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NO.80

 

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 80

01/09/03

日本は冷夏、フランスは酷暑!の8月でしたが、
みなさま体調崩されることなく、よい夏をお過ごしになりましたか?
6月の例回報告と、9月の例会案内をお届けします。

■例会報告

Dialoguesと「文化」
飯田 良子さん 鵜澤 恵子さん

テーマ:教材、文化、テキスト情報

  教科書のdialogueの中に「文化」と呼べるものはあるのでしょうか?あるとしたらそれはどの部分で、授業ではどこまで説明する必要があるのでしょうか?今回は飯田さん、鵜沢さんを中心にこのようなテーマで例会が行われました。日本及びフランスで出版されている教科書の中から選んだ15のdialoguesを各グループに分担し、授業だったらどこまで説明するか検討してみました。まずはその結果からご紹介いたします。

グループ1:−「郵便局」
       −「洋服売り場」
       −「名前を尋ねる場面」での会話

− 状況的なもの(郵便局で係員が客に "Faites la queue"と言っている。日本の郵便局では順番待ちで列を作ることはあまりない)/内容的なもの(初対面の客同士がかなりプライベートな会話をしている)
− 服のサイズの言い表し方/服の「取替え・返品」が日本より容易/服を選ぶ際に「髪の色」を考慮に入れていること
− 「Marie」と聞くと日本人はprénomだとイメージするがここではnomとして使われていること(さらに名前に関する話題として、フランスではprénom→nomの順であることを普段強調する傾向があるが、フランスでも書類ではnom→prénomの順で書くのが一般的であることや、nom de jeune filleを書く欄があることなども説明すると良いのではないかという意見がありました。)

グループ2:−「有料トイレ」
       −「久しぶりに再会した男女」
       −「遅刻した男性と上司」の会話

− 状況的なもの(有料トイレの存在はフランス的)/「客」に対する「集金おばさん」の無礼な態度
− 「男性はbruneよりblondeを好む」というフランス人の間の「定説」(これを知っていることが会話を理解する上で必要)
− 言い訳をする際に「Ce n'est pas ma faute」と言っていること(これはフランス人の常套句!?)/7月であるにも関わらず男性は「大学生のデモと遭遇したこと」を遅刻の理由に持ち出しているが、この時期すでに学生はバカンスであること(これを知らないと言い訳の「嘘っぽさ」がわからない)

グループ3:−「仏人宅に招かれた日本人」 
        − 「Fête de la musique」
       −「旅行会社への問い合わせ」での会話

− 習慣的なもの(フランスでは寝る前にお茶などの温かい飲み物を飲むことがある)/tisaneという飲み物/内容がよくわかっていなくてもとりあえずOuiと言っている日本人の態度
− Fête de la musiqueというイベント/初対面の人に対する挨拶の仕方/単語から受けるイメージの違い(日本ではネガティブなイメージのある「暑い」という単語がポジティブな意味で使われている)
− バカンスの形態の違い(1週間単位で借りられるアパルトマン)/地理的なもの/小切手での支払い/バカンスの捉え方の違い

グループ4:−「ツーリストインフォメーション」
       −「クイズ番組」
       −「バカンスに出発する家族」の会話

− 慣用表現(店での「Bonjour, vous desirez ?」というセリフ)/「ありがとう」の言い方のバリエーション/場所を示す固有名詞(La Villette等)
− クイズ番組好きなフランス人/司会者の挨拶の仕方/人の描写をするときに髪の色を言うこと/出場者に司会者がprenomで話しかけること/司会者がかなりプライベートな質問をすること
− 有名人の名前(MonetやVanessa Paradis)/父親が子供にmon chériと呼びかけること/復活祭の習慣/会話のタイトル(このタイトルはフランスの有名な歌をイメージさせる)/会話の受け答えが非常にフランス的

グループ5:−「レストラン」
       −「面接」
       −「新入社員を迎えたオフィス」での会話

− 習慣的なもの(レストランでの予約・注文・支払い方法の違い)/食文化の違い(デザートが食事の中で重要な位置を占めていること等)
− 皮肉の言い方
− 会話の続け方の違い(さらにこの会話に関する説明として、初対面にも関わらずいきなりtuで話していることなどは、普段授業の中で初対面の人にはvousで話すように教えていることを考えると、なぜここではtuで話しているのかということに注目させることも意味があるのではないかという意見がありました)

 以上、今回扱った会話の中から実に様々な点が「文化」として挙げられたということから、「文化は会話の至るところに見られる」というのが最初の問いかけへの答えと言えるでしょう。また授業でそれをどこまで説明するかに関してはその場の学生の興味や時間の制約などとの兼ね合いで臨機応変に対応する必要はありますが、結局「会話がわかるくらいまでの説明をするのが望ましい」という意見に落ち着きました。というのも学生間には知識に差があるため、その差によって同じ会話から受けるイメージの広がり、理解度が違ってきてしまうからです。例えばvillageという言葉から、そこに「教会」をイメージできる学生とできない学生では同じものを読んでも理解に差が出てきてしまうでしょう。また教師は会話の中に「文化」がある場合、それを説明しないにしても「意識」をしている必要はあるのではないか?という意見も挙がりました。 

 結局会話に表れる「文化」は大きく分けて2つあり、今回扱ったものを例にとれば、La Villetteといった地名等の「知識としての文化」と、会話の中に見られるエスプリ、皮肉、態度、反応といった内容に関わるものや状況的なものといった「それ以外の文化」とに分けられ、前者はいわゆる「civilisation」と呼べるもので目に見えやすく説明しやすいものですが、後者はより複雑で説明しにくい性質と言えるでしょう。また日本の教科書で多く見られるのは前者のタイプの文化ですが、フランスの教科書は後者が多く、「場面」の設定からまずは説明しなくてはならないという難しさも指摘されました。
   特に後者の文化に関しては、主観的な知識である場合も多くどこまで教えていいかわからない、生徒に「ステレオタイプ」的な知識を植え付ける危険性もあるのではないか?という声がありましたが、それに関しては、そもそも教科書に出てくる会話自体がステレオタイプ的だということを前提に学生には説明したら良いのではないか?というアドバイスがありました。また、「文化」は伝えたいと思ってもフランス人ではないから限界があるという問題点も挙げられましたが、「フランス人ではないから全部わからないのは当然であり、逆にフランス人には当たり前すぎて見過ごされがちな点を日本人教師だからこそ気づくこともあるのではないか。実際アンケートで学生はフランス人、日本人教師の両方を評価しているという結果が出ており、これはどちらの教師も各々に存在価値があることを物語っているのではないか」という意見が出ました。
 今回は2人のフランス人教師の参加もあり、特にテーマが日仏文化に関連するものであっただけに、日本人・フランス人双方の感じ方を比較し合う場面も随所で見られる例会となりました。

(M.T)

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次回のPékaは...

6月27日(土)
14:
30-17:20

明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)

「仏語圏文化の情報を含んだききとり問題」
井上 美穂 さん

 9月の例会では、今年の通年テーマである「文化」を、「ききとり問題」の観点から とらえます。
 例会の前半では、参加者の方々にグループに分かれていただきます。そ して、各種の教材に載っているききとり問題に、どのような文化的要素が含まれてい るかを話し合います。
 例会の後半では、井上が考案したききとり問題を見ていただき、皆さんのご意見をうかがいたいと思っています。

 

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