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NO.175

 

 

「教師個々人の学習」

*2018年度年間テーマ:
「ひろがる授業」


07/04/2019

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.175
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
2019年度年間テーマ「成長する教師」

■4月の例会テーマ :「教師個々人の学習」
日時 : 4月20日(土)14:30 〜 17:30 
会場:明治大学 駿河台校舎 研究棟2階 第8会議室
(〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 TEL 03-3296-4545)
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/
(リバティータワー3階の連絡通路から研究棟に渡るとそこは研究棟の4階です。)

* どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

■□■ 2019年度例会日程 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
メモをお願いします。

2019年4月20日、6月15日、9月14日、10月19日、12月14日、2020年2月8日。
いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが、会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また、開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

 

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■■■例会報告////////////////////////////////////////////////////////////
======【2019/2/16 @お茶の水女子大学共通講義棟3号館1階105室】

◇2018年度年間テーマ:「ひろがる授業」
◆例会テーマ:「教室外でのフランス語学習」

 2019年2月16日の例会では、将来的に教員を志望する高校生2名を含めた17人が参加し、学習者・教師双方向からの経験談を基に、教室外学習について意見交換した。

1、授業外学習と自律学習

 最初に、参加した高校生たちが、自分や友人がどのような教室外学習の機会を持ったか報告してくれた。海外サッカーに関する情報をインターネットやラジオで視聴する、フランス語版の『スラムダンク』を読む、歌手クレモンティーヌが日本のアニメの曲をフランス語で歌うのを聞き自分も声に出して歌う、オドレイ・トトゥが出演する映画を全部見る、などである。
これらは、生徒たち個々人の趣味・関心に関わるものではあるが、例えばトトゥの映画については高校にDVDが揃っていたという環境要因が報告されたことからもわかるように、背景に教員や学校の準備があるケースもある。
また、コンテンツを揃え、環境を整えるというだけではなく、フランス語に楽しみながら触れ合うために教員が実際にコンテンツを紹介・推薦したり、視聴の指示をしたりすることもあるだろう。
さらに、スポーツ関連の語彙は特殊であり特別な学習が必要なのではないかという意見もあった。例えば、サッカー関連の記事を読むなど、学習者が自律を目指し始めた段階では、各々の関心に合わせた授業、補助的な語彙学習を目的とした授業があってよい。

 生活の関心だけではなく、資格試験という関心に対しても、教員の例会参加者たちは教材を指示することがあるようだ。先の高校生たちはDELF受験に向けた授業の補習としてRFIやTV5MONDEを毎日視聴することを指示されていた。当人たちも毎日は見られないとのことだったので、両サイトの使い方について議論が及んだ。RFI及びTV5のサイトには現在、DELF junior、DELF、TCFの学習に向けて作られた教材がある。
ある参加者によれば、TV5の大きな魅力の一つはTRANSCRIPTIONがついている点にあるが、教材にテストっぽさがあり、これを使ってどのような技能の発展を意識するべきかには注意が必要とのことだった。いわく、生のフランス語に近いこの教材をヒアリング強化のために使うには、前提として相応の語彙力が必要となる。
聴くという作業を行うだけではただ単に分かるか・分からないのかのチェックにしかならないから、この参加者はTV5を用いた学習に別の価値を見出し、TRANSCRIPTIONを用いて学習者個々人が自身のミスや弱点を見つけた場合、確認して改善する作業を行うことが最重要であると分析していた。

 他にも映像・音声を提供するサイトについて話し合った。例えば、上智大学のVINCENT DURRENBERGER氏のサイト、PODCAST FRANCAIS FACILEの教材を評価する参加者が数人いた。音声とともにTRANSCRIPTIONが準備された充実した教材を提供しているサイトであり、世界的にも有数のフランス語学習サイトだろう。
また、YouTubeで見ることのできる英語初心者のための会話練習ビデオは俳優の演技のクオリティの高いものがあり、フランス語でもこのようなものを誰かに準備して欲しいという意見があった。現在視聴可能な貴重なフランス語無料映像教材も、英語と比べれば、俳優としての訓練を積んでいない教員が出演する、アマチュアっぽいものが多いと思われる。俳優の自然な演技によるフランス語教材が多いとは言えない中、他言語と比べた場合見劣りするというのが現状かもしれない。
とはいえ、自然な演技を重視するなら、豊富なフランス映画を教材として用いることが現状の現実的な選択だろう。この点、映画の利用法にしても工夫を凝らしている参加者がいた。音声のみの視聴、映像のみの視聴、COMPREHENSION GLOBALE、シナリオを読ませる等々、一つの素材であってもその時の目的に沿った教材化が可能であるとの趣旨だった。

 このように、授業外学習の教材として授業と関連しているもの/関連していないもの、アウトプットのための/インプットのための教室外学習素材を交えながらアイディアを交換した。
こうした議論の中で暗に目的として共有されていたことは学習者の自律だろう。ヒアリング練習を目的にTV5を見て良い段階なのか、サッカーの実況を聞くためにどのような準備をすればよいのか等、学習法の学習を交えつつ個々人の能力を見据えつつ、自律学習の準備のために、それぞれに合わせた効果的な補助を提供したいものだ。

