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NO.79

 

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 79

05/06/03

4月の例会は、ボールを投げて受け取った人が話す方式で
進められました。教室ではよく学生に対してこの方式を使っているのに、
ボールを避けちゃう先生もいたり・・・

■例会報告

"Leçon 0"と「文化」
高瀬 智子さん

テーマ:Leçon 0, 導入, 文化 

1. Pékaで今までに"Leçon 0"について考えたこと

Pékaのサイトから"Leçon 0"と「導入」というキーワードで検索をかけたところ、次の例会報告が見つかりました。

1.1 ニューズレターNo.36

 この例会では、では単位の取得方法や学習の進め方を説明するといった意見のほか、注目するべき点としleçon 0て、クラスの中の動きを意識してleçon 0を行うという意見が出されました。つまり、クラスというものを、これからの1年を一緒に学習して過ごす集団としてとらえ、その集団の動きがスムーズになるようなactivitéをLeçon 0で行うという考え方です。名付けて"Réseaux de communication multidirectionnelle"を作る場として、Leçon 0を行うというものです。

1.2. ニューズレターNo.49

 この例会では、高校や大学をとしてとらえた意見が出されました。例えば、大学によっては他言語の履修institution希望者が、やむを得ずフランス語にまわってくることがあります。このような学習者に対してどのようにleçon 0で対処したらよいのかということが話し合われました。また、高校に適した教材が少ないので、導入部としてのleçon 0をいかに行うかが重要であるという点も話し合われたようです。

2. 「異文化」でPékaのHPから検索できたもの

 「文化」で検索するとヒット件数が多すぎるので、「異文化」で検索をかけたところ、次の論文が見つかりました。善本孝さんの『フランス語教育と異文化理解』EDFJ第6号(1997)です。この論文では、「学生に伝えるのはフランス文化でなければいけないのか?」という疑問が提示され、その答として「フランス語の授業では、異文化のひとつとしてのフランス文化を、たまたまその授業を担当するフランス語教員が扱うのだ」というとらえ方が提案されています。

3. "Lecon 0"にどう「文化」的な側面を導入できるか?

3.1. この観点から、Anne Watanabeさんの"Créativité plurielle -Groupes d'apprentissage en classe de langue" EDFJ6号(1997)という論文が紹介されました。この論文では、どのようにクラス作りを行うかが論じられています。

3.2. また、すでに廃刊となっているRefletという雑誌のMarcel Baraffeの記事"Les Débutants"が紹介されました。これは、Leçon 0でどのように文化を伝えるかというメキシコでの実践報告です。まず、クラス内で知り合うactivité(例えばカードの名前の本人を探す)→ 次に、学校内で知り合うactivié(例えばアリアンス内のvisite guidéeに参加する)→ そしてそして、フランス語と知り合うactivité(例えば最初はécritのフランス語から入っていく)、といった具合に進んでいくのだそうです。

4. 今年の4月の"Leçon 0"いろいろ

 例会の後半は、参加者が自分が行ったLeçon 0を紹介するという内容でした。以下に、このニューズレターをご覧の皆様に役立ちそうな意見や実践例をご紹介します。

4.1. 初回の授業ではまだ人間関係ができていないので、4人や5人のグループをいきなり作るのは難しい。初回の授業は2人グループから始めるのがよい。

4.2. 学生の反応がない時には、ボールを使ったactivitéが役立つ。ボールを投げて、受け取った人が答え、また別の人に投げるという方法。(実際に、今回のPékaの例会は、このボール方式で進めました。)

4.3. 初回の授業の時は、クラスに入って感じた雰囲気でleçon 0の内容を決める。テキストは持っていない人がいるので、leçon 0では使わない。

4.4. 年間授業予定や評価基準を記したシラバスを配り、はっきりとした数字を示す。

4.5. よく行うのは、数字の練習。3人程度のグループで、「10から逆に言う」「偶数だけを言う」「奇数だけを9から逆に言う」などのactivitéが受けている。

4.6. 高校でのleçon 0では、授業開始の号令としてのBonjourや、出欠点呼の答としてのOuiを練習している。出欠点呼の時に、高橋さんをわざとTakaashiと呼んで、hは読まないという説明を行い、つづりと読みの規則を説明している。

