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NO.163

 

 

Approche actionnelleとは何か、その効用は何かについて考える。

*2017年度年間テーマ:
「能動的な学習を喚起する授業づくり」


09/04/2017

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.163
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

日時 : 2017年4月15日(土) 14:30 〜 17:30

場所: 明治大学駿河台校舎研究棟4階 第4会議室
(〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 TEL 03-3296-4545)
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/
(リバティータワー3階の連絡通路から研究棟に渡るとそこは研究棟の4階です。)
* どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

*2017年度年間テーマ:
「能動的な学習を喚起する授業づくり」

*4月の例会テーマ :
Approche actionnelleとは何か、その効用は何かについて考える。


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☆☆ 2017年度例会日程 ☆☆☆☆☆
以下の通りです。メモをお願いします。

6月17日(土)、 9月16日(土)、 10月21日(土)、 12月16日(土)、2018年 2月17日(土)(24日(土)にずらす可能性もある)

いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが,会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また,開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

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■■■【2017/2/18例会報告】┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏
場所:アンスティチュ・フランセ東京(106教室;16時以降は201教室)

●例会テーマ:
「授業内で使うメタ言語について」
●例会テーマ趣旨:
語学教師は教える言語を説明する際、メタ言語を使うことがある。メタ言語は授業内で学習者の理解を促すのに効果的であるか。もしそうであるならば、いつ、どのように、どのようなメタ言語を使うべきなのか。
(2016年度年間テーマ「授業で学習者の理解を促すには?」)

●メタ言語とは何か
メタ言語について参加者の共通の理解がなかったので、先ずは、そもそも「メタ言語」とは何かという問いについて考えることから例会は始まった。

広義のメタ言語:
授業で学習者が学んでいる言語(学習対象言語)に関わる言語[活動]すべてを指す用語である(一応、高階を示す接頭辞「メタ-」の意味合いを保っている用法である)。
この広義のメタ言語は次のγとδの二つに下位区分できる。

狭義のメタ言語γ:
学習者自身が使うメタ言語(以下、メタ言語γと表記):学習中の言語[活動]に対する学習者のコメントや文法知識などである。メタ言語γを身につけることによって、学習者は自分および他者の言語活動を評価することができる。
例えば、誤った表現の使用や不適切な発音などの問題点を指摘し、誤りを訂正することができる。

狭義のメタ言語δ:
教師が使うメタ言語(以下、メタ言語δと表記):説明することや学習者の言語活動の問題点・良い点を具体的に指摘することだけでなく、発話されないが問題点・良い点を学習者に気付かせるあるいは認識させる行為(communication non-verbale)全般がこのメタ言語δには含まれる(身振り、感嘆表現等)。
→「メタ言語」という表現は、教員が言語を説明する際に用いる一階上の言語を指すことが多いようである。

2月の例会ではむしろメタ言語γに焦点が当たり、<メタ言語γを学習者がいかに自分自身の内に適切なかたちで形成するか>が学習者の理解を促すことに通じるという論点の下で意見交換がなされた。

●メタ言語γを考えるための例
言語[活動]の「仕組み」が学習者に内在化されている場合、その学習者には「メタ言語γができている」と言える。
次のような子どもの会話は、言語[活動]の仕組みの内在化とはどういうことなのかを理解する上で参考になる事例である。

(紅茶に砂糖をいくつ入れるのかという場面で)
大坂出身の子どもA:「砂糖、何ぼ?」
東京出身の子どもB(戸惑いながら):「...2ぼ...?」
→ Aがこの表現を直そうとする(エラーの訂正)。
→「2ぼ」という表現を選択する際、Bは、相手の言っていることから規則性ないしシステムを発見、内在化しており、「2個」という表現がこの場合不適切であると評価し(cf.学習者のメタ言語γ)、内在化したシステムに則して「2ぼ」と発話した。Aのこの表現をBは訂正しようとするが、その方法は必ずしも発話だけでなく、「戸惑い」のような身振りもメタ言語(cf.教師のメタ言語δ)と言える。
<システムの発見→内在化(メタ言語γの習得)→メタ言語γを機能させること>という一連の流れは、自然な言語運用が可能になるために必要な学習プロセスであるが、教師のメタ言語はこのプロセスが成立するのに資するものでなければならない。

