Pékaトップページ       過去ニューズレターMENU    

 

NO.179

 

 

DOCUMENTS AUTHENTIQUESの活用法

*2019年度年間テーマ:
「成長する教師」


25/11/2019

┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏

     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.179
┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


*PEKA活動資金カンパ口座
三菱東京UFJ銀行 板橋支店
普通3591136
名義:ペカタントウ ウザワケイコ

郵便振替口座
00120-1-764679
加入者名:PEKA

 

■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時:2019年 12月14日(土) 14:30 〜 17:30 
会場:明治大学駿河台校舎 研究棟4階第5会議室
アクセス:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1
https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
御茶ノ水、新御茶ノ水、水道橋の各駅から徒歩で10分ほどです。

12月の例会テーマ : DOCUMENTS AUTHENTIQUESの活用法

*どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。
*2019年度年間テーマ:「成長する教師」

■□■ 2019年度例会日程 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
メモをお願いします。

2019年12月14日、2020年2月8日。
いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが、会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また、開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

 

上へ

■■■例会報告1 (9月例会)///////
======【2019/09/14 14h30-17h30 @順天堂大学 本郷・お茶の水キャンパス】

◆ 例会テーマ:「ECRITの位置づけ」

「ECRITの位置づけ」という例会テーマがまず議論になった。
ECRITという語の解釈は非常に広範である。またテーマをその「位置づけ」とした意図について発言があった。参加者の問題意識はECRITの内容とレベル、実際のアクティヴィテにある。まず参加者にとってのECRITが何なのか一人ずつ意見を述べることから始めた。
下記は箇条書きによる記録とまとめである。学習者のレベルとアクティヴィテの内容については終始問題となった。
特にECRITを教えづらい学習者の典型であるFAUX-DEBUTANTを定義する試みが行われたこと(*)に加え、アクティヴィテの実例について発言が多くあった。
最後に、今回の議論をより具体的なアクティヴィテの可能性へ深めるべく、次回の例会テーマは「書かせるアクティヴィテ〜A1を中心に〜」とした。

■参加者各々にとってのECRIT
- 絵、写真についての説明を書かせる(1年生)。THEME(2年生)などのPRODUCTION ECRITE。
-「この日本語をフランス語で書きなさい」という仏作文。アンスティチュ・フランセ東京で中・上級者向けに文学作品を読みその続きを考えるもの。Interactions (CLE International)におけるEXPRESSION ECRITE。
- 教科書各課の最後にある和文仏訳の問題(「この日本語をフランス語にしなさい」)。
- 初級者に向けてはORALの活動が多いとした上で、文字としてのフランス語を習うこと、頭に浮かんだことやORALで習ったことを書くPRODUCTION ECRITEだけでなくCOMPREHENSION ECRITEも含むのではないかという指摘。また学習者として自分の考えをフランス語で書くことが重要であるという意見。
- 書く動作、または書くに到るまでの思考という幅の中で、ORALに繋がるもの。
- 初級者にはTHEME(和文仏訳)、中級者にはPRODUCTION ECRITE。
-「産出」(文字として書くものでは、学習者の自由度が低いもの)とアウトプットに分けて授業を行っている。
- A1におけるPRODUCTION ECRITE。
- DICTEEやORTHOGRAPHEによってフランス語の論理的な考え方を伝えること。
- ECRITの文字通り「書かれたもの」、もしくはTHEME(和文仏訳)。
- 各レベルにおいてフランス語らしいものを書くこと。最終的には考えを論理的にフランス語で書くこと。短いメッセージ(メールなど)を型通りに書くこと。
- DISSERTATION、及びCOMMENTAIRE。
- CONJUGAISON、または有名な言葉を書き写すこと。

*FAUX-DEBUTANTとは?
- 以前に大学で第二外国語としてフランス語を履修し、定年退職後にアンスティチュ・フランセにやって来た学習者。
- ひと通りフランス語を習ったが、言語としてはそれを使うことができない学習者。
- フランス語の知識に偏りのある学習者、日本の場合では文法、会話、発音のいずれかひとつがよく出来るケース。
- 週2コマで1年の学習歴がある者。
- A1の途中、仏検5級程度。

