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NO.190

 

 

◆10月のテーマは....
 教科書と教師のメタ言語(司会 姫田麻利子)
(2021年度の年間テーマ:教科書をどう使うか)


03/10/2021

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.190
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時 : 10月16日(土)14:30〜17:30
Zoomで行います。

◎事前申込をされた方だけに招待をお送りします。
参加ご希望の方は、お手数ですが10月14日(木)までに以下のリンク先からお申し込み下さい。
https://forms.gle/ByCsPmXsq7qB1qAP8

◎例会前日に、ご指定のメールアドレスに招待URLをお送りします。

 

◆ 2021年度例会予定について
10月16日、12月18日、2022年2月19日を予定しています。会場予約や他の行事との兼ね合いで今後変更の可能性もあります。
※例会日程等の詳細は、PEKA発行のニューズレターやHPでご確認ください。

 

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■■■例会報告////////////////////////////////////////【2021/09/18@Zoom】

9月のテーマ <予習・復習について> 参加者16名

◆出発点
今月のテーマ「予習・復習について」は、松川雄哉さんからの提案。残念ながら松川さん自身はこの日参加が叶わなかったため、提案の趣旨が姫田麻利子さんを通して伝えられた。

「予習と復習どちら(あるいは両方)をやっているか? またそれはなぜ?」「授業外でどんな課題を出しているのか?」さらにそこから「他の参加者たちは何を意識して授業設計しているのだろうか?」……そのあたりをぜひ知りたいと考えた、とのこと。各自、授業において意識することは様々あるだろうが、すべてを取り入れるわけにはいかない以上、その優先順位は何なのか。

ちなみに松川さんがいつも考えていることは、以下の3点。
1) 認知的負荷(授業中に新情報が多すぎると大変→あらかじめ知っていることがあれば、認知的負担は軽くなる。でも軽すぎてもダメ)
2) 学生が一人でできることとできないことは何か?(ちょっとした文法の理解など、新出事項であっても一人でできることは授業中にならなくてもいいのでは? もちろん、新しい文法事項をグループで協力しながら学習しているプロセスも大事)
3) 学習者が主役(教師の説明を聞くのではなく、学生同士がやり取りする中でフランス語をアプロプリエーションしてもらいたい)
このような意識から、今後うまく予習活動ができないものか思案中とのこと。

以上の出発点を確認した上で、自己紹介を兼ねて、一人ずつ「予習・復習」について簡単に一言ずつコメントをしていった。以前の例会では誕生日の順に発言をするという方法をとったが、今回は姫田さんの発案でファーストネームのアルファベット順に発言。実際の授業に活用すれば、参加者の名前を注意して見る(覚える)ことにもつながり、またアルファベットの並びを確認するといった学習効果もある。クラスメイトに興味を持つことにもつながり、ゲーム感覚もあって場を和らげる効果が期待できるように感じられた。

◆自己紹介を兼ねたブレインストーミング
「予習」については「しなくていい」「(積極的に)させていない」という参加者が圧倒的。一方、復習については課題を出してしっかりさせている人がほとんど。復習については、具体的に練習問題など課題を出す方法と、次の授業の最初に行う小テストや期末テストなど、その対策として学生各自の復習を促す方法と、大きく2つに分かれる。
ここで「予習」と「復習」の定義をもう少し明確にすべきではないかという意見も出た。「予習」はPREPARATION、「復習」はREVISIONSだが、「予習」については「単に授業の準備」なのか(前の授業の続きで、答えあわせをするような宿題も含みうる?)、授業での未習事項を学習者が自力で学ぶものなのかで、想定されるものはちがってくる。
また一方で、授業内で行う予習的・復習的学習も考えられる。授業内で行ったアクティヴィテなどを、授業外に広げることも可能か。グルーブでの予習・復習も考えられる。
SENSIBILISATION的なことは授業の最初に行なっているが、オンライン授業になって、授業外で学生に予習を少しさせてフィードバックをさせるような授業について考えるようになったという意見も。多くの人はこれまで「予習」について積極的ではなかったが、オンライン授業になって何か面白い予習の出し方があるのではないか、オンラインには有効なのではないか、という意識を持ち始め、また反転授業とともに予習のあり方に関心を持ち始めているという点がある程度共有されていることが確認された。
また予習・復習を問題にするということは、授業外でどのように学生に勉強をさせることができるのかということ。教科書の課を、あえて授業内で終わらせないようにして、授業と自宅学習の連続性を作るようにしているという意見もあった。初年次の前期では、音声学習を自宅で進めるのは難しいので授業内でおこない、後期からは予習的に音声学習を自宅でさせるようにしているというケースも。動画などをあらかじめ見ておくように指導している、といった意見もあった。

