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NO.182

 

 

6月のテーマ 「遠隔授業と、誤用訂正・フィードバック」
話題提供1)
Googleスプレッドシートを活用した筆記の誤用訂正(澁谷与文さん)
話題提供2)
オンライン授業(初級フランス語)での練習問題のフィードバック(小松祐子さん)
おふたりに対する質問やコメントから始めて、誤用訂正や広い意味でのフィードバックの問題について意見交換しましょう。

*2020年度年間テーマ:
「教科書をよく知ろう」


02/06/2020

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.182
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郵便振替口座
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時 : 6月13日(土)14:30〜17:30
6月の例会は、Zoomで行います。

◎セキュリティのため、事前申込をされた方だけに招待をお送りします。
参加ご希望の方は、お手数ですが6月11日(木)までに以下のリンク先からお申し込み下さい。
https://forms.gle/HEfXAkUsYs6BZAuw5

◎例会当日の午前中に、ご指定のメールアドレスに招待リンク等をお送りします。

◆6月のテーマ 「遠隔授業と、誤用訂正・フィードバック」
話題提供1)
Googleスプレッドシートを活用した筆記の誤用訂正(澁谷与文さん)
話題提供2)
オンライン授業(初級フランス語)での練習問題のフィードバック(小松祐子さん)
おふたりに対する質問やコメントから始めて、誤用訂正や広い意味でのフィードバックの問題について意見交換しましょう。


■□■ 2020年度例会日程 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
メモをお願いします。

例会日程は従来通り年6回いずれも土曜日の午後で、6/13, 9/5 ou12(未定), 10/3, 12/19, 2/20としたが、
会場の調整により日程変更の可能性もある。

 

 

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■■■ 例会報告////////////////////////////////////////////////////////////
= = = = = =【2020/04/18@Zoom】

4月例会は当初、都内の大学での開催が予定されていた。しかし3月下旬に東京都知事による週末外出自粛要請が出されるに至り、PEKAとしても例会の開催形式を変更することにした。折しも大学をはじめとする多くの教育機関では、遠隔授業の本格的な導入がいよいよ現実味を帯びてきていた。
そこで急遽、4月例会はこの緊急課題に焦点を当てることとし、PEKA史上初となるZoomによる遠隔会議として開催することになった。今回初参加の方々に加えて、普段はなかなか例会に出席できない遠方の方や懐かしい顔も見られ、総勢47名による活発な情報交換や議論が行われた。

◆4月の例会テーマ:「<遠隔>でどのようにフランス語を教えるか」

例会は途中20分の休憩をはさんで前半と後半に分けられ、前半は西川葉澄さん(慶應義塾大学SFC)による同期型の模擬授業が行われ、後半はLMS(Learning Management System)を活用した非同期型の授業(課題およびフィードバック)のやり方が、茂木良治さん(南山大学)によって紹介された。各発表後には、その内容に関する質疑応答や遠隔授業全般についてのディスカッションが行われた。
しかしそれに勝るとも劣らず重要なのは、企業などで遠隔会議に用いられているZoomという新しいツールを体験してみるということだったと言えるだろう。実際、参加者の多くはまだZoomの使い方に慣れておらず、基本的な諸機能を一緒に確認しながら身につけていくという所から始まった。

◇前半の模擬授業はまず、普段の教室で行われているような授業内容が、遠隔授業においても近い形態で可能なのか見てみよう、という形で進められた。次のクラスを想定していた。
[対象] A1レベルの大学生(90分X週に4コマ)
[教科書] Agenda 1, Hachette, 2011
[目標]「怒りを表す」というテーマの3回目の授業(Ibid., p. 129 : Jour 7, RENDEZ-VOUS 2, A FAIRE)
*このクラスでは毎週1つのテーマについて、4人の教員がそれぞれの角度から順にアプローチする。(教科書の 1. A DECOUVRIR, 2. A SAVOIR, 3.A FAIRE に加えて、慶應義塾大学SFCで独自に設定している総まとめとしての 4.REINVESTISSEMENT )