4.7. とにかく学生を2人出会わせて挨拶してもらう。その様子を皆で観察し、おじぎしながら握手するところがフランス風ではないという指摘をし、そこから文化的な教育を始めていく。

4.8. Bonjourを何回も繰り返して徹底的に練習する。[u]の口の形を理解してもらうためには、フランス人が話をしている時のビデオを見せるとよい。

4.9. 最近の高校では地理は必修ではないので、フランスの地理を知らない人が多い。そこで、フランスとその周辺の地理を説明することにしている。

4.10. 留学生がいるクラスを担当している。日本語風のフランス語のほかに、例えば中国語風のフランス語にも対処する必要がある。

4.11. 最初の授業で、フランス人が日本語を話している様子を見せると、学習者の反応がよい。

4.12. 最初の授業では、教員に対する恐怖心を取り除くように気をつけている。

4.13. フランス国以外のフランス語を聞かせるのも大事な文化的教育だと思う。例えばワールドカップでセネガルがフランスに勝った時には、フランス語を話すセネガルの大統領の録画を見せた。

5. 興味深い3つの問題点

最後に、例会で行われた議論のうち、もっとも興味深かった問題点を2つご紹介します。

5.1. leçon 0でalphabetを教える必要があるのか?

 Leçon 0ではalphabetを教えなくてもよいという参加者からは次のような意見が出ました。それは、そもそもalphabetを教える意義は何なのかという問いかけでした。alphabetを何かに使うのでなければ、それだけを教えることに学習の意味はなく、学習が進んでつづりを言う必要が出てきた時に教えればよいのではないかという意見です。

 一方、leçon 0でalphabetを教える必要があるという意見には次のようなものがありました。まず、もしalphabetのABC…の中に入っているフランス語の音を使って発音練習するのであれば、leçon 0で取り扱う意味が出てくるという意見です。また、初回の授業から「語末のt」「女性形のe」という説明は必要なのだから、初回の授業でalphabetを扱った方がよいという意見も出ました。さらに、初回にalphabetを扱ってほしいという希望が、学習者の側から出るという意見もありました。辞書を引く時には、頭の中でalphabetを読みながら引くのだから、alphabetは必要だという意見もありました。

5.2. Leçon 0のブームに振り回されないために

 Leçon 0のブームに対する警告の意見も出ました。以前は、それぞれの教員が工夫して学習者に合わせたleçon 0を用意しましたが、最近はleçon 0が組み込まれた教材が多くなってきてます。マニュアル化されたleçon 0をそのまま使うのは、避けたほうがよいのではないでしょうか。また、avoirやêtreの活用など、leçon 0にふさわしくないと思われる内容が入っている場合もあります。また、Répetezなどのcoénsignesは、全部をまとめてleçon 0で扱うべきものなのでしょうか?

 最後にこのニューズレターの筆者の意見ですが、最近のleçon 0の内容は、alphabet, 数、あいさつ、consigneに内容が固まりつつあるような印象を受けています。以前、発音やつづりと読みのルールを列挙して初回の授業で全部を説明し、その後は全く扱わないという状況がありましたが、これと同じ状況がleçon 0についても生じないように注意する必要があると思います。

(M.I.)

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次回のPékaは...

6月14日(土)
14:10-17:20

明大駿河台校舎12号館12階
2121教室(AV1教室)

Dialoguesと「文化」
飯田 良子さん
鵜澤 恵子さん

今年2月の例会では、「文化は、教科書の写真やcivilisationのページだけでなく、フランス語そのものの中に見いだすことができる。」という意見の一致をみました。これをふまえて、今回の例会では、1)「文化」はどのような形でdialogue中に現れるか、2)それは内容の理解に影響を及ぼすか、3)その場合どこまで説明するのか、という3点について、様々な教科書のdialoguesを使って考えてみましょう。

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