◆グループに分かれてのさらなるブレインストーミング
このあと「ブレークアウトルーム」を使って4つのグループに分かれてさらに意見交換。そこで出された意見や問題提起は主に以下の通り。

- 予習は、授業の前に単語を辞書で引いておくなどか(あくまで学生に任せている)。復習はさせる。主に提出物。学生の動機付けについてはこれまであまり積極的ではなかった。だからこそ、その反省から最近PEKAに参加するようになった。
- 会話の授業では、その日に学んだ文型をつかった復習を次の授業の最初で質問をしたりするので、それができるように、自然と復習を促している。
- 宿題と復習の違いは? 授業内で、前の授業のおさらいとしての復習? 授業後の自宅学習?
- 毎回完結させる授業のあり方もある一方、授業の連続性を持たせることでその間の自宅学習を促す。
- 予習は学生にあまり人気がない。そもそも「予習・復習」の定義は? 予習といってもいろんなことがあり得る。授業(先生)のタイプ、学生のタイプにもよるのでは?
- 予習というのは授業の参加のための準備か、SENSIBILISATION(ビデオなどを見ておいて)的なものか。
- 復習は、前回の授業の確認をすることや、小テストを課すことで、そのための復習を自主的にさせる。
- 予習は、語彙を確認するなどか? 学生たちが自習をできるようにしたい。同じ素材でも予習に使ったり、復習につかったりできる。みんなにとっての正解はないのでは。
- 予習・復習に旧来の原典講読のモデルがあるのでは? その場合、かつては予習(準備)が大事で、授業は答え合わせ的なもの。復習というものはあまり存在しない。ただ、非常に真面目な学生は、さらにもう一度自分で訳し直したり、先生の模範解答を暗誦したりということはあっただろうが、あくまで学生次第。
- 学生のやる気が出るように、自宅学習としての予習・復習の必要性・有効性を考えている。
- 具体的な指示を出して、グループで予習させる。授業と同じグループで行い、授業内・授業外の学習の連続性を維持。
- 予習は先生の前でいい子でいるため、というエモーショナルな理由があるのでは。復習にも何かエモーショナルな理由があればできるのではないか? その意味では、期末テストが復習の大きな動機になっている。具体的な提示がないと復習のモーメントになりにくい。宿題や小テストは必要。
- 復習・宿題として作文をさせている。分量は、最大一枚の紙におさまるくらいで、「何行」など最低量だけ示す。あまり学生の負担にならない分量で。
- 買い物についての授業があったとしたら、その日から1週間買うものについて文章を書かせる。また過去形を学んだら、その週に買ったものを書かせる。次の週に添削して戻す。また書いてきたことをもとに授業で学生同士で言い合う。

◆参加者全員でのフリートーク
◇オンライン授業で変わったこと、予習の可能性?
- 映像、画像、音声などいくらでもリンクを貼ったりでき、SENSIBILISATIONは無限だと感じる。
- 予習・復習にかかわらず、授業外でどう学習させるか?
- 結局、授業外で学習をしないといつまでたっても上達しない。ただし、教師が怒らないと、あきらめずに続ける。それも大切。触れていれば、好きになる。嫌いになってほしくない。
- 続けさせることと、上達させることが重要。
- 予習・復習を考える上で、学生が一人でできること、できないことを教師が明確に意識することが肝心。

