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NO.34

 

タイトル:文法の授業を考える - 第2外国語のクラスでのフランス語文法 - 

担当者:根岸純

テーマ:実践、文法

キーワード:グループ学習、活性化、コミュニケーション

 


Péka Pédagogieを考える会

NEWSLETTER 34

le 15 sept. 1995

 

102東京都千代田区紀尾井町7-1

上智大学外国語学部

田中幸子研究室

tél. 03 3238 3742

郵便振替口座O0120-1-764679 PEKA

 

■例会報告

 文法の授業を考える一第2外国語のクラスでのフランス語文法一 (根岸純さん)

 930日、もうレギュラーの授業シフトに戻ってすっかり覚醒した人、残りわすかになったvacancesにまだまどろんでいたそうな人、およそ15人が集まった夏休み開け最初の例会は、根岸純さんによる文法授業を活性化するための試みの実践報告と、それを出発点とする第2外国語の文法授業をめぐる自由な討論の形で行われました。

 最初に、教科書文法をテーマとした6月9日の日本フランス語学会シンポジウムの一部を録音で聞きました。そこでは、フランス語学の専門家であるパネラーが「初学者にまずフランス語の文法体系の全体像をつかませる教科書・授業が必要だ」と主張しているのに対し、会場から「そんな授業をすれば学生はみんな寝てしまう。フランス語を専門としない学生の欲求と、彼らが置かれた状況にあった文法授業こそ必要だ」という反論が出されています。これを問題提起の例として、根岸さん自身が今年度の文法授業を活性化するために取り入れている試みが紹介されました。

 対象となったクラスは、いわゆる『文法』・『講読』に分けられた大学1年生のフランス語の『文法』クラスで、週1コマ、学生数41名と46名の2つのクラス.使用テキストは従来型の文法の教科書で、課ごとに文法説明と練習問題があり、接続法まで一通り学習するタイプのもの、この条件のなかで根岸さんは、まず第1に教科書を終わらせることを目指すのではなく緩やかな進度で進むことを基本方針にしています。1年間で文法項目を網羅的に学習するという従来の文法クラスのやり方は学習者の立場に立っておらず、教師にも学生にも余裕がなくなり、一方通行的な無味乾燥な授業になりがちで結局大部分の学生の意欲を失わせてしまう。したがってまず教科書を終わらせるという方針は放棄したという根岸さんの考えは、出席者みんなの一致した意見でもあったといえるでしょう。

 学習項目を減らし時間的余裕を持って進むという全体的方針に立った上で、今年度根岸さんが取り入れたのが文法授業でのグループ学習です。学生の意欲を高めると共に、教室内での「教師対学生」そして「学生対学生」の関係を従来の単線的なものから相互的・複線的なものに変えることで、授業の雰囲気全体を活性化しようとする試みです。具体的には、読みの練習、文法説明の後、関連する練習問題をグループのなかで解かせ、グループ単位で解答を発表させます。グループが固定化しで惰性的にならないように、座席を指定制にし、かつ時々席替えを行なうという工夫もされています。パートナーが変わることは毎回新しい刺激となり学生のモティベーションを維持するために有効だと思われます。実際学生は席替えをとても楽しんでいるそうです。また最初の授業の時に学生にプリントを配布し、こうした学習方法のねらいを説明し、評価に際してもグループ学習での積極性を重視することをあらかじめ伝えてあります。

 グループ学習の効果に対する根岸さんの自己評価は、まず第1に授業中に寝ているような学生がいなくなり、クラス全貝が授業に参加するようになったこと、さらに友人との共同作業をするなかでモティベーションが増大していることです.総じてこれまでの経験と比べて授業の雰囲気は非常に良く、学生が楽しんでいるという結論でした。

以上の根岸さんの実践報告に対して、まず教科書の選択が妥当かという疑問が出されました。資料として配られた教科書のコピーを見るかぎり、1つの課に収めれれた文法項目が多過ぎ、相互の関連性もない、また練習問題も質・量ともに問題があるという指摘がされました。それは、グループ学習において、こうした練習問題を解くだけでは、せっかくコミュニケーションの練習ができる機会なのに十分に生かされないという問題にもつながります。根岸さんの試みに対する肯定的評価と、一方でこうした疑問を出発点として、次のような論議が展開されました。

 根岸さんの指摘のとおり、1年目に文法項目を網羅的に学習する必要はないはずだ・そもそも文法クラスを作って文法だけをまとめて学習する必要があるのか。しかし、文法を教える必要がないということではない、どんな授業、コミュニケーションでも講読でも文法は教える。問題は何をどのような進度で教えるべきかということだ。それにはまず大学の第2外国語では何のためにフランス語を学習するのかということを考えなければならない。フランス語を專門とする学生とそうでない学生、また4年間ないし2年間を通じて何時間フランス語を学習するのかという違いによっても1年目に何を教えるかということは変わってくるのではないか。現在の文法のテキストはフランス語を専門とする教師が自分の学習経験に基づいて書いている、しかし実際にはフランス語を学んでいる学生の多くは第2外国語として限られた時間しかフランス語を学習しない。そうした大多数の学生のために、1年目にはこのぐらいの文法項目を学習すれば良いという基準を考えることができるのではないか。その場合の文法項目とは何か…

 と、延々話は尽きませんでした。容易に想像がつくことと思いますが、ここに書いたのはごくかいつまんだ要旨だけで、さまざまな意見が飛びかっていました。そこで次回の例会でもこのテーマを続けることになりました。ただし今回の議論で共通の問題意識となった点を出発点とするために次のような問題設定をします。

 「大学の第2外国語のフランス語において学生に何を学んでほしいかという観点から、1年目に教えるべき必須文法項目を考える。」

 週1コマ、1年間(2O?25)の講座で、文法クラスということではなく、何のために大学でフランス語を学ぶのかという点からクラスのあり方自体をまず考えて下さい。その上でacte de paroleとも関連づけてどのような文法項目をどう配列すべきかまで具体的に自分のプランを考えてきて下さればベスト。そこまで余裕がなければモデルになると思う教科書の目次のコピーを持ってきて下さい。もっと余裕のない人はその場で議論しながら考えましょう。今回、現在使っている文法の教科書と前期の試験問題を持ち寄って議論する予定でしたが時間切れでできませんでした。それも次回のテーマの対象に入ると思いますので、もう一度ご持参下さい。なお『続・文法の授業を考える』のanimatriceは、根岸さんの指名により飯田良子さんです。お楽しみに。

(T.Y.)

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Péka Info

 アトリエ選択に当たって

 今年のJournée Pédagogique de Dokkyo 1126日に開催されますが、皆さんすでに参加申し込みをなされたことと思います。プログラムには例年にも増してPékaの方々のアトリエが並んでおり、Pékaの活気のあらわれのようで心強い限りです。

 その中に飯田良子さんのアトリエがありますが、内容は2月の例会で行われたこと(cf. NewsLetter no.31)と同じものだそうです。その点ご承知おきの上御参加下さいとのことです。

(H.N.)

 

次回のお知らせ

●日時:19951021() 14h30?17h30

●会場:上智大学四谷キャンパス11号館311会議室(3)

●テーマ:文法の授業を考える2 (飯田良子さん)

  なお、例会報告を必ずご参照ください。

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