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NO.73

 

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 73

05/06/02

いよいよ、新学期のスタートですね。
みなさん新鮮な気持ちで、授業の準備をなさっている頃ではないでしょうか。

3月の例会では「学習者中心」について、意見を交換しました。

■例会報告1

「大学生が好きな授業活動 - アンケート調査から」
姫田麻利子さん

 「フランス語の授業の枠内で、フランス文化をどのように教えたらよいのか?」という問題を考える手始めに、姫田さんは以下のようなアンケートを行いました。

<アンケートの質問>(書記による要約)
 A先生も、B先生も、準備を凝らし、工夫した授業を行います。唯一の違いは、その授業形態です。A先生の授業では学生は、文法規則を勉強しながら日本語訳をしたり、先生の言うことを聞いてノートをとったりします。B先生の授業では学生は、先生の話を聞く前に、自分たちで問題を解いたり、言語や文化について話合います。

 質問@ ふたりの先生のうちどちらがより大学生に合っていると思いますか。
 質問A あなたはどちらの授業方法が好きですか。

 まず、このアンケートが11人の教員に対して行われた結果が発表されました。上記質問@に関する回答は以下のとおりでした。
Aが合っている --------- 2人
Bが合っている --------- 2人
どちらとも言えない --- 7人
 
 「A先生とB先生の差はどこにあると思いますか。(複数回答可)」という質問に対する回答は、以下のとおりでした。
学習目標の差 --- 6人
経験の差 --------- 4人
教員養成の差 --- 4人
 そして、「B先生の方法で授業をやってはみたいが、おそらく学生はA先生のやり方が好きなのだろう。」と多くの教員が考えているという印象を受けたとのコメントが付け加えられました。
 
 次は、学生478人に関する結果です。上記質問@に関しては、
Bが合っている --- 45.6%
わからない --------- 27.6%
Aが合っている --- 26.4%
無回答 --------------- 0.4%
 
上記質問Aに関しては、
Bが好き ------ 39.3%
Aが好き ------ 35.1%
わからない --- 25.1%
無回答 -------- 0.4%
 という結果になり、「B先生方式が好き」という学生が意外に多い(= 39.3%)のに驚きました。また、さらに詳しい分析により、「大学生にはB方式が合っているが、自分はA方式が好き」という学生は、全体の7.7%(37人)しかいないこともわかりました。逆に、「大学生にはB方式が合っているし、自分もB方式が好き」という学生の割合が32.6%(156人)と、一番多かったこともわかりました。

 このアンケート結果を踏まえて、以下のような話合いが行われました。
(1) A方式とB方式の比較
B方式で授業を行ってみたいが、教室がしーんと静まり返ってしまうのではないかという不安がある。B方式を実際に行えるような教師とは、膨大な知識を持っていて、適材適所にその知識を提供できるようでなければならない。B方式は準備が大変だ。  A先生の方が教師としての印象が残り、B先生は影の役だから印象に残らない。

(2) 若者のコミュニケーションについて
 その場その場で相手に合わせて一見コミュニケーションが上手に見えるが、相手に合わせすぎるために自分の主張が持てない極端な人と、主張はあってもコミュニケーションが苦手なためにひきこもってしまう極端な人の、両極端がある。普段のおしゃべりは上手でも、話合いの場で議論するのは下手な人が多い。私語は大きくても、発言になると小さな声になってしまう人がいる。

(3) グループ作りの難しさについて
 グループが一旦固定化すると、組換えが難しくなるので、固定化する前にどんどんと組み換えて行く必要がある。クラスが知らない者同士の場合は、とりあえず4人のグループを作り、その4人同士を顔見知りにさせて、クラスの雰囲気作りをするとよい。

(4) 男女グループ作りについて
 男女が別れて座る傾向があり、グループを作る時に男女を組ませるのに苦労する。そのような時は、「このdialogueは男女の会話だから。」と説明して男女を組ませるとよい。または、女子学生の名前を書いた紙を男子学生にひかせるとよい(またはその逆)。

*アンケート結果の詳細は、EDFJ no.11に掲載されています。(姫田)