■ECRITのアクティヴィテ実例
- Spirale (アシェット・ジャポン)が終わった学習者向けに、PERSPECTIVE ACTIONNELLEの教科書 Nouveau Rond-Point (Edition maison des langues)から友達を紹介するインタビューを使ったもので、ORAL-ECRITとも言えるもの。
- A1途中の学習者向けに、発音しながら書くもの。文字を見ることよりも聞くことを重視させて、発音と綴りを結びつける。
- 日本で使われているフランス語由来の単語を示して、その綴りを考えるもの(ex. パティシエ PATISSIER)。その際、発音の違いも伝える。
- モデルとなるインタビュー記事やテクストを提示し、学習者同士が行うインタビューの質問とそれへの答えや感想をフランス語に書き起こすもの。
- 旅行の計画をフランス語で話し合って書くもの。さらにTACHE FINALEとしてその内容を他のグループに説明する。
- 学内のネイティブ・スピーカー(主に教員)の協力を得て、その人物の性格や外見を描写し紹介するもの。ネイティブ・スピーカーにインタビューする際のアポイントメント(主にメール)もフランス語で行う。

■まとめ
授業での学習内容や学習者同士のフランス語でのやり取りを文字にすることで、学習の初期段階からフランス語の4技能を体験させることができるのではないだろうか。ECRITは解釈の広い語であるが、フランス語学習における位置づけは大きなものと思われる。
(K.Y.)

■■■例会報告2(10月例会)///////
======【2019/10/19 14h30-17h30 @明治大学駿河台校舎】

◆ 例会テーマ:「書かせるアクティヴィテ〜A1を中心に〜」

10月の例会テーマは前回同様ECRITである。前回は広い意味でのECRITについて意見交換が行われたが、今回はFAUX-DEBUTANTS (A1)を対象にした具体的なアクティヴィテについて議論を行った。
まず初めに、ひと言でECRITと言っても綴りを学ぶための活動とPRODUCTION ECRITEの二つがあるので、両者を分けて考えたほうが良い、という意見が出された。このため、それぞれの活動について様々な具体例が出され、その後、学習者が行ったECRITをどのようにフィードバックさせればよいかも議題となった。
例会の最後にはECRIT を通して目指していることについて議論が深まった。

◇1. 綴りを学ぶためのアクティヴィテ

- 発音を聴いてフランス語の綴りにできるか書いてみる。この音はどう書くか、説明はいっさいなしに音を聴かせて書く。一例として、自分の名字や名前などの人名ほか、様々な例を出して楽しみながら綴りの規則を考えていく。
- DICTEE:フランス人にとってのDICTEE はこれまでに学んだことを書いて確認するものだが、日本人にとってのDICTEEは、意味が理解できないことを書くよう要求される活動となっていることがある。
学習者が理解できる語彙や構文についてDICTEEを行うべきではないか。
- 学習者が理解できる内容について筆記体で書いてあるものを書き写させる。

 上記のアクティヴィテを通じて、学習者はローマ字や英語とフランス語の綴りが違うことを理解できるようになる。人名などはローマ字で記載してあるものをフランス語で読むと、音が変わってしまうことがある。
例えば「落合」という名字はローマ字で綴ると「OCHIAI」だが、「OTIAI」と書くほうが日本語の「おちあい」という音に近くなる(実際の使用は本来のヘボン式ローマ字を勧める)。
また、音の違いを認識していないため、綴りが違う意味を理解していない学習者も存在する(DEUXとDOUXをカタカナ読みで「ドゥー」と一括りに捉えてしまう、など)。
綴りが音の違いを表していると理解させるためにも、まず音の違いを聞き取り次にそれを文字に表すという練習は有意義だと思われる。
DICTEEに関しては、CORRIGERの仕方も話題になった。ひとつの例として、教室全体で行うDICTEEが紹介された。例えばInteractions (CLE International)には、各課の語彙や表現を使った短いDICTEEがある。
これを従来の形のDICTEEとして学習するのではなく、一文ずつ学習者が読み、別の学習者がボードに書く。他の人はボードに集中し、気がついた誤りを指摘する。または、ボードで書いている学習者が ? CA S'ECRIT COMMENT ? ?と綴り字を尋ねたり、? C'EST BIEN COMME CA? ?と確認したりしてもよい。
ボードに書く学習者、文を言う学習者は次々と変えていく。この方法だと学習者全員が正答を共有できると同時に、フランス語特有のアクセント記号やCEDILLEの間違いも全員で確認することができる。
また、フランス語でコミュニケーションをとる練習にもなる。教師は綴りに関するコメントをしながらも、学習者の発音を直すことができる。
筆記体を書き写すアクティヴィテに関しては、文字を写すことによってフランス語の筆記体には英語とは違うものが含まれていることを理解できる。