◇授業外の予習・復習
- オンライン授業になったことによって、授業前・授業後などに学生同士の接点がなくなった。授業外のグループ作業を考えるのには意味があるのでは? LLの授業で、Dialogueを学生に読ませてそれをテストにする。そのために授業外の時間を使って学生が練習をする。
- 具体的な課題を出す。その際、グループにして課題を出すことも可能か?
- テストなど、自然に自宅学習を促す授業内の課題。結局、具体的な課題提示が必要。宿題は具体的に出せば、学習者が迷うことはない。

◇試験・発表など評価対象の効果
- テストの効用。その対策に、学生同士の勉強での教え合いには効果がある?
- テストの代わりに復習パーティ90分。予習として、学生に作問(REVISION)させて、それを授業時間内で行う。
- テストをやめたら、学生の定着度が下がった。締め切り効果はある。
- 学生と教師との間、または学生同士で練習をさせて、その成果を授業で発表させる。
- 学習感が共有できないと、授業外の学習は予習にしても復習にしても難しい。
- 授業への主体的な参加が3割とシラバスに明記。課題やテストを総合的に評価している。基準や評定がないと学習者はやらない。「成績に響く」ということを明確に示さないと、学習者はやらない。それはとても虚しいが、そんなに悲観的になる必要もないのでは。「テスト」「成績」はツールであり、武器。それは積極的に生かせばよい。
- テストは大いに利用すればよいのでは。テストによって強制的にやらせるところがあったとしても、学んだことは生徒の宝になる。

◇自主学習のむずかしさ
- 学習の仕方は教えられない。高校までと大学の学び方は違うので、すぐには対応できない学生も多い。テストの結果(求められていること)によって気づき、学習の仕方を改めるのでは? 仮に教師が学生を変えることができず単位を落としたとしても無力感を覚えなくてもよい。そのことで学生が目を覚まして、学び方に気づくことも十分ありえる。学習者の気づきなくして、自律学習(予習・復習)は成り立たない?
- しゃかりきにやったから結果がでるというわけではない。そこで求められている結果を出せるのが、正しい学び方。結果を出せるように模索するなかで学生は自分の学び方を手に入れていく。

◇ある具体的なケース
- クロエさんから、具体的なケースが紹介された。「政宗伝」(三修社)という教科書は予習をする形式なので、3名ほどのグループで準備をする。連絡先を交換して、リーダーを決めて(ローテンションにする)予習する。しかし、なかなかうまく準備が進まないので、いまのところ時間はかかるが、授業内でやることになっている。この教科書への反応として、いったん文法をさらった人が、楽しみながらやるとよい教科書だという印象だが、入門としては難しいか?
- 教師がよほどヒントを与えないとできないかもしれない、「発見!フランス語教室」(第三書房。予習厳禁の教科書)、「ROND-POINT」(Maison Langues)などに近いように思った、といった意見も出た。

◆まとめ:今後の課題
今回は「予習・復習」についてその定義や内容、効果について意見を出し、整理して、今後の問題設定につなげる過程であったように思われる。
原典講読をメインとするようなかつての大学の外国語授業では、予習が必須であった。その反動からか、コミュニケーションを重視するようになってきた昨今の授業では、予習はあまり評価されてこなかったが、オンラインになって学生にとっての学習空間としての「授業」「自宅」の境が曖昧になったいま、あらためて予習も含めた自宅学習の可能性を考える好機といえる。
ただし授業内容やスタイルによって、どういった自宅学習(予習・復習)が可能か、何が有効かはかなり変わってくるので、今後具体的な議論をするためには、まずなにより具体的な授業内容・形式を設定していくことが不可欠ではないだろうか。
(M.S.)


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