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NO.60

 

タイトル:アンケートの効果的な取り方と<アンケート"余談">の解析

担当者:西尾治子

テーマ:構成、評価

キーワード:アンケート、モティベーション

タイトル:授業評価について(アメリカの大学での体験から)

担当者:林精子

テーマ:構成、評価

キーワード:授業評価


10/02/00

no.60

 ようやく学年末試験の採点・成績評価を終えて、ホッと一息ついている方も多いのではないでしょうか。体をやすめる暇なく入試という大仕事に突入した方々は、風邪などひいていませんか?

■例会報告1.

アンケートの効果的な取り方と<アンケート"余談">の解析

司会:西尾治子さん

年度を締めくくるに当たって、最近各校で実施されるケースが増えている授業アンケート。
 前半は西尾治子さんが自発的に実施された@「学生アンケート'98 Motivation」、及びA「学生用アンケート '99 余談」、B「教員用アンケート'99 余談」三者の比較対照から、学生の要求と、教師の提供するものとのずれ、相関関係を見ることで、「余談」とモーティヴェーションとの関係について考察しました。

 西尾さんはご自身が行ったアンケートの結果から以下のようなまとめを提示しててくださいました。
1. アンケート調査とは?
 「学生と教師双方に同じ質問をし、質問とデータを集積し、そこから問題を発見すること。」
2.「余談」によって...
A.教師と学習者との関係
-1学習者が教師に親近感を抱く。
ex.教師のフランス語圏滞在経験やフランス語でのコミュニケーションの経験についての苦労話。
-2 一般的に教師対学習者の関係が友好的になり両者のモティヴェーションにプラスの作用をする。この結果、学習目標に関するコミュニケーションが両者の間で円滑化し、授業が活性化する。
-3教師の考え方、ものごとの見方などが納得できる場合、
→学習者は教師の広範な知識や経験に尊敬とあこがれの念を抱く。
 →一種の師弟愛が生まれる?教師に対し学習の成果で恩を返そうという心理作用が働く。
-4学習者が教師に反感を抱く。
 ←教師が対象言語やその国々に思い入れが強すぎる場合。
 ←自国の社会諸相分析において批判的すぎる場合。
 ←話し方が下手、長すぎる場合、内容が興味をもてないものであるとき。
 ←学習目標に滞りがあり学習者が試験のことが心配になるとき。
 ←学習者が教師の人格に共感を得られないとき。
 ←教師が学生を一個人として扱わないとき(初心者だからと子供扱いにするのは危険)。
B. 学習者どうしの関係
- 直接的学習目標ではない異質の知識、感情を共有したことによる一種の連帯感の創出。
- 共同作業、グループ学習にたいして積極的になる。
C.学習者
- 学習者にとって息抜きとなる。
- 余談の種類によっては学習意欲が刺激され、もっと勉強したいという気持ちに駆り立てられる。
- 対象言語の話される国々により関心を抱くようになる。
- 消極的行動としては余談ばかりを要求して学習目標到達を阻もうとするものもいるので要注意。
D.学習環境
- 学習の場が和やかになる。
- 仏検を受けたいという希望者が増える。
- グループ作業、共同学習がしやすい環境が創られる。

 グループディスカッションは、
西尾さんのアンケート結果を見ながら行われ、次のような意見が出ました。
1. アンケートの目的
- 実態を表す指標を得る。
- 因果関係を探る。
- 集団についての全体の情報を得る。
- そこからメジャーな傾向を読み取る。
- 少数意見も取り入れる。
2.「 アンケート"余談"」(上記A、B)*の内容の分析
 (*アンケート表については、Péka論集EDFJ第9号を参照。)
-どこからが余談か??授業とは全く関係のない余談。余談も1つの勉強(学習的余談)
-教師はクラスの運営を考えて余談を言い、学生は個人的情報として受け取っている。
-学生はリラックスした雰囲気で受講したいと思っている。
-学生の要求と教師の認識にずれがある。
-仏語圏で生活した教師にとって当り前のことが、学生にとっては新鮮。
-教材、activitésとの関連で、どこで余談を入れるかが問題。→この場合は「余談」ではない?