提示された授業プランは、およそ次の通りである。
- まずは簡単な挨拶の後、その週の2回分の授業内容を一緒に確認する(15分)。
- 次に復習も兼ねて小グループに分かれ、既に学んだ怒りを表す表現をホワイトボードに書き出して、その後クラスで発表する(グループワーク自体は5分間だが、そのための指示やその後のクラス発表も合わせると、全部で20分)。
- そこから新たなdialogueの聞き取りと設問に対する答えを、同じようにグループワークで行い、クラス全体で共有する(グループワーク10分、全部で25分)。
- 再びグループに分かれて「こんな彼女・彼氏はいやだ」というテーマで、不満な点を日本語でも構わないので言ってから(この部分の表現は未習得のため)、それに続けてこの課で学習した怒りの表現をフランス語でグループの仲間に言う(学生に期待される発言例:「彼女が毎回デートに遅刻するんだけど、J'EN AI MARRE ! JE N'AIME PAS CA !」)。教員がグループを巡回するので、教員にも発表する(15分)。
- その後、学生は自分の言ったことをグループの仲間と助け合いながらなるべく全部フランス語で書く(10分)。
- 授業後に、学生は書いた文章をメールなどで教員に提出する。

復習のための最初のグループワークの部分について、西川さんが教員役、他の参加者が学生役で実際に行なった。しかしZoomのチャット経由でファイルを送信したり、ブレイクアウトセッション(グループワーク)を行ったりすると、様々な技術的なトラブルが生じた。通信環境やデバイスの種類など参加者ごとの状況は多様であり、一部の環境で正常に作動する機能が他ではうまく行かないといった事例が多数報告された。もしかしたらその中には、Zoomに不慣れな参加者側の操作ミスや勘違いによるものも含まれているかもしれない。
いずれにせよ、我々が学生を相手に遠隔授業を行う際にも、同様の現象があちこちで発生する可能性がある。
こうして模擬授業を行った結果、教室での授業とほぼ同じ内容をZoomなどの機能をフル活用すれば可能と思われる授業プランに変えて90分間で設計しても、1) その日の回線やサーバーの状況によって、また、2) 参加者数、学生のICT習熟度などの状況によって、教員の側だけでは対応しきれない事態になりうることが確認された。

西川さんはこうした事態を予測していて、より現実的と思われる以下の授業プランBも提案された。
- まずオンデマンド用のビデオを用意し、授業が始まる前に学生にビデオを見てもらい(10分)、
- その要点に関する小テストに答えてもらう(10分)。
- 同時双方向型の授業としては、互いの生存確認と教室コミュニティの確認を兼ねた教員と学生の挨拶を含める雑談(5分)、
- それに続いて事前学習の内容についての質問を受け付け、必要に応じて解説をする(15分)。
- その後、学生に個人またはグループで作業させるために、教員がタスクについての指示を出す(5分)。
- 学生は同期型システム上の教員との接続を解除した上で、個人またはグループで作業を行う(45分)。
あるいはその間、教員はシステムに接続したまま待機し、学生からの質問等に対応するのもいいだろう。そして学生は、指定された期限までに成果を提出すれば良い。
このように、同期型の授業の中でも、非同期の部分と同期の部分をうまく組み合わせるのが現実的であり、ツールを過信しすぎて授業をフルに設計すると、様々な理由で立ち行かないこともあるので、バックアッププランを用意しておいた方が慎重だろう、と結論付けられた。

◇後半はLMSを活用した非同期型の授業のやり方が紹介された。茂木さんの勤務する南山大学では完全クォーター制が採用されているが、今年度は第1クォーター(4月4週目〜6月1週目)はすべてオンライン授業で行われることになったため、最終評価まで含めたオンライン授業のデザインが必要となっている。
大学では一応WebClassというLMSとZoomの使用が推奨されているものの、サーバーに負荷がかかるのをできるだけ避けるため、またプライバシーやセキュリティ上の配慮から、教員には様々な厳しい制約が課されている。それに加えて茂木さんは、学生のICT知識やネットワーク環境がフランス語の評価に大きく影響してしまうのではないかという教育的懸念から、非同期型授業を中心とした授業設計を選択した。
しかも非同期型のオンライン授業では、基本的に学習者がフランス語を学ぶのを教員がサポートする「学習者中心モデル」となるため、学生の自律性を育てる契機となることが期待できる。

