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NO.59

 

タイトル:「息抜きの仕方」

担当者:左合桜子・西村亜子

テーマ:構成、クラス運営

キーワード:授業のリズム、作業の多様化


15/11/99

no.59

地球温暖化の影響でしょうか、季節感がはっきりしなくなったこの頃ですが、 いかがお過ごしでしょうか。 今回の例会は、秋の学園祭シーズンを迎え、学生も先生も一息つきたい10月末に、その「息抜き」がテーマとなりました。

■例会報告

「息抜きの仕方」

司会:左合桜子さん・西村亜子さん

 授業の「かたち」を考える4回目。一年間という長丁場、毎回50?100分という長時間、この授業という競技場を常時同じスピードで走り続けていると、教えるほうも教わるほうも息切れしてしまうことがあるのではないでしょうか。今回はまず、一回の授業について、各自が実際に行っている「息抜き」の具体例を挙げ、「どういうときに息抜きをするのか」「どんなことをするのか」を考えるグループ・ディスカッションで問題にアプローチ。その後、年間スケジュールという長いスパンから見た「息抜き」を探りました。

1.「息抜きって何?」
 ここで取り上げられた「息抜き」は「手抜き」とは違い、授業中に蓄積した緊張の緩和、一種のガス抜きのようなものと考えられます。授業のリズムに変化を持たせるためのactivitésの具体例が数々出されました。

 1) 出席カードを配る
授業そのものから完全に離れる物理的な中断とも言えるものですが、特に長い授業ではトイレタイムなどとして完全な休憩を取るのも授業に集中するためには有効です。
 2) ビデオ・映画を見せる
授業と関係なく観光ビデオなどを見せても学生は寝てしまって効果なし、ということもありますが、授業と関連のある表現を使っているものは聞き取り練習に利用することができます。また、映画も通して見せるのではなく、毎回10分と区切って見せると、次を見るのが楽しみで次回の授業に熱が入り、「息抜き」を目標にがんばる学生も出てくるとのこと。
 3) シャンソンを聞かせる
ただやみくもに聞いたり、歌ったりするのではなく、発音指導や単語の勉強に絡めて利用すると効果的で、Frère Jacques のような曲を輪唱で歌うとクラスの雰囲気がなごみ、教師に対する親近感も増すそうです。
4) 文化や試験のことなど授業と違う話題を
話す
話す話題にもよります。文学の話など教師の関心だけで話すと全く学生は聞かず、教室の雰囲気を悪くするだけということもありますが、日仏の文化比較など視点を工夫するとそれなりの効果はあるようです。ただ、学習しなければならないことが山積みで、文化の話までしている余裕がないのも現状です。
 5) 息抜きはしない
授業の中で読む、聞く、書く、話すという四つの作業を適宜配分して、作業を変えていくことが「息抜き」に繋がるという考え方で、その意味では授業全体が「息抜き」とも言えるかも知れません。また、やる気のある学生からは教師の勝手な息抜きは怠慢と見なされることもあります。

 一通り具体例が出たところでこうした「息抜き」はどんな時に行われるもので、どんなことを指すのか、「息抜き」の定義が試みられました。

●どんな時か:
 1) 学習項目の切れ目
 2) 学生が飽きた様子を見せたとき
1) のケースは教師側で計画的に息抜きを入れることができますが、2) は状況により臨機応変に判断する必要があります。また、たとえ予定した「息抜き」であっても学生のノリ具合で息抜きをせずに次の項目に入っていくこともあるでしょう。
 3) 教師が疲れたとき
教師は絶えず学生の変化に気を配り、本人は息抜きできないと思われがちですが、意識しなくとも授業の疲れは、声が単調になるなど表情に現れるもので、学生からすれば同じ声をずっと聞き続けることは苦痛でもあります。そういうときは声を出す人を変える(教師→学生、学生A→学生Bなど)ことで学習の形態を変え、「息抜き」をする必要があります。

●「息抜き」とは何か
 こうしたことから考えて、「息抜き」とは言語の習得という目的達成の効果を高めるために、授業中に行う作業に様々な変化を持たせることと定義できるでしょう。これによって学生の集中力を高め、授業をより実り豊かなものにすることができるのです。その意味では教材の変化だけではなく物理的な変化も「息抜き」になります。たとえば、ストレッチ、庭に出る、教室内を移動する、着席位置・グループを変える、といった体を動かす activités も「息抜き」になるでしょう。「息抜き」とは空白ではなく、作業の変化で頭も切り替え、授業にメリハリをつける計算されたものなのだという結論に達しました。
 学生は寝る、ぼーっとする、おしゃべりをする、サボるといった自主的息抜きができますが、教師は、ドタキャン(当日休講)という伝家の宝刀を抜かない限り、どんなに体調が悪くても、たとえ自習にしても、質問に答えるために教室で学生と対話し続けなければなりません。学生に作業させることそのものが教師にとっての「息抜き」になるとは因果な話です。