2、教室外での対面コミュニケーション

 次に、例会で出ていた話題の中でも特にアウトプットにテーマを絞れば、文字コミュニケーションと口頭コミュニケーションのどちらの自律学習が容易なのだろうかという問いがあった。
まず、前回の例会の参加者がTwitterの教員アカウントを開設し、文法的なフィードバックをしないままに、日常を記述させているというアイディアに対して、文字を媒介としたコミュニケーションをインターネット上で行うのは今後ますます簡単になるという意見が出た。それゆえ、口頭(対面・通信)コミュニケーションのアイディアに関心が集まった。

 書く・読む・聴くに対し、話すはネットでできるのかという問題提起の元、否定的な意見が続いた。
ある参加者は大学ではなく、語学学校で教えており、そこに集まる生徒の欲求が、フランス語を話すことに向いているという印象を持っていると述べた。また、そうした中、スカイプの授業はBONJOURと言いながら握手を交わすこともできないものであり不十分さを感じるとのことだった。
別の参加者は、自身がフランス語学習途上であった頃に電話での会話に感じていた苦手意識・不安について語った。この教員は、このような通信コミュニケーションにおける困難と考えられる側面の他にも、中国語・韓国語学習者と異なりフランス語学習者にとっては、フランスが地理的に遠いという点が、学習者が手軽に滞在するための大きな壁であり、日本におけるフランス語学習が他の言語と比べて難しい一因なのではないかと指摘した。

 続いて、授業外で(または街に出て)生のフランス語話者と接触を図るためのアイディアに話が移った。
日仏交流パーティーに参加する、大塚のバーSpeak Easyに行く、JR板橋駅前のマクドナルド(リセの親御さんが多い)に行く、
図書館で日本語を勉強しているフランス人に話しかける、大きな書店の洋書売り場でLe Mondeを立ち読みしているフランス人に話しかける、浅草に行く、電車の中で仏語の教科書をいつも開いておき話しかけられるのを待つ、等々。都市住まいであれば比較的フランス語話者を見かける昨今、時代を感じる証言もあった。
ある参加者は実際に、「長期休暇中に浅草に行きフランス語話者にインタビューする」ことを宿題として指示したとのことだった。
また別の参加者は、初級の3週目程度であるにも関わらずバイト先に来たフランス人にフランス語で応対し、3週間の学習の成果を全て披露した挙句、お茶に誘われたのをフランス語で断った学生がいたと述べたが、これは例外的なケースである。
授業で学んだことを道具と意識して、実際の会話の機会に全て使ってやろうという思い切りを持てる学習者ばかりではない。先に述べた電話での会話への苦手意識は、対面の会話で現れないというものでもない。
会話中に分からないことを分からないとは言い難いことがあるという証言もあったが、このような戸惑いは現状の我々の前にいる多くの学習者が抱えている問題であり、授業中に克服する機会を提供することを考えても良いだろう。言い換えれば、母語話者でない教員たち自身がいつもそうであるように、知っている語彙・表現だけ、限られた材料だけで目の前の相手に自分の意志を明確に伝えるという外国語会話の基本的な態度を伝え、授業でこの訓練をすることは有益だろう。当然、さらに語彙学習についても考える必要があるだろう。
すなわち、授業で習う表現は授業外のフランス語と同質だろうか? GPSと地図が無料でいつでも閲覧できる状況で、人に道を聞く表現にどれだけ緊急性があろうか? FETEに参加するための語彙、スポーツバーで盛り上がるための語彙が教室で教えられているだろうか? 参加した高校生たちが最初に選んだ自律学習テーマのように、個人の趣味・関心に関わる、友人間での生活言語に関わる語彙を教員は提示しているだろうか? 
こうした点を踏まえずに授業を行なえば、口頭コミュニケーションの自律学習に向けた補助にはならない可能性がある。この場合、外に出てフランス語話者と話してくることを指示しても効果は見込めないだろう。

3、留学生との交流

 現在、様々な大学に留学生との交流空間や、交流プログラムがある。XX語カフェというような名称もよく聞くところである。参加者たちが勤務する大学でも、実に色々なシステム・試行錯誤があるようだ。
まずもって留学生に来て貰わなければ意味がないという中、大学によっては留学生に対してアルバイト代を支給したり、後にお礼の食事会を開いたり、単位を認定したりしているようだ。当然、中にはボランティア精神に訴えかけたり、一緒に何かを作り上げることでモチベーションを維持したりする場合もあるだろう。また、教員が同席して管理しないと日本語・英語が混ざってしまうことが多いとの指摘もあった。
他にも、語学学校で教鞭をとっている参加者は、大学のように留学生がいない環境なので、知り合いのフランス人が来ていたら授業に連れて行くと述べていた。大学であっても場合によってはフランス語話者の留学生がいない/少ない環境もある。
それでも、こうした場所に足を踏み入れる者はクラスの中で非常に限られていると言って良い。だからこそ留学生がいる恵まれた環境を学習者が生かせるかどうかには、教員の後押しや授業設計が影響を与えうる。

