話し続けようとする場面がある。これはフランスに一人暮らしの老人が多いという点とからめて、授業でもとりあげたらどうか。
コメント5:授業で使えそうな映画のリストがあれば、入手したい。
コメント6:fiche de travailにある問題の答え合わせを、授業中にどのように行ったらよいかという点についても、教案に記述した方がよい。例えば、ペア作業で行うなど。
コメント7:映画を見せる時、1回目は音を消して、映像だけを見せたらどうか。
コメント8:1回目は音を消して見せるという方法は、フランスでは一般的だが、日本人学習者には向かないような感じがする。

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例会報告2

2004年度 
年間テーマと活動日程

 例会の最後に、2004年度に扱いたいテーマを出し合いました。挙がった意見は、以下です。
Compréhension orale / documents authentiques / セメスター(半期制)で、文法をどのように教えるか? / 読解とストラテジー / communication orale / 教員独自の判断で文化を授業にとりいれると、教材にさける時間が少なくなってしまう。時間配分の問題。 / chansons / いかにして学生に話をさせることができるか? / 教師の介入を減らし、学生にグループワークをさせる方法 / レベルの異なる学生がいるクラスで全員を満足させるには? / 教材よりも、クラスの動かし方に興味がある。 / 教案作り。ペカには教案をもらいに来るのではなく、教案を作りに来る。 / 12〜13歳の生徒をどのように惹きつけることができるか? / 教育実習で行うような授業準備をやりたい。 / サイレントウェイなどの珍しい教授法を、フランス語で体験したい。 / phonétique / comment faire participer des gens?
 話し合いの結果、2004年度は、「教案づくり」をテーマにして、他に挙がったものは、その中に組み込んで行く形で、進めて行くことになりました。各例会では、animateurが持って来る、たとえばdocument authentique, chanson, compréhension orale, 文法などの材料に対して、参加者が共同作業で具体的な「教案」を作ります。

(M.I.)

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2004年度の例会は、以下のような日程で開催予定です。

- 4月17日(土) documents authentiques (小出石/姫田)

- 6月12日(土) 文法 (善本)

- 9月25日(土) chansons (富田)

- 10月30日(土) comprehénsion orale (Gaël/Philippe)

- 12月11日(土)調理実習のフランス語 (竹内)

- 2月19日(土)comprehénsion écrite (常盤/西川)



次回のPékaは...

4月17日(土)
14:30〜17:20

明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)


1. 大学2年生の授業で
 document authentique - publicité
  を使う場合の教案づくり

小出石 敦子
姫田 麻利子


小出石が、ある大学の2年生クラスで使用することになった教科書には、各課に一つdocument authentiqueが取り上げられていて、それに対する問題がいろいろ載っています。今回は、この教科書のある課について、小出石と姫田がそれぞれ作った教案をご紹介しながら、またみなさんにも独自の教案を作っていただきたいと思います。  
 そもそも「教案」には、どんな項目が含まれるべきかといった問題や、また今後の例会の進め方モデルも考えたいと思います。(姫田)


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