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NO.74

 

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 74

18/09/02

暑い夏を無事乗り切られたでしょうか。皆さん元気に新学期をお迎えのことと思います。6月の例会は、トルシエジャパン(今となっては懐かしい響き!)がW杯決勝トーナメント進出を決めた翌日、興奮さめやらぬなかでキックオフ!

■例会報告

「授業の活性化」
西川 葉澄さん

1.悩み

 西川さんはパリ第3大学で教育学を1年間勉強後帰国。日本の大学でフランス語を教えています。この4月から初めて、日本で作られた教科書を使って文法を教え始めたところ、さまざまな問題に直面し、困っているそうです。
 まずその環境は、
- 人数:30〜40人。
- 教室:固定机。
- 教科書:学校から指定された日本製教科書。
 (dialogue + grammaire + exercices, activitéといういわゆる文法読本形式のもの)
- 進度:特に指定はないが、二年次に文学テキストを読むことになっている。
- 機材:教材提示装置、VTR、CD。
- 方法:文法各項目の解説と練習問題を対応させ、問答形式で進める。
- 学生:おとなしく、暗い印象。

 そんななかでは、教科書通りに進んでは単調になり、教師も学生もフラストレーションがたまるばかり。つまらないdialogueを読ませ、それと関係のないgrammaireを解説し、難易度がまちまちのexerciceをやる...
「文法クラス」でありがちの「ドツボ」パターンから抜け出せないものか?activitéに結びついたgrammaireを提示しているフランス製教科書に比べ、日本のものは規則を学ぶためだけのexerciceが多い。そのような教科書を指定されてしまったクラスで、文法をないがしろにせず、しかし楽しい授業がしたい。そのためにはどうすればよいのか、というのが今回提起された問題でした。

2.「お知恵拝借!」
 このような条件下ではどのような授業が可能なのか?提示された問題の対策を例会参加者は少人数のグループに分かれて検討したのち、グループごとの意見を出し合い、全体で討議しました。そこで出された提案をまとめてみると、以下のようになります。

a) 教科書について
・指定された教科書にこだわる必要はない。
 -教科書のページ順にやる必要はない。
  既成の構成をバラしてみる。
 -自分で教材を作る。
  document authentiqueを取り入れる。

b) 授業の進め方について
・グループ作業を中心に進める。教師対学生、一対一ではなく集団で考える雰囲気を作る。個人を指名するよりもグループで作業をさせるほうが、授業中の思考の空白をなくすことができる。
・教師が一方的に喋る時間はできるだけ短くする。文法の説明だけでなく、練習問題の答え合わせなども、できたかどうかの確認にとどめ、なるべく早めに切り上げて、次の課題に移る。問題がやさしすぎるときは、学生に問題を作らせて互いに練習、質疑応答させる。
・聞き取りやペア練習など教科書にない練習形態を取り入れる。
・授業にメリハリをつける。リラックスする部分と意識を集中させる部分の割り振りを考えて、覚えなければいけないところはしっかりおさえさせる工夫が必要。小テストの活用も。
・無理をしない。気持ちが落ち込んでしまったクラスは、教師が無理に盛り上げようとしてもうまくいかない。そのまま見守る必要があるときもある。様子を観察し、そのクラスの性格を把握することが重要。

c) 環境について
・不便であれば教務に教室の変更等を申し出る。
・固定机であっても、隣同士だけでなく、前後や通路を挟んだ両側の学生で練習することも可能で、これによってクラスの柔軟性が増す。activitéで立ち上がらせることにも早くから慣れさせておくと、教室内のあちこちに移動して作業ができるようになる。

 このような学習者中心の授業については、過去の例会でも何度も取り上げられてきました。西川さんはPékaのホームページの検索機能を使って「活性化」というキーワードでNews Letterのバックナンバーを調べ、一覧表にまとめていました。グループ作業の要である「グループリーダー」としての教師の役割に関する内田純平さんのワークショップ(NL No.40)、クラスの雰囲気の活性化に関する根岸純さんの報告(NL No.41)、『フランス語21』用の文法練習問題を考えた井上美穂さんの報告(NL No.25)、ゲームによる学生のレベル把握を紹介した飯田良子さんの報告(NL No.31)などが参考になったようです。(こうしてホームページが活用していただけると、制作した側として大変うれしく思います)。

3.覚えておこうこの一言

 どうすれば授業は活性化するか?教室に立った者は誰もが一度は(何度でも)直面する問題でしょう。例会では、授業進行の上で肝に銘じておくべきことを次のようなキーワードでまとめました。

 ・グループ作業
 ・間違いを恐れずに
 ・緩急自在
 ・ためになる(学んだという実感)
 ・ 辛抱我慢(教師も学習者も)
 ・ サスペンス
 ・ 柔軟性と対応能力
 ・ 解説は少なく、引き出しは多く
 ・ 固定観念を持たない
 ・ スパイラル(回を追って理解が深まる)

 例会参加者が考えている授業のイメージを総合すると……二人ないしそれ以上のグループ作業によって集団で考える習慣の付いたクラスのなかで、授業が進みます。学習者は間違いを恐れずすすんで発話し、ときには教室中がワイワイ騒がしくなることもある。しかし、それぞれの作業の目的・理由をあらかじめ教師が説明し、みな納得しているので、重要なところでは集中力が高まり緊張感もある。教師は学習者の自発的理解を促しながら、疑問点は多くの対策で解決させる。ここまでできたという達成感が学んだ実感になり、充実感を持ち、次の目標への野心を抱いて、その日の授業は終了する……そんなふうになるでしょうか。
もちろん、これが理想ということではありません。授業の構成はほかにも様々な可能性がありますが、クラスが無用なストレスを感じない授業のひとつのかたちかもしれません。現実にはなかなか……ということも多いでしょうが、この秋からの授業でも念頭に置いておきたいものです。

(Ry)

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■Péka Info

例会の文献紹介とPekaホームページの基本文献リストについて

 みなさんから紹介・推薦して頂いた文献に関してそのデータの扱い方に不明瞭な点がありましたので、ここで再確認致します。

1) ホームページ基本文献リストに掲載を希望する教育関係の文献に関しては、その情報を以下の要領にて直接メールで送る。
宛先)harada-s@sophia.ac.jp
外国語文献)Nom; Prénom; titre; édition; année; 一行コメント
日本語文献)著者名;論文名;雑誌名;出版社:出版年;一行コメント
(「;」区切りにしてください)

2) 例会で推薦文献を紹介する場合は、提供された話題として扱い、News Letter例会報告に掲載する。
 
*なお、1) の文献と2) の文献とは別のもので、例会で紹介したものが文献リストに加えられるわけではありません。1) のリストに載せたい文献は掲載希望者本人の判断で書名並びに推薦理由を送ってください。

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次回のPékaは...

9月28日(土)
14:30
18:00
明治大学駿河台校舎12号館12階
AV1教室 (2121教室)

「タスク中心の言語教育」
小松祐子さん
室井幾世子さん
常盤僚子さん

前々回とその前のPékaで「学習者中心の言語教育」について考えましたが、今回はまた視点を変えて「タスク中心の言語教育」にアタックしてみたいと思います。
「タスク中心」とはどういう意味なのか、またそもそもタスクとは何か(フランス語のt
âcheと英語のtaskはどう違う?)などの疑問を検討した上で、いくつかの実践例のご報告します。
どうぞふるってご参加ください!

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