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NO.202

 

 

日時:10月21日(土)14:30〜17:30 Zoomで行います。

テーマ:FAUX-DEBUTANTS(準初心者)にどう向き合うか? ─大学1年次クラスの現状と課題─
報告と司会:大塚陽子さん

◇ 2023年度の年間テーマは「内省から挑戦へ DE LA REFLEXION AUX CHALLENGES」です。


05/10/2023

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.202
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

日時:10月21日(土)14:30〜17:30 Zoomで行います。

テーマ:FAUX-DEBUTANTS(準初心者)にどう向き合うか? ─大学1年次クラスの現状と課題─
報告と司会:大塚陽子さん

高校などで第二外国語としてフランス語を学んだ学習者が大学でフランス語を履修する場合、その多くが初修(未習)者用クラスで学びます。こうした学習者=FAUX-DEBUTANTSたちはこの現状をどう考えているのでしょうか。またFAUX-DEBUTANTSの存在を初修者たちはどう感じているのでしょうか?
学生を対象に実施したアンケートやインタビューの結果から見えてきたことを報告し、FAUX-DEBUTANTSにどう向き合うか、ということについて考えてみたいと思います。

◆ テーマ:年間テーマおよび例会の設定

2023年度の年間テーマは「内省から挑戦へ DE LA REFLEXION AUX CHALLENGES」です。

◆ 2023年度の例会日程は、10/21, 12/16, 2/17の予定です。
いずれも土曜日の14:30-17:30です。変更になる場合もありますので、毎回の例会案内をご確認ください。

 

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■■■例会報告 (2023/9/16) //////////////////////////////////////////////

9月の例会は「私達はフランス語の授業で何を目指しているのか?」というタイトルで、鵜澤恵子さんが話題を提供しながら司会進行も務めた。例会はハイフレックス形式で行われ、Zoomでは4名、会場には7名の参加者が集まった。

まず司会者から、今回のテーマについて話し合いたいと思った理由について、おおむね次のような説明があった。
「自分は学習者としてMETHODE DIRECTE(目標言語であるフランス語を使って授業を行う教授法)でフランス語を学び、教師としても基本的にMETHODE DIRECTEで教えてきた。しかしそのような自分が考えるフランス語の授業というものと、多くの日本のフランス語学習者が実際に受けている授業とは、かなり異なっているということも意識している。
そうした中で、最近のフランス語の授業はいったいどういうものになっているのかが自分としては分からなくなってきているので、その点について話し合ってみたい。」
その上で、司会者から参加者全員に質問が出され、参加者は3つのグループに分かれてそれぞれ話し合った後、その内容を全体に報告するという作業を繰り返すこととなった。結局前半だけで、質問の数は3つにのぼった。

質問1:自分がフランス語の学習を始めた時、自分とフランス語との関わりにおいて、どのような未来を想像して(望んで)いましたか?

参加者の中で、フランス語の学習を始めたのが高校卒業以降というのは、4名と少数派だった。それ以外は、小学校で現地校に通った人もいれば、中学や高校で始めた人もいた。
自分とフランス語の関係については、始めた時点で将来の明確なビジョンを持っていたという人はいなかったようだ。
かっこいいからと家族に勧められて、あるいは映画や文学などの文化的魅力に惹かれて、フランス語を選んだ人もいた。中学から第一外国語としてフランス語を選んだ人は、自分はマイノリティとして生きていくことを意識したそうだ。少なくとも英語と同じレベルには達したいという人もいれば、初学者で突然フランスの高校に留学することになり、とにかくサバイバルのために必死だったという人もいた。現地でのフランス語の学び方のスタイルが日本のスタイルとは違っていて、憧れを持ったという声も聞かれた。

質問2:質問1を自分が現在担当している学習者に投げかけたら、どんな答えがあると思いますか? 学習者から直接聞いた話でも、自分の印象でも構いません。

単位が必要だから、他の語学よりも取りやすそうだから、進学や就職に有利だから、といった理由でフランス語を履修する人は多い。
将来フランスを旅行をする時に使いたいという人もいる。その他には、そもそも自分の好きなことや将来なりたい職業など(クラシックバレー、ガストロノミー、パティシエ、ファッション、サッカー、フランス哲学、国連をはじめとする国際機関)があって、そのためにフランス語が重要だというケースも多く紹介された。
また、英語がある程度できるのは当たり前で、差別化のためにもう一つの言語としてフランス語の習得を目指すこともあるという。
いずれにせよ今の学生は、フランスという国やその言語・文化に対して、昔のように憧れを抱いたり「かっこいい」と感じたりしていないのではないか、という話も紹介された。
その後参加者の間で自由な意見交換が少しあり、現代の若者たちはネットゲームやマッチングアプリなどを通じて、国境や言語の壁を超えて交流することが可能だという事実が報告された。実際に、ネットゲームでフランス人と友だちになったので、その人とフランス語で話をするためにフランス語を学びたいという学生もいるそうだ。
まとめとして、ただ単位を取るためというだけではなく、学習者に何か内的なモチベーションがあれば、学習の結果は大きく異なるだろうということが確認された。

質問3:自分がやっている授業と学習者がイメージする授業との間に、ギャップを感じることはありますか?

