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NO.64

 


17/10/00

no.64

秋らしい気候となってまいりましたが、皆様お元気でしょうか。

9月の例会はゲストを迎えてのワークショップでした。講師は上智短期大学英語科助教授藤田保さん。上智大学応用言語学研究所のHome Pageを管理していられる方です。オープンキャンパス開催中の上智大学CALL教室で行われました。パソコンや従来の教育工学機器を使用する授業を日頃から実践されている方々、また近い将来活用したいと考えている方などが20名近く参加しました。

 

例会報告

外国語教育におけるインターネット:

その活用と意義

藤田 保さん

 前半では、序論としてCommunicative Language Teachingの定義と、そこで「インターネット」を活用した場合、教室内で語学授業の従来の形態にどのような違いが起こるかについて。

 

インターネットを使用するメリットの3点

双方向性・迅速性・マルチメディア性

これらを授業に活かすことによる従来のCAL,CALLとの違い(選択の自由度、 柔軟性=固定化されない、形式→内容)、利用方法とその効果、実際藤田さんが開発実践している教材の紹介と体験をしてみようという構成であった。

市販の語学教材ソフトは個人の自習用としての活用の範囲を超えていない。教室で上記のメリットを活かしてインターネット上のauthentiqueな教材をいかに活用するか、いかにして学習意欲の少ない学生、モティベ

ーションの低い学生が構成している教室内環境に変化をもたらし、従来の授業運営の流れや雰囲気を活性化するかが口頭で説明され、本論に入っていった。

 

従来のインターネット使用の授業形態は学習者対機械すなわちPC→人の形態であった。この係わり合いを、人→PC→人の形態に方向を変えていくことが本論である。

 

A 授業の概念の変化

@外国語を学ぶ」から「外国語で学ぶ」こと

 を目指す。

自分なりに興味の持てる学習対象を選び取る。

可能性や領域を広げる。

?contents based:

  学習内容たとえば政治・経済などを

  その言語で学ぶ。

 ?theme based: 

  テーマを決めて調べながら学ぶ。たとえば

 自動車の比較:自動車会社のサイトとか雑誌

 を調べて情報をとってきてまとめて口頭で発

 表する。それを教室内で他の学生が聞き、

 ディスカッションする。

 

A 時間的・空間的枠組からの開放

  いつでも・どこでも・誰でも

(これに関してはPC基本操作技術の習得は必須)

 

B 従来型の授業との融合性

C サプリメントとしての活用

 物語を読んでいてその背景となる情報をイ

 ンターネットで調べる。それによって学習

 意欲を高める。モティベーションの高揚。

 

B 教員の役割の変化

 教室内の教員の役割も変化する。「主」→「従」の方向から学習者中心に移行する。また「一対多数」の関係が変化する。情報を教師一人が一方的に伝達する形態から双方向性に変化する。

 

C 評価 について

 原点主義から加点主義に変化する。いかに学習したか、その内容やプレゼンテーションの評価などで単なる点数評価や相対評価からその学生個人の絶対評価に変化する。

 

ここまで説明されたところで、質疑応答に時間をとった。

 

フロアーからの反応

●英語とフランス語では学習者の修学時間や運用能力レベルが違う。

●第二外国語の初級クラスもあれば中級あれば、また第1外国語である学生もいる。、このような授業運営がすぐにフランス語の授業には移行できないことがある。

●この例会に参加している教師は一方通行的な授業ではなく双方向形態の授業をフランス語の授業に取り入れている教員が多いのでこの指摘は教室運営において問題とはされていない。

 

休憩をはさんで 後半は藤田さんが実際に教室で使用している授業教材を体験することになった。

藤田さんが実際に作成し、学生達と使用している自主制作されたページに実際にアクセスし、参加者が学生になっての体験であった。

http://www1.tcue.ac.jp/home1/

english/ intro/selfintro.html

●前期授業の大半はホーム・ページ制作工程についての解説や実践演習にかなりの時間が割かれるそうだ。今の大学生レベルではこのような解説と実習が前期行われれば、かなり積極的にこの授業に参加する意欲が高まるだろう。

 

●その次に続く教材は学生自身のごく簡単な自己紹介のページである。空欄にモデルにしたがって各自に該当する内容を書き込むことができる。また使用する辞書やヘルプ機能もついている。

