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NO.200

 

 

◆ 評価者としての教師の視点(下記の前回例会報告参照)
情報提供者なしで、自由にディスカッションをおこないます。

◇ 2023年度の年間テーマは「内省から挑戦へ DE LA REFLEXION AUX CHALLENGES」です。


04/06/2023

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.200
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
◆ テーマ:年間テーマおよび例会の設定

4月の例会では、2023年度の年間テーマと各例会のテーマを決めます。
新学期でお忙しいと思いますが、ぜひ奮ってご参加ください!

◆ 2023年度の例会日程は、6/17, 9/16, 10/21, 12/16, 2/17の予定です。
いずれも土曜日の14:30-17:30です。変更になる場合もありますので、毎回の例会案内をご確認ください。

 

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■■■例会報告////////////////////////
//////////////////////////////【2023/4/15】

2023年4月のPEKA例会はZoomで行われた。昨年9月以来、対面とZoomを併用したハイブリッド形式で例会を実施していたが、今回は対面会場の準備が難しくZoomのみでの開催となった。

◆各自の振り返り
まずは自己紹介を兼ねて、フランス語教師として最近考えていることや悩みなどを各自が語った。
最初に、PEKA例会初参加のAさん、Bさんの発言である。

 Aさん:フランス語教員歴がそれなりにあるが、よりよい授業をするために、仮説を立てて実験的なことをする、ということが自分には出来ない。深く考えずに教科書のとおりの授業をして、その度に上手くいった・上手くいかなかった、を繰り返している。それを振り返りまとめる、次に活かせる何かにつなげる、というところまで持って行くことが出来ない。
Bさん:この4月からフランス語教員を始め、1週間が経ったところである。3月のスタージュで学んだアクティヴィテを教室で実践しているが、グループワークになったときに学習者が実際にフランス語で話しているかどうか不明である。
また、私立大学2年生の授業を受け持っているが、学生はほとんどしゃべれない。自己紹介をするよう促したところ、多くの学生がJe m’appelle... と言ったが、1人がJe suis...と言った。周りと同じことを繰り返すのではなく自発的な発言だったのが好ましいと思ったが、自己紹介としては少々不自然で、それを訂正するべきなのかどうか迷った。

Bさんの後半の話に関して、「相手が名簿などを持っていて、その名簿の中のTanakaは私だ、という意味でJe suis Tanakaと言うことは出来る。そのように説明をすればよいのでは」というアドヴァイスがあった。

 Cさん:クイズ、動画、人形等の小道具を使って大学1年生の1回目の授業を楽しく始めることは出来るようになった。1回目の授業が上手くいくと、そのクラスは1年間だいたい上手く運営することが出来る。しかし、大学2年の授業の運営が難しい。学生のフランス語力の違い、モチベーションの違い、1年生のときには持っていた高揚感のようなものの喪失等、いろいろと理由は考えられるが、どのように運営したらよいのか悩んでいる。
Dさん:今年度はペアでの授業が上手くいっている。ペアの相手の教師は、伝統的な文法訳読法の授業を行っている模様である。使用している教科書に豊富なネット教材が付属しているため、自分のほうは、文法事項等はネット教材で自習してもらい、教室ではANL(Approche neurolinguistique : 神経言語学的アプローチ)に基づいた実践的な会話や読み書きの授業を行っている。
Eさん:ある大学で、Zoomで260人の授業というのをやることになった。頭を抱えている。

Eさんの発言には、「Zoomだというので大学がその人数を許したのでは」「その人数ではラジオ講座のようにやるしかない」と同情的な声が集まった。

 Fさん:FLEの基本はやはりMETHODE DIRECTEだと考える。教師がすべてフランス語で授業をし、学習者はそこにフランス語を用いて参加することで、フランス語を話せるようになる。語学を習得するには膨大な時間が必要であることは自明であるが、もし話せるようになりたいのなら、話すことにより多くの時間を費やさなければならないはずだ。教師によっては、フランス語で授業をしても必ず日本語に戻って確認する、ということをするが、それは違うと思う。フランス語をフランス語として理解するべきなのではないだろうか。

Fさんの発言に対しては、「21世紀の今は、フランス語のみで授業をするのが最良だという考えにはなっていない」という意見があった。これに対しFさんは、「個々人の授業観や理想、そして現実にはこうやっている、というのがあると思う。PEKAに来る人たちのそれを知りたい」と反応した。

 Gさん:私の課題は「交流授業」。2021年度に日仏のオンライン交流授業を行ったが、参加学生の衝突を招いてしまい忸怩たる思いをした。今年はフランス語圏からの留学生3名がいるので、フランス語インテンシブ15名とどう交流させるか、どんな共同作業をさせるかを考えている。「意味のある交流」とは何なのかを考えている。

Gさんの発言に対しては、「日仏の文化の違いを浮き彫りに出来るアクティヴィテがあるといいのでは。現代では日本人もフランス人も同じような生活を送っているように考えられがちだが、実際はそうではない。あいさつの仕方に始まり、週末の過ごし方、自転車の乗り方、といった生活の中の言葉には出てこないような部分で様々な違いが存在する。相手の国の人にインタビューをするとして、その質問を考えること自体が生活の違いを考えることにつながるのでは」というコメントがあった。