2.年間を通しての「息抜き」
 授業が単調になるのを避けるという点では、当然、年間のリズムにも注意を払う必要があります。「あーまたフラ語だ?」と学生に言わせない工夫、アイデアが幾つも出されました。

●まず、どういう時に「息抜き」が必要か。
 1) 夏休み前の暑いとき:これは肉体的に無理があり、外に出るなど環境の変化が必要です。
 2) 学園祭など学校行事の前後:学生の頭はそちらでいっぱいというときは詰め込みは効きません。

● どのような「息抜き」があるか。
こちらは実際に行われていることばかりではなく、可能ならばという条件付きのものもありました。
 1) 美術館など教室外の施設に行く
 2) 映画・ビデオを見せる
3) 人前で何か発表するグループプロジェク
トに取り組む
 4) クラス・コンパ
5) ワイン・パーティー、
チーズ・パーティー
6) ゲスト講師を呼んで、いつもと違った形
で授業をやってもらう
7) 料理のrecette を解読して、実際に料理
を作る
3) は日仏学院やアテネフランセのような様々な職種の学習者が集まったところで、各自が自分の専門について話すという形で実現しているところもあります。7) も実例が紹介され、調理実習の場所と時間を提供してくれる学校を羨ましく思いもしました。4) と5) は友人のフランス人を呼んでくると実際にフランス語を使う機会にもなり、有効な「息抜き」となるでしょう。

 「息抜き」は中間とも限りません。学生にとっては最初の5分と最後の5分が微妙な時間で、さあ授業を始めようという時に教師に独りよがりな話をされてはたまらない、つまらないビデオを時間いっぱい見せるのなら早めに切り上げたほうがよいという、学生の立場からのもっともな意見もありました。また、年間の流れの中ではオリエンテーションにあてられることが多い第一回の授業と試験準備にそわそわしている最後の授業の扱いも難しいものがあります。
 結局、今回の「息抜き」は少しも休息ではなく、惰性に陥らないために教師の注意力が問われるものだということがわかりました。ところで、最後にこれは怠慢な人間の個人的な感想ですが、常に100パーセントの出力で走り続けるのはやっぱり疲れる、80パーセントの力で余裕を持った授業ができないものか、その意味で有効な「手抜き」はないものなのかと考え込んでしまいました。もちろん、毎回授業がうまく運んでいれば、疲れなど感じないのでしょうが?(R.T.)
 

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■Péka Info忘年会!忘年会!
先号でもお知らせした通り、次回の例会のあとは忘年会です。 ぜひご参加ください
日時:12月11日 7時から
場所:神楽坂 昔屋 (tel 03-3267-9595)
「平安鍋コース」(小鉢、刺身、やきとり、昔鍋、酢の物、エビ塩焼、フルーツ)4,000円で飲み物は別料金。ご参加いただける方は、
12月8日までに、
根岸純さんまでご連絡下さい。

次回のお知らせ

次回のPékaは...
12月11日(土)3:30-6:30
東京日仏学院 207教室

授業の形を考える第5回は二本立てです。
1.「授業アンケート・授業評価について」
司会:西尾治子さん、林聖子さん
 学生たちにモチベーションを与えるものは何か?というテーマに沿って昨年および今年おこなったアンケートの結果について分析します。また"効果的なアンケートの取り方"について是非みなまの貴重なご意見を伺いたいと思います。

2. 「授業の引継ぎについて」
司会:土屋良二さん
 2年生のクラスを担当したとき、学生たちは1年の時に何を習得してきたのか不安に思うことはありませんか?現在の大学の授業では担当者が綿密に連絡を取り合っているケースは稀で、むしろ没交渉を原則としているようなところがあります。そんな中で担当したクラスの状況を素早く的確に把握し、対策を施すにはどうしたらよいのか、また、自分のクラスを送り出すにあたって次の担当者にわかりやすい引継ぎの仕方とはどんなものなのか、皆さんのご意見を伺いながら、教師間の関係、クラス間の連絡の方法について考えたいと思います。

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