まだ大学の正式な授業は始まっていないものの、茂木さんはすでに試験的に、非同期型の課題提示とそのフィードバックを始めている。それはフランス学科2年生(A2レベル)を対象とする「中級フランス語文法1」のクラスで、初級文法を復習しながら、その理解を深め定着を図ることを目的とする授業である。
今回の発表では、実際にWebClassの画面を参加者と共有しながら、学生に文法問題を解かせたり作文をさせたりするための具体的な操作や手順が示された。最後に、非同期学習を円滑に行うためのポイントがいくつか指摘された。
まずはそこで求められている教員の役割(「教員が教える」のではなく「学生が学ぶ」のをサポートする)をしっかり意識することの重要性が強調された。そして教員はLMSに定期的にアクセスし、こまめに返答やフィードバックを行ったり、問題があれば個別に対応したりといった、きめ細かいサポートを行うことが推奨された。

参加者の中には、本格的に遠隔授業を始めているという人はまだいないようだったが、約3時間の例会を通して様々なアイデアや意見が出され、情報が共有された。その一部を箇条書きで紹介しておこう。

○Zoomでは会話に多少のタイムラグが生じるので、普段よりもゆっくり話したり、話すタイミングに気をつけたりした方がよい。
○画面に気を取られているうちに、つい指示を聞き逃してしまう傾向がある。特にグループワークの場合、何分で何をするのかをいつも以上に明確に指示する必要がある。できればその指示を画面に表示したり、画像に保存したりしておく方がよい。
○Zoomの画面や開いたファイルなど、いくつもの画面を行ったり来たりするのは大変。教員はできれば大画面を準備したり、複数の画面を併用できれば理想的。
○一方的な配信にZoom を使い、リアクションペーパーをLMSで提出してもらう。
○Zoomはオフィスアワーに近い感じで利用するに留める。
○PC以外の種類の端末で表示のされ方や操作の仕方を教員もチェックしておくことが役立つ。
○クラスを2つに分けて、一方のグループに説明している間に、もう一方は課題に取り組む、という方法もある。
○完全非同期型の評価は、平常点プラス課題提出による。
○非同期型はどうしても文字中心になりがちで、「話す」活動や学生の発音矯正は難しい。
○発音のオンライン指導は、先に学生に音声を聴いてもらっておいて、少人数ずつで教員がチェックする。
○スマートフォンで学生が自分の発音を録音して音声確認する。あるいはZoomのレコーディング機能を使って録画し、発音の確認をする。
○各学生への個別指導が以前より増え、教員の負担が大きくなることへの対策としては、スマートフォンなどのAI機能を効果的に用い、例えば発音指導なら、学生は課題提出前にそれぞれスマートフォンなどの音声入力機能で練習し、機械に正しく理解されるのを確認してから、教員に提出するなどすると良い。
○複数の勤務校を持つ非常勤講師は、大学ごとの制約も多い中で、それぞれ異なるツールを使いこなし、課題の管理やフィードバック(作文の添削など)を行うのは大変そう。
○これまでは教員は教室での学習を管理していればよかったが、LMSでは個々の学生の自宅での学習にまで目配りすることになる。
○LMSでの課題の管理が大変になりそうなので、提出期限を厳密にするなど、何らかの対策が必要(ただしオンライン環境で困難を抱えている学生への配慮も忘れずに)。
○どうやって学生のドロップアウトを防ぐか。
○教室での授業でも、グループワークなどを行う時には結構時間がかかるものだ。だから遠隔授業でも、あまり時間のロスなどに神経質になり過ぎることはない。
○できることしかできないのだから、あまり完璧主義にならないこと。
○ブラウザの中ではGoogle Chromeが、比較的どのプラットフォームに対しても親和性が高いようだ。
○簡単にフランス語のアクサンが入力できるサイト:https://french.typeit.org/
○録音や録画に便利なアプリ:https://screencast-o-matic.com/

例会の最後に、ある参加者は「オンライン授業が不安だったのですが、誰もが同じ不安を持っていることがわかって、頑張ってみようと前向きになれました」というコメントを残している。他にも、暗中模索する教員同士が不安や悩みを分かち合うことを通して、新たな困難に立ち向かっていく勇気が湧いてきたという声が多かった。これは、正解の見えない未曾有の状況の中で開かれた今回の例会の大きな意義の一つだと言えるだろう。 (H.K.)



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