◇2. PRODUCTION ECRITEとしてのアクティヴィテ

- フランス語らしい文を書くために、教科書の文をモデルにして新しい文を書く。例えば教科書に家族を紹介する文がある場合、それを手本にして自分の家族の情報を書く。
さらに、自分が書いた文を使って「人物当てクイズ」を作り他の人に答えてもらう。クイズを通して、自分が書いたフランス語が理解可能なものであることを確認することができる。
- フランスの教科書の一部を手書きで写させる。
- 例えば、学習中の内容に関するクイズを作って書く。人に告げることがモチベーションとなり、作文の困難さが克服される。
- 学習者が紹介したいと思う人物(例えば好きな芸能人)を紹介する文章を書く。それまで学習した事項を取り入れた質問を教師が設定し、その質問に答えるかたちで、自分の言いたいことを学習者に書いてもらう。
なお、所有形容詞や数字などが実際に使えるような質問を設定するよう教師は心がける。その後、自分の書いた「答え」を暗記してスラスラ発音できるように練習し、教師と人物紹介に関する会話をする。
実際に発音してもらうことで、学習者の発音上の問題点も確認できる(なお、例会当日では、授業で実際に使われているプリントが配布された)。

- 夏休みに何をしたか(PASSE COMPOSE)、二人で組んで口頭で相手に伝える。相手から聞いたことをメモして、その内容を再び別の相手に口頭で伝える。最後にこの時間内に得た情報を文章にする。

PRODUCTION ECRITE (以下PE)としてのアクティヴィテについては、ある程度モデルがあった方が行いやすいという見解が多かった。
最初からすべての文を学習者に考えさせて書かせるよりも、モデルに従って書く練習をして、そこに少し自分が考えたことを書く。そして徐々にその部分を増やしていくようにするという段階を踏んだ方がよい。
PEを行う際、学習者の中にはプライベートについて書くことに抵抗を感じる場合も少なくないので、学習者の気持ちに配慮して、PEを行う際は、必ずしも本当のことを書く必要はないと、CONSIGNEに付け加える。
その際、あまりにも現実からかけ離れてしまうと実際に使う機会がない文になってしまうのでその点は注意する。
また、もう一つ多かった見解としては、ECRITを単独のアクティヴィテとして行うよりも、ORALからECRITへ、という一連の流れの中で行う、ということがある。
CO、PO、PE、CEの四技能は、それぞれが個別に存在するというよりは、相互に関連し合っている。
パターンに従いながら、言いたいことを発話できたとしてもそれをすぐに文字に起こして正確に書くことができるとは限らない。それを学習者に自覚させ、初心者の場合、言えることと書けることが同じレベルになることを目指す。

議論が進む中で、日本の教科書とフランスの教科書ではコンセプトが違うのではないか、という話題にも話が及んだ。
日本の教科書での「作文(和文仏訳)」は文法的な知識など学んだことを整理するという傾向がある。これに対してフランスの教科書は学んだ事を用いて自分の意図を表現するというアクティヴィテが多い。
『DIS-MOI TOUT ! 』(白水社) は日本の教科書だが、参考になるモデルが多い教科書の一例として挙げられた。

