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NO.40

 

タイトル:グループを知る・動かす 

担当者:日本・精神技術研究所 内田純平

テーマ:構成、クラス運営

キーワード:コミュニケーション、グループ、対人関係、心理、EQ

 


Péka Pédagogieを考える会 40

NEWSLETTER

le 17 octobre 1996

 

102東京都干代田区紀尾井町7-1

上智大学外国語学部

田中幸子研究室 tél.03 3238 3742

郵便振替口座00120-1-764679 PEKA

 

■例会報告

 グループを知る・動かす (日本・精神技術研究所 内田純平さん)

 秋のゆふぐれ…とたまには静かにたそがれてみたい、そんな今日この頃ですが、Pékaの皆さまにおかれましては、いよいよ始まった新学期をロケット・ダッシュで見事飾られていらっしゃることと存じます。

 さて、後期最初のPékaは、日本・精神技術研究所の内田純平さんをお招きしてお話しいただき、クラスをうまくアニメイトできる「グループ・リーダー」としての教員の役割について考えてみました。そうした役割・能力を開発するにはどうしたらいいか。そのための試みのひとつとして、内田さんのお話しに続いて、参加者による「実習」も行われました。

 1 教える側/教えられる側の「精神的なつながり」の重要性:コミュニケーションの現場で(内田さんのお話しから)

  1-1。マクラとして:グループ・リーダーあるいはanimateurとしての教師

  「グループ・リーダー」とは、普通レクリエーション活動におけるリーダーを指す。その役割としては、活動に参加するメンパー(グループ)がより楽しく、かつ積極的に参加できるように、活動を方向づけ、活性化していくことが期待されている。

 実は教室における教師が演ずるべき役割のひとつに、このグループ・リーダーとしての役割があるのではないだろうか。つまり、フランス語を教えることそのものとは別に、学習者が積極的に授業に参加できるように配慮する役割、いわばクラスにおけるanimateurとしての役割である。

 この場合、鍵となるのは学習者の反応(およびそれに対する教師のリアクション)であることはいうまでもない。フランス語を教えていて、学習者はどのような反応を示すか。また、そうした反応をどう生かしていくことができるのか。いずれにせよこうしたことがらは授業のダイナミズムと深く関わるものであることに変わりはないのだが、ではどのようにして、教師は学習者の様々な反応に関わっていけるのか、考えてみることにしよう。

  1-2。精神技術について

 ところで、精神技術(心理技術)という学問領域はもともとはフランスが発祥(exAlfred BINETの知能心理学)。よく知られたクレペリン検査はこの分野での実施テストのひとつ、同時にカウンセリングも行う。しかしその際に、中心として扱われるのは常にコミュニケーションの問題である。

  1-3。日本人の傾向/フランス人の傾向

 さて、そのコミュニケーションだが、コミュニケーションが上手く行かない場合、日本人は当のコミュニケーションそのものについて話し合うことは傾向として少ない。夫婦の場合を例にとると、何となく相手の気持ちを察してそれで終わりとするか、あるいは突然破局が来てそれでおしまい(!)となってしまうようで、コミュニケーションが上手く行かなかった原因なり問題点について検討することは少ない。

 これに対し、フランス人の場合は、細かい心理のひだを深く追求しようとする傾向が強いのではないか。小説を読んだり映画を見ていると、そのことが強く実感させられる。しかしこれは職業柄皆さんの方がよくご存知のところかもしれない。

 1-4IQからEQへ:教師の課題

 最近、巷ではEQという言葉が流行っている。講談社から先日出版された本(ダニエル・ゴールマン著、土屋京子訳、『EQこころの知能指数』、講談社)がきっかけとなっている。まわりを見回してみると、知的能力は高いのだが、社会性ゼロという人が多い、でしょう?(う一む!)けれどそれではダメなわけで、知能指数(IQ)ではなくて、むしろEmotional Intelligence (=EQ)の方が大切というのが、この本の主眼。ちなみに、米国では小学校あたりからこのEQについての教育を始めているところもあり、たとえば非行防止に役立てている。実は教室でフランス語を教える際に、どのようにして学習者のEQ面に関わってい

けるか、ということが教師/animateurにとって重要な課題となるところ。(フランス語はよくできるのだが、このEQ面が上手くできないために教師としてどうも上手くいかない、というケースがあるのでは?)

2。実習:「たずね・こたえ・観察する」

 さて、コミュニケーションにおけるEQ面の重要性ということだが、ここで具体的な実践を通じてそのことをいくらか確認してみたい。今日の実習のテーマは「たずね・こたえ・観察する」。対人関係において、そもそもこの「たずね・こたえ・観察する」という行為は、一人の人間が瞬時のうちに、しかもごく普通のことがらとして実践している。ここではそれをやや意識的に実践してみることにする。(実習についての具体的な詳細については、<配布資料1>を参照されたい。)

3。実習を終えて:「分かち合い」

 この実習を通じて気づいたこと、学んだこと、感じたことを各自メモし、配布された模造紙に記入。

 各グループから提出された模造紙をボードに提示し、内田さんの解説とともに参加者全員で検討する。

 3-1。参加者のメモから

 役割を与えられると沈黙が気になってしょうがない。特に質問者の役割を演ずるときに、時間が気になった。

 participantであるとともにobservateurでもあるという、(自らの)複合的役割を意識できるようになることは大切なことである。

 自分自身がよくmotivateされていないことがらというのは、相手にうまく伝わらない。

 「質問者」の役割が特に難しいと感じられた。

 気持ちをオープンにした方がコミュニケーションはうまくいく。

 自己分析と他者の評価とのあいだには、思いの外ズレがあった。

 

  実習のあいだずっと歩き回られ、各グループを観察された内田さんは、Pékaが「非常にいいグループである」との印象を持たれたそうです。いや?、それほどでも…ありますよね!ただし、時間の都合で、最後の討論が少々物足りなく感じられた参加者も少なくなく、今回の成果については、次回の例会で引き続き検討し直すこととなりました。また、それとは別に、参加人数を確定したうえで行う別の実習(ロールプレイを中心とした)について、内田さんは示唆されていました。これもぜひ近いうちに実現させたいですね、終始なごやかな雰囲気のうちに行われた今回の例会でしたが、こういうのもなかなか楽しく、また刺激的なものでありました。

(KT)

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Péka Info

 次回について

 例会報告にもありますように、前回の成果を基に次回も引き続きグループ・アニメーションとその前提となるコミュニケーションの問題を考えることになりました。なお、前回欠席なさった方もご安心下さい。模造紙に書いて提出した各グループの考察を田中幸子さんがプリントにしてくださいましたので、議論にちゃんと入っていけるようになっています。こうなったら出席して参加するほかありませんね。

 続いては、クラスがうまくいかないとはどういうことか、うまくいかないのはどうしてなのか、どうしたらうまくいくのか、ということを話し合います。根岸純さんが今年担当しているクラスの中にどうしてもうまくいかないクラスがあってお困りなのだそうで、みんなでその対策を考えてあげようという趣旨も含まれていたりします。みなさん参加して、いろいろなアイディアを出してあげましょう。

(HN)

 

次回のお知らせ

●日時:19961026() 14h30?17h30

●会場:上智大学四谷キャンパス7号館12階 第6会議室

●テーマ:グループを知る・動かすII

     うまくいかないクラスを考える (根岸純さん)

  なお、上記Péka Infoもご参照下さい

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