1つの方法はプロジェクト学習だろう。留学生交流スペースのアクティヴィテとしてミニ演劇を制作するという大学もあるようだ。あるいは、授業と関連づけるなら、留学生へインタビューしに行く活動を授業の中に組み入れ、下準備としての表現面の学習からインタビュー後の報告までを授業に組み入れるというアイディアもあった。
また、日本の大学とフランスの大学の日本語科との間で交渉し、両者の学生に学習目的のメール交換をさせたという報告もあった。
この教員は、双方の大学で希望者を募り、40名ずつの学生の趣味を事前調査し、趣味を基準にペアリングした。その後、学生たちがメールを何度かやり取りしているうちに、一番楽なやり方として見つけた活動は、次のようなものであるとのことだった。
向こうからの日本語メールを正しい日本語に直して返信する。この時、文法的説明は難しいので行わないし、分からない箇所については分からないと書く。その上で、自分が伝えたいことをフランス語で書くと、相手も同じフィードバックをしてくれる。この活動の結果、無料で仏作文の添削が行われたとのことだった。

 最後に、コリブリなどを経由して学校にいる留学生と交流した高校生たちは「先生に相談しやすい環境」の重要性を指摘していた。この指摘もまた、留学生と向かい合う学習者たちの自立性に関わる象徴的な発言だろう。かろうじて自立的コミュニケーションがとれる段階の学習者が、教員による補助を要請しつつ留学生と向かい合うのならば大変結構である。
しかし、そもそも教師・教科書が、補助の必要な場面・語彙を想定していなければ、留学生とのコミュニケーション自体を避けてしまう者が増えることは十分あり得る。

4、その他(暗記の効用、話せることで書けるのか/書けることで話せるのか、音声知覚の訓練、音読の効用)

 他にも、明確な結論が出たものではないが、この例会報告の執筆者としては、後述する2019年度の例会テーマ案と同様に興味深い論点がいくつもあった。

高校生たちには、暗唱コンクールに参加した経験についても話を聞いた。練習開始当初(校内選抜まで)はただの丸暗記で、意味も分からない状況であったが、後に、そこで暗記した文章で用いられていた文法の説明に出会った時、このような話だったのかと理解したそうだ。2年前に行った暗唱なのにまだ覚えているものなのだなと不思議に思ったとのことだった。
参加した教員の中にも、学生時代に丸暗記を行った者がいた。この参加者は、漢文の授業で白文を丸暗記した経験、語学学校の授業でMauger Bleuを丸暗記した経験について述べた上で、暗記の効用は何かという問題提起をしていた。
別の参加者は、初学者の頃、Vous vous appelez comment ? という綴りを「書けないまま言える状態」であったと述べた。当時は音の塊としてのみ知っていたもので、自身が教える時にも書ける必要はないと思っているとのことだった。暗記ののちにはこのような、「話せるが書けない」状態が見られることがある。また、実践の中で学び習得する外国人出稼ぎ労働者においても、話せるけれど書けないことがままある。これに対して、「書けることで話せる」と主張した参加者が数名いた。

また、DICTEEという学習法の効用についても意見が分かれていた。
一方に、DICTEEはもともとフランス人に綴りを覚えさせる目的で行っているため、外国語としてのフランス語教育においては意味がないという意見があり、他方にDICTEEはシャドーイングや音読と同様に音声知覚の訓練になるという主張があった。いわく、「見れば認知できるが、聞く際には認知できない単語」がある際、繰り返して聞くことで判別がつくようになる場合がある。しかし、知らない単語をDICTEEするのではこの訓練にならないので、見て理解可能なテキストが用いられるよう、テキストで使われる単語を教員側が統制する必要があるとのことだった。

最後に、それぞれの参加者たちが日常的に音読をするかしないかという点でも議論が分かれた。
音読をするとよりよく分かるという者もいれば、より分からなくなるという者もいた。また、集中できないときに音読する者もいれば、常に音読しているという者もいた。
ある参加者は、一般的に音読をすると、黙読よりも読むスピードが落ちると言われていると主張し、別の参加者はこれに対して、音読のスピードを上げる練習をすると良いと主張した。いわく、速く読めるということは、より多くの情報を短期記憶で処理できるということであるとのことだった。

◇◇来年度の年間テーマと日程
2019年度の年間テーマは「成長する教師」に決定した。
例会ごとに扱いたいテーマの提案としては、次のようなものがあった:「教師個々人の学習」(4月のテーマとしました)、「Writingの位置づけ」、「発音教育、どうしてる?」、「既修者クラス」、「自律/自立」、「長期休暇の宿題」、「考える授業」、「仏語を学ぶメリット」、「異文化間教育」、「教師間コラボ」、「中等教育特集」。
例会日程は従来通り年6回で、第2および第3土曜日を中心に4/20, 6/15, 9/14, 10/19, 12/14, 2/8とした。
(T.S.)




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