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■例会報告2.

授業評価について(アメリカの大学での体験から)

司会:林精子さん

 後半は林精子さんが1992年-96年アメリカの大学で日本語を教えられた際に大学側が実施していた授業アンケートの実例を提供され、授業評価について考えました。

1. 評価??いつ、どこで、誰が、どのように、何について行うか。
-大学当局が実施するもの
・評価されるが結果は教員に伝えられないケース、学生が大学に評価法を提出するのは自由意志に任されるが、教員には個人的にアンケートの結果が通知されるケース。
・日本では年度の最後の授業時間内に実施し、そのまま結果を知らされることなく年度を終了してしまうことが多いが、アメリカでは期末試験後に結果を教員に告知するためにアンケート尾は事前に行っておくことを当局から指示される。
・日本では教育の質の向上という観点から行われる次元にとどまるが、アメリカでは勤務評定のレベルまで念頭に置かれている側面がある。
2. 評価表
配布資料では、教員に対する評価としては、以下の項目が設定されていました。
@ 授業の準備はなされていたか。資料は組織的に提示されていたか。
A 学生の批評、質問に効果的に答えていたか。
B 教材に興味を引き出していたか。
C 出席している全学生に教材を理解させるのに積極的な態度が見られたか。
D 成績評価が公平になされていたか。
E 教育法が学生に学ぶ意欲をかき立てていたか。
3. 評価の結果
上記の項目がそれぞれ5点満点で学生によって評価されます。本人、同じコース
担当者6名全体、東洋語部門全体、大学全体の評価結果が併記されていましたが、担当者本人の評価は一般に高かったようです。シラバスをきっちり出すので到達目標がはっきりしています。15週間で1学期、評価の結果は期末試験の後、返ってきますが、手渡しはされないのだそうです。尚、配布資料は特別に複写させてもらったものとのこと。また、自由記述の項もあります。良かったこと、改善すべきことが具体的に記述されます。
4. 授業評価の長所と欠点:
長所??結果を積極的に受け止めることによって、次の授業に生かせること。
短所??教員は心理的圧迫を受け、絶えずアンケートの結果を恐れて、学生の御機嫌をとる傾向が出てくること。
5. 授業評価の必要性
結果的には必要だと言えそうです。
6. 授業評価の課題
どれだけ客観的にできるかが問題。客観性をみるには、時々授業を録音するという手立てがあります。日本では年度末になされるので、次年度には生かせるが、目の前の学生に対してはフィードバックできないので、後期のスタートに当って個人的に「これからどういう授業を受けたいか」を学生に書かせたという例が報
告されました。
(S.H.)
 

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■Péka Info

ATTENTION! 会場・時間変更
次回例会は会場、開始時間とも変更になります。ご注意ください。

次回のお知らせ

次回のPékaは...
2月19日(土)14:30-17:30
上智大学四谷キャンパス
3号館5階 3-538 CALL教室
(土手沿いの正門から入ると、すぐ右手=守衛所の向かい側に1号館に入る入り口があります。そこから入って、まっすぐ廊下を歩き、つきあたったところが3号館です。理工学部掲示板と階段のそばに、エレベータがありますので、5階へどうぞ。エレベータをおりたら左へ、廊下を9号館の方向へ行くと、左側にCALL教室があります。)

 次回のテーマは、前回時間の都合で順延となってしまった「授業の引継ぎについて」。99年度年間テーマ「授業のかたち」の総まとめと2000年度の年間テーマについてのディスカッションも行なう予定です。奮ってご参加ください。

授業の引継ぎについて」
司会:土屋良二さん
2年生のクラスを担当したとき、学生たちは1年の時に何を習得してきたのか不安に思うことはありませんか?現在の大学の授業では担当者が綿密に連絡を取り合っているケースは稀で、むしろ没交渉を原則としているようなところがあります。そんな中で担当したクラスの状況を素早く的確に把握し、対策を施すにはどうしたらよいのか、また、自分のクラスを送り出すにあたって次の担当者にわかりやすい引継ぎの仕方とはどんなものなのか、皆さんのご意見を伺いながら、教師間の関係、クラス間の連絡の方法について考えたいと思います。

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