◇3. フィードバックの問題

 アクティヴィテについて具体例を報告し合ううちに、議論は次第に学習者が書いたものを教師としてどうフィードバックすればよいのか、という方向に進んでいった。
学習者が書いたものにひとつひとつ赤を入れて個別に訂正していくしかないが、そうすると個別のフィードバックになってしまうので全体のフィードバックにするにはどうしたらよいのか。
上記1のDICTEEの部分で触れたように、ホワイトボードに書いた正答を全員で共有できるような方法も効果的だ。個別と全体、両方のフィードバックがあるとよいのではないか。
また、基本的には個別に必要な箇所は全て直すが、それだけではなく本人へのコメントが必要な場合は休憩時間に本人に説明する、何人もが同じエラーをしている時は授業中に教室全体で確認する時間をとる、という参加者もいた。
あるいは二人組にして、どこが違うかお互いに考えるという方法もある。ECRITは個人的な作業だが、学習者同士のECHANGESがあるとより効果的ではないか。
フィードバックの問題では、訂正をどのように行うかというテーマの他に、フィードバックを行う際の学習者への配慮についても議論が及んだ。自分が書いたものを人に見せたくないと感じる学習者も多いからだ。
また、訂正の赤が入った作文をクラスメートに見られることが恥ずかしいと感じる者も少なくない。
訂正に関しては、文法問題ならば赤がたくさん入った答えが戻ってくると恥ずかしいと思いがちだが、作文に関しては、赤が入って当たり前、間違いが多くて当たり前、という前提をクラスで共有する。
さらに書いた内容が発表して楽しいものなら、恥ずかしいという気持ちよりもクラスメートに伝えたいという気持ちが勝る。PEのアクティヴィテとして先に挙げたクイズを作って書く、などはその一例である。
その他、学習者が書いたものをクラスで共有する場合は、教員があらかじめ訂正したものを使用して行うこともPEを行う際の学習者への配慮である。
前述のクイズを書くアクティヴィテでは学習者が作成したクイズをGOOGLE DRIVEにアップロードしてからPROJECTIONで見せてクラスで共有するが、教員は学習者が書いたものを訂正してからアップロードするように配慮する。

◇4. ECRITのアクティヴィテで目指すこと

最後に、各参加者がPEのアクティヴィテを行う際に留意している点について紹介する。

- 覚えたモデルを使用して別の場面で使えるように、教科書の中に出てきた文をできるだけ覚えさせる。
- 書く前に、まず口頭で見ないで言えるようにさせる。書く段階になったら、辞書を使用して正確に書くことよりも、あえて辞書を使用をせず、教科書を閉じて自分の持っている知識で書かせるようにする。
言いたい言葉が出てこなければ COMMENT DIT-ON XXX EN FRANCAIS ? と教師に直接質問させる。
できるだけこれまでに学習したことを使って表現させる。
- 自分が持っている知識に書く内容を近づけさせるように努める。

授業の紹介が進むうちに、各人がアクティヴィテを通して教師として目指している点についても議論の中で自然に言及された。
ひたすら単語を覚えることや、前置詞の役割を説明するといった文法の勉強を個別に行っても、会話や作文には生きてこないのではないか。
ECRITの活動は暗記ではない。もし単語と動詞の活用を一つ覚えたら、作文をする前に、覚えた単語と活用を使用したアクティヴィテを間に入れると効果的ではないか。このような意見がしばしば聞かれた。

◇5. 終わりに

 例会では二度にわたってECRIT について各人が様々なアクティヴィテを報告した。内容は多岐にわたり活発な議論が交わされたが、報告者には、参加者全体にアクティヴィテを行いながら目指している、大きな共通見解があるように感じられた。

 ECRIT をテーマとした議論は今回で区切りをつけ、次回は「DOCUMENTS AUTHENTIQUES」をテーマとして例会を行う。授業でどのようにDOCUMENTS AUTHENTIQUES を使用しているか、各自が教材を持参して発表するという流れが決められた(ビデオも可)。
(L.M)





***************************************
PEKA (ペダゴジーを考える会)News Letter
配信システム:まぐまぐ
http://www.mag2.com/

*PEKAの活動について詳しくは
http://peka-web.sakura.ne.jp/

* PEKAへのカンパは以下の口座でお受けしています。
郵便振替口座 00120-1-764679  PEKA
***************************************

◎PEKA (ペダゴジーを考える会)News Letter
  のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000228585/index.html 
  このメールに返信すれば、発行者さんへ感想を送れます。

上へ


Pékaトップページ     過去ニューズレターMENU