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NO.57

 

タイトル:「指示の出し方、指名の仕方」

担当者:土屋良二

テーマ:構成、クラス運営

キーワード:指示、指名、授業の流れ


28/08/99

no.57

 厳しい残暑が続いていましたが、朝夕は少し過ごしやすくなりました。そろそろ教室が懐かしくなって新学期の準備に取りかかる方も多いのではないでしょうか。秋からの授業に新鮮さを出すためのアイディアいっぱいの例会報告から。

■例会報告

「指示の出し方、指名の仕方」

司会:土屋良二さん 

冷静沈着・才色兼備 ( Vive l'égalité des sexes !)・質実剛健 (?? なんのこっちゃ)でありながら、ユーモアのセンスも抜群の名Animateur、土屋良二さんの司会のもと、今年度第二回目のペカはまず「指示・指名とは?」を定義することから始まりました。

指示とは?
? 学習を始める・変える・終える、いわば“交通整理”の合図 (Signe) 。
? 直接的・間接的命令。
? 達成目標の提示、作業手順を明確にするもの(Consigne)。
指名とは?
? 学習の場で全体から区別するための特定・不特定の行為 。
? 指名の仕方としては
appeler / poser une question / designer / inciterなどがあげられる。
 上記の定義を踏まえた上でグループに分かれて「指示・指名の意味と目的」について討議・発表しました。

指示の意味と目的: 
- クラスを構成するもの=Structuration。反応は別として、授業の流れを決めるもの。
- 合図・作業手順・学習者が安心し、理解しやすいようするための目標の説明。
- クラスルールの提示(集団生活のル-ル。例:携帯を切る・先生が来たら私語をやめる...)
? 教師がanimateurであることの提示
=教師は大枠だけを決める人。
=学習者の道標であることの表明。

指名の意味と目的:
- 嫌いなもの・してはいけないもの。
(注:このグループの発表者が)
- 学習者に発表の場を与える手段。
- 説明の一段階:反応を引き出して発展させるための手段。
- 学習者の理解度をチェックするため・採点のため・“アリバイ”づくりのため(注:教師だけがそのつもりになっていることもある)。
- 緊張感をあたえる。
- 時間の節約(特に大クラスで)。
- おしゃべりをやめさせる。
- 最近の学習者は自発的に発言してクラスメイトの反感を買うことを嫌うため、目立たず発言できるように指名する。
- クラス全体の共有する場と時間を作る(指名された者→役者・他→観客)。

 次にこの指示と指名の目的に反して陥りやすい失敗にはどのようなものがあるか話し合いました。

指示の失敗
- わかりやすくしないと伝わらない。
- 一段階ずつするべき。
- 説明し過ぎて作業が面白くなくなる。
- Consigneと作業のバランスが悪い。
 (例:説明に時間がかかりすぎて作業する時間が足りなくなってしまう)
- あまりContraintes が多すぎるとdirectifになってしまい、学習者から見るとつまらない。
- 学習者の作業が機械的になり、皆が同一の方向に行ってしまい、クレアティヴではなくなる。

指名の失敗
- 学習者が受け身に回り、次から自発的に発言しなくなる。
- 時間が無駄になる=答えられない学習者が指名されたとき、説明が重複する。
- 自分の所だけに注意し、他人の話を聞かない(順番にあてる時など)。
- できる人だけを指名してしまう。
- びくびくさせてしまう。
- 指名をしないと、ずうずうしい人ばかりが発言してしまう。
- あたったあと、緊張感がなくなる。
- あたる部分しか勉強しない・やらない。
- 同じ人ばかり当ててしまう(教室の配置の都合、答えられそう・答えてくれそうな人...)。
- あてるパターンを読まれてしまい、緊張感がなくなる。

 最後に、以上の陥りがちな失敗を踏まえたうえで、90分授業・50名を相手に「なるべくたくさんの学習者に発言させるためにどうやって、又はどのような指示・指名をしますか?」という最後の難問が出されました。このTPに使われたのは 『Grammaire au quotidien』小石悟・Marie GABORIAUD (第三書房)の第2課でした。

グループ1:
? 学習事項を予め口頭で示し、「グループに分かれて」「わからないことがあったら質問して」と言ってコピーしておいた

問題をやるように言う。30分後、「そろそろいいですか」と終了の合図をだし、グループ毎に提出させる。答は教師が一方的に読んで説明する。(先生が風邪を引いた場合など ?)