●教師のメタ言語δ使用に関して
参加者によるブレインストーミングが行われた。
ある参加者によれば「学習内容に関するモデルを見せる」ことが有効である。
別の参加者は、フランス人の一般的な会話でよく聞かれるメタ言語δの使用例を参考に挙げた。

例1)文法に関して
子:LA LETTRE QUE J'AI ECRIT....
父:ECRITEと強く言う。もしくは机をたたく→子が内在化しているメタ言語γが機能しLA LETTRE QUE J'AI ECRITEの正しさを再確認する。
→ 父のこのようなメタ言語δ使用が効果的であることもあり、「何がどうして間違いなのか」というエラーに関する説明を教師側が繰り返しても効果がない場合がある。
例2)適切なフランス語に関して
UN AMI A MOI(この表現はUN DE MES AMISという、より適切な表現を説明するために必要なものである)
→ フランスでは後者の方がより適切な表現であるが、日本では前者で多くの場合は学習し、フランスでも子どもがよくこの表現を使う。UN AMI A MOIという表現は、より適切な表現を学習する上で「かませ犬」のような機能を持つ。
→ 例えば、UN AMI A MOIという表現を使った子どもに対して、親がUN AMI A MOI ?と聞き返すと、子が内在化しているメタ言語が上手く機能して、より適切なフランス語を子どもが自分で学習する場合が考えられる。
文法規則に関する詳細な説明が、学習者のメタ言語γの形成にはつながらない場合もある、ということを念頭に置いておかなければならない。

●二種類の機能不全
(1)教師側のメタ言語使用が効果的でないがために、学習者のメタ言語の形成を妨げている場合がある。
(2)学習者側にメタ言語がある程度形成されているが、その人の<拘り>があるために適切なアウトプットができない場合がある。
<拘り>の例(本報告執筆時に思いついたもの):
発音→[R]が上手く発音できないという意識が、[l]を[R]と発音させてしまう場合がある。
冠詞→冠詞に対する苦手意識が、冠詞を使わないで発話するという習慣を付けてしまったという場合がある。
その他→例えばフランスの友人が「これで良い」と言っていたフランス語表現を適切なものとしてそのまま使い続ける場合がある。

→ 教師はこれら二種類のケースを分析し、効果的なメタ言語を使用するよう心がける必要がある。
言い換えるならば、ネイティヴが苦労せずに理解できるフランス語表現(自然なフランス語表現)を学習者が使えるようになるメタ言語γを身につけてもらえることが教師の目標になる。
→ 学習者が将来的に自然なフランス語表現を使えるようになるためには、教師は学習の最初の段階からフランス語言語活動の全体像を踏まえ、このイメージが伝わるようにメタ言語δを使うことが肝要であろう。
言い換えるならば、部分的な理解(一対一対応の単語─意味の暗記、特定の子音や母音をピックアップした発音練習等)を促すだけのメタ言語δの使用は効果的でないどころか、むしろ逆効果にもなり得る。

●日本語にない概念
冠詞、関係代名詞、目的語代名詞などの日本語にない表現の場合、その表現に関するメタ言語をいちから形成しなければならない。
そのための効果的なメタ言語δはどのようなものかという問いのもと、以下の具体例が紹介された。

・「否定のde」(存在否定)と「名称の相違のde」(同一性否定)
AVOIRの否定形を学習すると、不定冠詞・部分冠詞の否定の次のような「言い方」はひとまず使えるようになる:
J'AI UN FRERE. → JE N'AI PAS DE FRERE.
J'AI DE L'ARGENT. → JE N'AI PAS D'ARGENT.

このとき「AVOIRの否定の場合はde + 名詞」という説明(メタ言語δ)をすると、ETREの否定を学習する際、次のような表現がメタ言語γが機能することで出てくる:
*CE N’EST PAS D'IPAD, C'EST UN IPHONE.
(例をメモし忘れたので小石悟氏の論文「冠詞を教えるために」(2017年)から例を借用した)
このような間違いは、「否定文の場合は最後にde+名詞が付く」というメタ言語γが機能することに起因する。
例会で紹介された効果的なメタ言語δは、
前者の場合:「存在否定のde」と説明する→「私の兄弟はそもそも存在しない」「私には金がない」
後者の場合:「名称の違いのde」と説明する→「あなたはiPhoneという名称を使うべきところを、iPadという名称を使っており、両者は違うものである(名称の相違に基づく同一性否定)。だが両者ともに実際に存在している」

