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NO.164

 

 

Approche actionnelleとは何か、その効用は何かについて考える。

*2017年度年間テーマ:
「能動的な学習を喚起する授業づくり」


08/06/2017

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.164
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*PEKA活動資金カンパ口座
三菱東京UFJ銀行 板橋支店
普通3591136
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郵便振替口座
00120-1-764679
加入者名:PEKA

 

■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

日時 : 2017年6月17日(土) 14:30 〜 17:30

場所: 明治大学駿河台校舎研究棟3階 第10会議室
(〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 TEL 03-3296-4545)
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/
(リバティータワー3階の連絡通路から研究棟に渡るとそこは研究棟の4階です。)

*どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

*2017年度年間テーマ:
「能動的な学習を喚起する授業づくり」

*6月の例会テーマ :
ATELIER :"APPROCHE ACTIONNELLE", Animatrices:飯田良子、鵜澤恵子
「アクティブラーニング」は昨今、日本の教育界においてキーワードのひとつとなっています。
フランス語教育におけるAPPROCHE ACTIONNELLEはこれに当てはまるのでしょうか、あるいは同じものなのでしょうか。
APPROCHE ACTIONNELLEの理念の下に書かれた教科書を参考にしながら検討してみましょう。


■□■

☆☆ 2017年度例会日程 ☆☆☆☆☆
以下の通りです。メモをお願いします。

6月17日(土)、 9月16日(土)、 10月21日(土)、 12月16日(土)、2018年 2月17日(土)(24日(土)にずらす可能性もある)

いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが,会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また,開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

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■■■【2017/4/15例会報告】┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏
場所:明治大学駿河台校舎研究棟4階 第4会議室

例会テーマ:「APPROCHE ACTIONNELLEとは何か、その効用は何かについて考える」
*参考資料:"The Natural Approach: Stephen Krashen’s Theory of Second Language Acquisition"
www2.vobs.at/ludescher/.../the%20natural%20approach.doc

2017年4月15日の例会では、次回6月の例会で予定されるAPPROCHE ACTIONNELLEのアトリエに向けた準備として、例会参加者はクラッシェン(STEPHEN KRASHEN)の第二言語習得理論についての書評を読み、そこからのFLEの議論の進展を概観しつつ、2017年現在の教室について情報交換をした。

1、習得と学習
クラッシェンのNATURAL APPROACHに関して、ACQUISITION-LEARNING仮説やINPUT仮説についての話題が中心となった。
クラッシェンの提起した仮説(1981)や、1990年代それに対するエリス(ROD ELLIS)の議論を受けて、FLEの試みは自然な「習得」ACQUISITIONと意識的な「学習」LEARNINGとの間の概念的な隔たりを埋めること、教室の外の「習得」と教室の中の「学習」の相互作用を目指して発展してきたという側面もある。
言い換えれば、クラッシェンの問題提起を念頭に、教室の中をどのように社会に近づけるかという問題意識を持ってきた。
クラッシェン以降、「学習」「文法」を捉えなおす必要性が生じたが、そもそも、クラッシェンに対する評価は賛否両論で、限られた時間の授業の話とは関係のないものとして理解されることもある。授業の否定としての側面があり、それゆえに、授業内に具体化しにくいとも言える。この理由について、以下のような意見があった:

- まず、「インプット」による「習得」だけで学ぶためには膨大な時間がかかる。また、子どもが母国語を学ぶように行うのが「習得」だとすれば、「学習」者は一般的に子どもではなく、子どものように情報を選択できない/しない環境にはいない。
- さらに、クラッシェンの理論がアメリカ国内で勉強する外国人の観察から発展したものだとすれば、移民はコミュニケーションの機会に事欠かないことが多く、「習得」しかせず「学習」をしていないこともあり、その結果、同じ表現STRUCTUREの繰り返ししかできないことすらある。

続いて、「インプットされにくい細部」という側面について以下のような議論があった:

- 表現モデルが「インプット」されれば主語・動詞・目的語を通して意味が分かるようになるが、細かい部分に無頓着になることもある。長期間の英語学習や長期の留学・ビジネス経験を経た学習者の発話において、三人称のs(自然順序仮説では習得の最終段階となっている)が抜けることは問題なのか、それとも問題ではないのか。このような細部を自然に「習得」することはできるのだろうか。
- 無視する勇気を得て、全てを覚えなくて良いという環境の中で「習得」していれば、自然には細部が身につかないのではないか。細部に注意を向けさせ、形態FORMEに注意を向けさせるには別の活動が必要かもしれない。
-「習得/学習したことは正しい」と思い込むだけで、頭の中で合理化・概念化CONCEPTUALISATIONできない場合は往々にしてあるだろう。その場その場で使えることと、「規則化」できるかどうかは別だとも考えられる。

2、何を求めて授業をする/受けるのか?
議論はMETHODE(教授法・教科書)にも及び、参加者が学生あるいは教師として経験した、または、伝聞したものが話題に挙がった:
METHODE DIRECTE, MAUGER BLEU (1953-57), CREDIF(1959), VIF(1962), DE VIVE VOIX(1972), ARMY METHOD, SANS FRONTIERES(1983)、NOUVEAU SANS FRONTIERES(1988)、NATURAL APPROACH, VERBO-TONAL METHOD, SILENT WAY, SUGGESTOPEDIE, SIMULATION GLOBALE, 仏語合宿、等々。

自明なことだが、METHODEの価値が高くなるか低くなるかは、結局は使用する教師による。使いにくい教科書であっても、教師が扱えれば良い教材になることもある。どんな教授法であっても、教室内に作り出された学習環境を見れば、教師の良さ、教授法と教師の適合具合などが見える。METHODEそのものの良し悪しよりも、教師が使うことのできる教材を扱う方が重要だと言える。

また、METHODEは理想的な教室の雰囲気と人間関係を作り出せるかどうかに大きく関与する。
例えば、ある参加者は、「妙な緊張感のない、活気のある、自然な場面を作りたい」と述べていた。このように、METHODE以前に教師が授業に何を求め、どのような授業をしたいかも大切であろう。
それゆえ、上述したMETHODEに触れながら、教師が目標とする環境について意見交換をした。以下に、交わされていた議論/意見の一部を列挙する:

- 単音を教えるアプローチと会話表現から音に戻るアプローチはどちらが有効か。
- 学生のニーズは何なのか。ニーズを信用して良いのか。20人いたらニーズは二十様ではないのか。
- 特定職業向けの教育の効果。
-「誰とでもなんでも喋れる」が目標なのか。観光カウンターに行った時にスキットのような会話ではなく、観光以外の話をしたいのではないか。
- 旅行で使える一般的な表現は旅行で実際に役立ったという報告が聞けることがある。
- 使用語彙の優先度を統計的にチェックしたものが良いのか。
- 例外を追う授業で良いのか。
- 教師が一人でフランス語を喋り続けるのは会話の授業か。知性が入り込む余地のない授業になってはいないか。学生が繰り返し言ったことだけしか言えないことはないか。
- テストができても実力がついていないということはないか。実力を見極めるためのテストをしているか。

3、その他の議論
一方、授業を受ける学生の側にも話は及んだ。当然、METHODEと学生にも相性がある。例えば、初心者のコミュニケーション主体の授業では、発話内容が単純なので、意味に集中すると退屈する学生もいる。このような学生は意味自体ではなく、それをどのように表しているかに注意を向けさせる必要がある。

FLEにおけるACTIVE LEARNINGをどのように捉えるかという問題意識もあった。これをTACHE型、課題達成型、プロセス重視の学習と考えることもできるだろう。話の過程でプロジェクト学習にありがちな問題点が一つ指摘されていた:
- プロジェクト学習も教科書によっては扱うロール・プレイが多すぎることがある。このような場合には結局どれも使いこなせないようになることがある。

今回の例会はAPPROCHE ACTIONNELLEの効用という点に関しての議論は少なかったが、この議論に向かう過程において、多くの問題意識を共有することができた。参加者の多様な経験を参考にしつつ、参加者個々人が、自身の求めることと「現在の教室」に求められていることを突き合わせることができたのではないだろうか。

最後に、METHODEは使用者の学習に影響を与えるという議論もあった。METHODEに沿って自身の勉強法を変えることのできない学習者もいる。このような学習者のために、教師は何をすればよいのだろうか。
本会の目的はあくまで、教育学史ではなく、経験の共有である。こうした中、今回の例会における授業の多様性の例が、学習者の多様性を学習歴・学習癖という観点からより深く理解するための一助となればと思う。
(T.S.)



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