グループ2:
- Conjugaisonを教師が発音。グループ分けをする(これは第一回目の授業でルールを示しておく)。50名指名するのは難しいし、全員にはあたらないので名を読んでアトランダムにあてる(→緊張感は残る)。
- グループごとに学習者同士で各人称を言わせる。こういう場合は実際に教師が学習者と一緒に例を示すと効率的である。「一人ひとつづつ言っていって?!ちょっとやって見ようか」と学習者数人を立たせ "je travaille..." と目線で次の学習者を見やる。例を示したのち、作業させる。

グループ3:
- 指示は "Choisissez / Demandez"といったフランス語にジェスチャーを付ける。
- Exercicesはゲーム化したり、dictée化したりしてやり方を教科書と変える。できるだけ多くの人が関われるように、また、飽きさせないように組み立てを予測させないような指示のパターンをたくさん考える。指名のパターンも同様。 例えばconjugaisonの問題を ゲームにする時。「人称カード」と「動詞カード」に分け、「山!」「川!」方式に教室内を歩きまわって相方を見つける。何回も繰り返して言うのが目的。

グループ4:
-1つの問題の答えを複数の学習者に板書させる。言わせるだけでは足りないことも。書かせることも大事である。これは逆もまた真なり。多くの学習者を参加させることが可。
- 指示は「スタート」だけで学習者にそれそれ問題をさせる。教師は教室をまわって質問を受ける。正解は教師が板書しておく。勿論、「先に見てはいけない」ということは了解事項。
- グループでやらせて、発音の練習と共に答えあわせ。

結論として:
- 指示は細切れにせず、全体が理解できるものを最初に出す。
- 教師対1学習者にはせず、グループ分けする方がよい。
-「学ぶこと」は教材にある。「どういう風にやるか」を明確にするのが指示。
- 学生同士が指名しあってコミュニケーションをとるということも学ばせる。
- なるべく多くの学習者を参加させる。
- 指名をしないということで一体化が可能。つまり、教師対学習者ではなく、学習者・教師対フランス語。
- 板書する人と読む人を変えて発表させる。責任の分担(軽くなる)と学習者同士のコミュニケーション、親近感・信頼感が生まれやすくなる。
- 指示を最低一つは「ヒネる」準備を教師はしてくるべき。これはマンネリ化を避けると同時に、「使えない」問題の有効利用にもなる(リサイクルというべきか?)。

 今回のTPでは、参加者が実際に何と言って指示しているのか、具体的な "Consigne"を見せ合いました。自分では明確な指示を出しているつもりでも、学習者にとっては始めての学習事項や作業の多いはずです。また指名の仕方一つでクラス内での人間関係とクラス運営も変わることができそうですね。「廃品利用」も指示次第...。う?ん、後期が楽しみです。(A.N.)

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■Péka Info

次回のお知らせ

次回のPékaは...
9月25日(土)2:30 - 5:30
東京日仏学院 301教室
(らせん階段を上がったところの部屋)

「ヒントの与え方・訂正の仕方」
司会:未定
みなさんが授業中与えるヒントにはどんなものがありますか?また、学生の間違いはどんな風に直していますか?次回は、「ヒントの与え方・訂正の仕方」について、原田早苗さん他、数人のメンバーが自分の授業のようすを記録したものを材料に話し合いを進めます。次回例会までに、授業を録音・録画できる方は、ぜひその記録をお持ち下さい。

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