たしかに、皆で楽しみながら実際にフランス語をたくさん使うような授業をすると、文法の練習問題や単語リストの暗記などを中心に英語を勉強してきた人から見ると、ただ遊んでいるだけに見えるかもしれない。しかし最初はそのようなギャップがあったとしても、その都度丁寧に話し合い、こちらの授業の考え方を繰り返し説明し、学習者が授業に参加することを通してそれに納得してもらえば、最終的にはギャップは解消できる。その点で参加者の意見はほぼ一致しているようだった。
ただ最近は、人とコミュニケーションを取るのがとても苦手な学生や非常に繊細な学生がいるのも事実である。たとえば、まだ授業のやり方に慣れない時期に、教師がフランス語で質問を続けると、自分だけが責められているように感じて追い詰められてしまい、泣き出すようなケースも稀に見られると報告された。
また、教師との相性が悪いと感じる学習者がいる場合、教師が一方的に話す講義型の授業だと、教師の人間性だけが際立ってしまうのに対し、コミュニケーションを中心とした全員参加型の授業にすると、教師の個性はそれほど気にならなくなるという指摘もあった。
その後、日本の語学の授業で一般に重視されている文法へと話題が移り、いくつかの点が確認された。実は規則性が分かれば、たとえ文の意味は分からなくても、筆記試験の文法問題で正解を書くことはできる。そういう意味で、文法ができることと、フランス語ができることは違う。また、文法知識を問うために好んで穴埋め問題が出題されるが、学習者が本当にコミュニケーション能力を身につけるためには、話す時も書く時もPHRASE COMPLETEを自分で作れるようになることを目指すべきである。
さらに、野球にたとえるならば、文法はあくまで野球のルールブックであり、野球がうまくなるためには自分の体を動かして野球をするしかないように、外国語が使えるようになるためには文法(langue)の勉強をしているだけでなく、実際に自分でその言葉を使っていく(langage)しかないのである。
以上を総括して、教師が自分はどのような授業を行うかというプロとしての明確なビジョンを持つことと、それを学習者に丁寧に説明して納得してもらうことの重要性が確認された。

休憩を挟んで、司会者から授業は何語を使って行っているかという質問があり、その場で全員が答えた。100%フランス語という人もいれば、CONSIGNEはすべて日本語で出すという人もおり、日本語とフランス語を半々で使うという答えも聞かれた。
今日のCECRの考え方でも、複言語主義が推奨され、全員が日本語が分かるのならば、あえてそれを教室から排除する必要はないとされている。特に初学者に新しい授業のやり方を理解してもらうためには、日本語での説明は不可欠だろう。また、フランス語で一生懸命説明しても、全員が理解できているのかを確認する術はないし、教師が一人で話している時間が長くなるだけだという見方もある。
一方、フランス語で授業を行うMETHODE DIRECTEの最大のメリットは、CONSIGNEをはじめとして授業中に生じるやり取りがすべて、学習者にとってCOMPREHENSION ORALEになるということだろう。また、教師がフランス語だけで話すようにすると、学習者の方でもできるだけフランス語でコミュニケーションしようという姿勢が強まる傾向が見られる。フランス語でCONSIGNEを出す際のテクニックとしては、言葉の説明は短くして具体例を出す、作業をルーティン化する、などが挙げられた。

以上を踏まえ、司会者は個人的なまとめとして、ビジネス雑誌でもよく見かける以下の3点に賛成だと言った。

1) テストができるということと言語の習得は別物だということを理解する
2) ネイティブ幻想から自由になる(完璧さや正確さにそれほどこだわる必要はない。そもそも正解は一つではないし、コミュニケーションが成り立つことが第一)
3) 留学以外にも、今の時代はやる気があれば、外国語を使う場面はいくらでもある(例:インターネット、週末に浅草に行って旅行者に話しかける高校生)。「1万時間の法則(どんな分野でも1万時間努力すればエキスパートになれる)」に従って、外国語を実際に使う(授業でのexercicesなどは含まない)時間を増やす工夫・努力をする

現代の学習者にとっては、「かっこいい国に対する憧れ」のような気持ちは希薄なのかもしれないが、何か自分の好きなことやしたいこととリンクしたモチベーションがあれば、学習効果は大きくなるはずだ。
私達教師が目指すのは、学習者がフランス語ができるようになることである。そのためには、知っていることは何でも利用すればいいし、必要があれば日本語や英語を使っても構わない。
しかし同時に、学習者のCOMPREHENSION ORALEを増やすためにも、フランス語でできる所はできるだけフランス語を使うことが望ましい(ただし学習者にとって、メッセージの細部はさておき、少なくとも全体的な意味が理解できるように留意しながら)。いずれにせよ、教師自身が授業の明確なビジョンを持ち、それを学習者にも納得してもらうことが不可欠である。

続いて参加者とのディスカッションが行われた。学習者が「フランス語ができる」とはどういう状態を指すのかという質問に対しては、学習者が思い描いている状況でフランス語が自由に使える状態にできるだけ近づくこと、と司会者は答えた。
別の参加者からは、哲学の原書が読めるようになりたい学習者がいたとして、古代ギリシア語やラテン語の文献を読むのと同じように、伝統的な文法訳読法によってフランス語を日本語に訳せるようになれば、その学習者にとってフランス語ができると言えるのか、という質問があった。
それに対して、CECRでも言われているように、そもそも4技能がバランスよく発達するというのは幻想であり、どんな人にもばらつきがあるのだから、その人にとってはそれでいいという意見がある一方で、やはり外国語の習得においては会話がベースであり、PRATIQUEが重要であると同意する参加者もいた。

(H.K.)

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