●その内容は自己紹介・家族・故郷・食べ物、料理・スポーツ・気候・アルバイト・音楽・読書・映画・ペットなど多岐にわたっている。

●使用される英語は基本的なものである。これはフランス語の授業で使用するのに大変興味をひかれた。

●意欲の少ない学生を対象としたソフト開発と伺ったが、学生が抵抗なく語学で表現するきっかけを与えるものであった。

 

 このあと藤田さんが参加者の為に用意されたサイトが紹介された。シドニー・オリンピック柔道の話題騒然としていた時期にぴったりのサイトであった。日本柔道協会とフランス柔道協会のサイトである。

http://www.judo.or.jp

http://www.sports.com/fr/judo/

サイトを開くと第1ページのはフランス側の金メダリストDouilletは日本の山下選手を超えた世界一の柔道選手との賛美の記事が掲載されていた。この論評に参加者は篠原選手の屈辱を思うあまりに怒りをおぼえたのだろうか。早速にこのサイトのメールアドレスに抗議文のメールを送る参加者が数名キーボードを打ちはじめた。今回の例会は後半終了時間近くになって思わぬ盛り上がりを見せた。

 

今回は語学教育教材にインターネットを取り入れた自主教材という魅力的なテーマでありました。また、結果的に参加者が検索して出会った教材の内容にものの見事に反応して盛り上がってしまうという実体験をすることができました。またこのような教材は学内キャンパスを越えて学外の他大学の教室をつなぐリアル・タイム授業への発展性を含んでいると思われます。

実践している大学機関からの実践報告紹介として以下参考図書を2冊ほど挙げてご紹介します。( I.M.)


□『インターネットで変わる英語教育
早稲田大学文学部の実験1998』
早稲田大学出版部
ISBN 4-657-98314-8
□『早稲田大学デジタル革命』
松岡一郎  アルク 2000

 

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■LIVRES CHOISIS

1. ルイ・ジャン・カルヴェ
 『言語政策とは何か』(白水社)
→読みやすくはないが内容のある本です。
2.三浦信孝・粕谷啓介
『言語帝国主義とは何か』(藤原書店)
→言語による侵略主義の展開を語る。
(以上、根岸純)

3.『通販生活秋号』(no.201)中記事
「大人は判ってくれない。」、カタログハウス
→10代後半の六人による座談会。学校や(広い意味での)教育に関する意見はなかなか鋭い。
      (鵜沢恵子)

以下は推薦URL!
4. Hachette Web Page
www.fle.hachette-livre.fr
5.CLEMI
www.clemi.org. 
→教員関係の情報が得られます。
6. www.lactu.com
→雑誌3冊無料で送付されるそうです。 
7. www.monquotidien.com
(以上、土屋良ニ)

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■Péka Info

次回のお知らせ

次回のPékaは..
10月28日(土)14:30?
(会場は19:00まで利用可能)
明治大学 リバティタワー 
9階1098教室
(お茶の水駅下車、お茶の水橋口を出ると
すぐに左手に見える周辺でいちばん高い建物です。)

(1) Péka Web Page ficheの検討
西村亜子さん、土屋良二さん

Pekaもそろそろ外へ発信する活動について考える時期が来ているのではないでしょうか。例会の成果を形あるものとしてまとめるにはどのような形が望ましいか、ペカホームページ開設に向けて共通フォーマットをどのように設定したらいいか、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。叩き台はこちらで用意しますが、皆さんのアイデアもお待ちしております。

(2) 学習スタイルと授業活動
白井春人さん、姫田麻利子さん

第二(初習)外国語クラスの1年生を対象に行った学習スタイルに関する調査の結果をご紹介します。この調査ではいくつかある学習スタイルのうち、「聴覚型・視覚型」、「個人学習型・グループ学習型」、「あいまい性に対する寛容度」を取り上げました。Cafe Creme 1を使用した二つのクラスで、成績の上位群と下位群にはスタイル・ストラテジーにどのようなちがいがあったか、またそこから浮かびあがる教室活動の偏向について見ながら、このような調査を教室活動に反映させる方法、スタイルの差異や多様なストラテジー使用を考慮した教室活動の工夫について、話し合いたいと思います。

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