 近年では高校でフランス語を学習するケースも増えているという話の流れから、Hさんは勤務校の「準初心者クラス」の話をしてくれた。
Hさん:勤務している大学で「準初心者クラス」を作った。高校でフランス語を少し学習したが、さらに学習したい、という人が予想以上にいることに驚いている。今年度このクラスに在籍するのは6名だが、助け合って学習しており関係性はとてもよい。
しかし、高校で少し学習した人というのは大抵、大学に来てからすごくよく出来るようになるか、まったく出来なくなるかの2つに分かれる。出来なくなってしまうのはとてももったいないと思う。以前、「準初心者クラス」が出来る前に、未習者クラスに入ってきた既習者はとてもよく出来る人で、1年生で仏検準2級を取った。
授業の中で教師がする質問に対し、その既習者は答えが分かっていても答えないのだが、教師がついその学習者に目をやると答えてくれる、ということがあった。

◆学習者に対する教師の評価
「教師がついその学習者に目をやる」という話を受け、学習者に対する教師の評価、という話題へと議論が発展した。
たしかに、教師から見て「この人はできる」という学習者が存在する。教師はほぼ無意識にそのような判断をしてそれが言動の端々に現れてしまうが、それが学習者にどのような影響を及ぼすのかを考えるべきなのではないか、という問いかけがあった。
また、評価する際の「基準」も大きな問題である。「テストでいい点を取ること」「大学入試に合格すること」を最終目標にすることは危険といった考えから、伝統的な評価に疑問を持ち、別の評価方法を提唱する教師がときにいる。学習者のほうも、例えば卒業した高校の教育理念の影響を受けて伝統的評価に拒否感を示すケースが実際に存在するという。
教師が多様な「評価の幅」を持つのは意味があることだろう。しかし、そのようなことにチャレンジしようとする教師も「自分の子どもは伝統的評価で評価されたい」などと言うこともあり、評価基準というのは存外に根が深い問題のようだ、というコメントがあった。またこの問題に関して、ある参加者が「まったく評価しないという方法には賛成できない、なんらかの評価がないと学習者の能力は伸びない」と発言したが、多くの参加者がこれに同意した。
同じ学習者であっても、文法かコミュニケーションかで成績が非常に異なることはあるし、同じコミュニケーションでも、ネイティブ教師か日本人教師かで評価が分かれることはある。例えばコミュニケーションの授業において、正確さを評価するのか、あるいは発信する情報量の多さを評価するのかで、結果は異なるだろう。
大学入試の自由作文で、5〜6行で正確に書かれた文と、間違いだらけだが15行ほど書かれた文と、どちらを高く評価するのかは難しい。本人の人生にも関わってくることなので、ネイティブも含めた複数人で評価を定めることにしている、という報告があった。学期内の試験であれば、教師は評価基準をあらかじめ学習者にしっかりと示す必要がある、という意見に多くの参加者が頷いた。

◆フランス語教師が教えるべきこと
この流れの中で、参加者の1人が、「試験で絵を描いて提出したら教師からよい評価をもらったが、そのことで周りから大ブーイングを受けた」という経験を語った。この経験談を受けて、他の参加者から「日本人は『ずるい』という感覚を強く持ちがちであり、周りと異なったことをする人に対する許容性に欠けるのではないか」というコメントがあった。
そこから、オリジナリティを認めるフランス的なものの考え方を教えるのもフランス語教師の役目なのではないか、という話題へと議論は発展した。
日本では考えられない、ダメもと、ゴリ押し、といったものがフランス語圏には存在する。そうやって各個人が自己を主張する「ぶつかる文化」であることを学習者に伝えるべきなのではないか。そして日本のスタンダードは世界のスタンダードではないということを教えるのが語学教育の究極の目的なのではないか。
また例えば、海外旅行に行ったときは楽しいことばかりではなく、トラブルに巻き込まれる可能性もあるわけで、そのときにどう対処するかを教えなくてはいけないのではないか。嫌なことがあったら我慢をせずに文句を言う、こちらが怒っていることを伝える、女性が男性に言い寄られたときに追い払う、それらの方法を教えることが実は大切なのではないか、といった話題で議論は盛り上がった。

◆2023年度の年間計画
こうした話し合いを経て、年間テーマは「内省から挑戦へ DE LA REFLEXION AUX CHALLENGES」に決定した。そして各例会のテーマは以下のように設定された(予定)。
- 6月17日「評価者としての教師の視点」司会者なし。討論形式。
- 9月16日「外国語教育における理論・信念・現実」鵜澤恵子さんが問題提起、その後討論。
- 10月21日「高校2外既習者への対応」大塚陽子さん報告。
- 12月16日「交流授業」姫田麻利子さん報告。
- 2月17日「2年目の授業をどうするか」詳細未定。

 年度初めということもあったためか、新たな参加者を2名迎えたことはPEKAにとって非常に喜ばしいことだ。今年度も引き続き、毎例会での活発な話し合いが期待される。(mk)

◆ 今回の例会報告を読んで、ご自分の体験談や読後のリアクションを共有したい方は、以下のリンクからぜひどうぞ。
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