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■例会報告2

「学習者中心」について考える2
左合 桜子さん

 まず、『学習者中心の英語教育』(羽鳥・松畑1980 大修館)の68〜127ページの要約が提示され、話合いの出発点になりました。以下に話合いを要約します。

(1) 生徒が自分の達成を見極めながら学習できるようにすることの利点は?
 最近の小学校の「総合の時間」では、自分の達成を記録するポートフォリオ作りが行われている。中学・高校でも、自分の学習の履歴を記録することは、よく行われている。このような学習履歴を記録する授業を行った学年末に、アンケートを行って学生の感想を見てみれば、履歴を記録することの利点が明確になるのではないか。

(2) 「生徒の活動に変化をもたせる方法」の用語の意味は?
Backward Build-up:
文末から要素を足していって、文を完成させる方法。
Expansion Exercise:
例えば形容詞などの要素を足していく方法。
Reduction Exercise:
重要でない部分を削っていく方法。
Pyramid Exercise:
文中から始めて、文頭と文末を作っていく方法。
 
 この他に、違った形式をとっているが、実は同じ文を繰り返させることができる方法があげられた(例:生徒: I came by bus, 教師: How did you come?, 生徒: I came by bus.)。

(3) 暗記という学習手法は有効か?
 暗記していなければ、実際の場面では使えない。従って、des exercices structuraux(パターンプラクティス)などを利用して、暗記の練習をすることは必要である。ただ、暗記したことをどの場面で使えばよいかも教えておく必要がある。この意味で、dialogueによる場面提示のあったSGAV方式(Structuro-globale audio-visuelle)には価値がある。

(4) 単純な暗記では間に合わないレベルの場合、どうすればよいのか?
 日本語で考えた高度な表現を、そのままフランス語で言い表すのは不可能だ。従って、自分が持っている有限のフランス語の知識を、いかにして上手に使い回すかというテクニックを教える必要がある。ひとつの方法として、「同じことを幼稚園生に話すとしたら、どのような日本語で表現するかを考えてから、フランス語に直す」という方法があげられる。

(5) 生徒に対して、質問を難易度別に割り当てる方法には問題があるのでは?
 Question partielle (oui/nonで答えられるもの)よりも、question totale(疑問詞によるもの)の方が難しいので、この2種類を使い分けるとよい。ただ、やさしい質問をしすぎると、その生徒が区別されていると感じてしまうので、注意が必要だ。かえって、誰も答えられないと思われる質問を、わざと学習の進んでいない生徒に割り当てるのもひとつの方法だ。なぜなら、他の生徒に同じ質問をまわしてもやはり答えられないのを見て、その生徒が自信を取り戻すかもしれないから。

(M.I.)

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■例会報告3

文献紹介
原山 重信さん

 原山さんから、三浦信孝著「『パサージュ』あるいはフランスとその外部(下)- フランス語教育『第三の道』へのパサージュ」 UP 2002年4月号 354号 東京大学出版会 pp.24-25(この記事は三浦信孝著『現代フランスを読む』2002年3月 大修館書店に再録されている)が紹介されました。「学生に伝えていく内容に関して、単なる日常会話のレベルを越えて、もう少しインテレクチュアルなものも視野に入れていくべき」との提案がなされました。

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■LIVRE(s) CHOISI(s)

『状況に埋め込まれた学習 正統的周辺参加』(ジーン・レイヴ, エティエンヌ・ウェンガー著 産業図書 1993) 
 フランス語教育に直接関係する本ではない。学習とは、どのような時に生じるのかを論じた本。実は、学習とは教育から生まれるわけではないという考え方がおもしろい。

(善本 孝)

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次回のPékaは...

6月15日(土)
14:00-17:00
牛込箪笥地域センター
(区民ホール4階)
新宿区箪笥町15 tel:3260-3677
○ 大江戸線 牛込神楽坂駅すぐ
○ 東西線神楽坂駅(早稲田寄り出口)〜5分くらい。
新潮社、旺文社を通り過ぎ、大久保通り(=牛込北町交差点)に出たら左折。左手すぐ。
○JR・地下鉄の飯田橋駅からも歩けますが少し遠いです。
(神楽坂を登り、大久保通りに出たら左折。牛込北町交差点手前右側。イタリアンレストランの隣。)

「授業の活性化」
西川葉澄さん

 「夏休みはまだまだ先、うっとおしい梅雨...そんな中、皆さまは授業をどのように活性化なさっていらっしゃいますか?うまく行った授業の具体例や、活性化にまつわる悩みなどを中心にディスカッションを進めて行きたいと思っております。不慣れな司会ですが?どうぞよろしくお願いいたします。」

 

 

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