・目的語代名詞の学習
目的語代名詞の学習は、日本語しか知らない学習者にとってはまさに「日本語には存在しない概念」(新たなメタ言語γ)を彼らの内に形成する典型である。例会ではこの学習を例に、
(1)「こういう使い方をするよ」という反復練習の段階(特に一回目の授業の際は重要である)と、
(2)文法用語を導入する段階、という二つの段階をどの時点で設けるかという問題について話し合った。

(1) 使い方の反復練習
J'AI ECRIT MON JOURNAL.→ JE L'AI ECRIT.

(2) このような簡単な表現を反復練習した後、例えば「フランス語では重いもの(上ではMON JOURNAL)が後ろに来る傾向がある」と説明する。上の例では、目的語MON JOURNALが代名詞LEになった(軽くなった)ため、本来の語順における目的語の位置から動詞の前に位置移動が起こった。
(論点はずれるが、次号EDFJ26号収録の鵜澤恵子報告「何を発音として教えるのか」のla liaisonの起こり方に関する説明が想起された。La liaisonも含めてフランス語という言語の成り立ちそのものを考える上で、「フランス語では重いものが後ろに来る」という発想は示唆的である。)
JE L'AI ECRIT.との比較では、J'AIME CA.という例文が例会で挙げられた。これは口語的指示代名詞CAの部分が話題であり、そこに表現の重心があるので代名詞CAが本来の目的語の位置に来る、と今例会では説明された。Cf. JE T'AIME.

問題点:(1)の反復練習は有効であるが、その効果が単なる自動的反応に結びつくだけでは不充分であり、これはメタ言語γの形成ではない。
→ 例えば語順の学習においては「エラーと訂正」が学習的役割を発揮する。
→ どのメタ言語γを身に付けてもらうかの狙いをしっかり定め、学習者に考えさせる機会(これがメタ言語γの獲得につながる)を与えるようなメタ言語δを使うようことに留意しなければならない。
例)IL S’APPELLE.... が使えるようになる(自動的反応)。
→ IL S’APPELLE....からIL SE LEVE.を推測させるためのメタ言語δの選択を教師は考慮する必要がある。

●教師の引き出しの多さ
例会では「アウトプットしたフランス語表現の様々な点について学習者本人が気付くこと」の重要さが再確認されたが、終盤で「気付きのフックが学習者によって異なる」との指摘があった。
→ 教員側は、一度効果を上げたメタ言語δがどの学習者に対しても通用するとは思わずに、多様なアプローチの仕方を身に付けておく必要がある(いわゆるDIFFERENCIATIONの問題)。
教師はメタ言語δ(TRY AND ERROR)の引き出しを多く用意しておく必要がある(「自分の場合は上手くいく」、「何でこんな簡単なことができないのか」といった考え方は罠である)。
→ 同様に気をつけなければならないのは、「コミュニケーションができる力」と「メタ言語を活用できる力」は異なるという点である。学習者がコミュニケーション力に過信し、実際は表現力が向上しない場合がある。
例えば、適当な相づちで会話をつなげることができるので、自身の表現の問題点や新しい表現の学習をしないことが多々ある。
→ メタ言語活用力は学習力の核であるが、コミュニケーション力は必ずしもそうではない。前者の力を養うこともまた教師の重要な役割である。

◆4月以降について◆
例会の最後ではPEKAの4月以降の活動について意見交換がなされた。内容は次の通りである。
・2017年度の年間テーマ:「能動的な学習を喚起する授業づくり」
・ワークショップの例会への導入(ワークショップの回数が減少している。また例会の形態を多様化すべきである)
・4月以降の例会スケジュール:
4月15日(土):Approche actionnelleとは何か、その効用は何かについて考える(小石氏がMLで送付した”The Natural Approach: Stephen Krashen’s Theory of Second Language Acquisition”を事前に読んでくる)。
6月17日(土):この例会でapproche actionnelleのアトリエを行う(animatrices:飯田良子、鵜澤恵子。参考教科書Rond-point)
9月16日(土)
10月21日(土)
12月16日(土)
2月17日(土):入試期間なので会場予約に難有り。24日(土)にずらすことを考慮しておく。
(Y.I.)



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