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NO.162

 

 

【例会のテーマ】
「授業内で使うメタ言語について」

 


09/02/2017

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.162
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

2月の例会テーマ <授業内で使うメタ言語について>
語学教師は教える言語を説明する際、メタ言語を使うことがあります。
メタ言語は授業内で学習者の理解を促すのに効果的なのでしょうか。
もしそうだとしたら、いつ、どのように、どのようなメタ言語を使うべきなのでしょうか。
(2016年度年間テーマ:「授業で学習者の理解を促すには?」)

日時 : 2月18日(土)14:30 〜 17:30
会場:アンスティチュ・フランセ 東京(飯田橋)
14:30 - 16:00は106教室;16:00以降は201教室
アクセス:
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/about/contact/

どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。


■□■

☆☆ 2016年度例会日程 ☆☆☆☆☆
以下の通りです。メモをお願いします。

2017年2月18日

いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが,会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また,開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

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■■■【2016/12/17例会報告】┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏
12月例会のテーマは<多読について>だった。

◆前半はある参加者(以下「発表者」)が自身のフランス語の授業で使っていたプリントを2つ紹介した。

◇1つ目は、ある大学でフランス語・フランス文学を専攻する2年生の文法の授業で、ウォーミングアップとして使用したプリントである。
新しい課(このときは条件法の単元)に入る前に、その課で使われている21個の動詞それぞれに関して、以下の3つの選択肢の中から1つを学生に選んでもらう。その後、学生達が2か3を付けた動詞を聞き出し、ホワイトボードに書き出す。
1.この単語の意味を知っている
2.この単語を見たことはあるが、意味は思い出せない
3.この単語を知らない(見たこともない)
この活動の目的は、すぐにそれらの動詞の日本語訳を与えるのではなく、それぞれの動詞に関連する身近な単語を挙げていき、意味を推測してみることである。
多くの学生が知らなかったLOUERという動詞を例に挙げると、この動詞はよくVOITUREと一緒に使われる(LOUER UNE VOITURE)ことがあり、LE VOYAGEの時にこれをすることがあり、LA GARE や L'AEROPORT といった場所でこれをすることができる。
そのほかの動詞に関しては、グループで協力しながら関連する単語をプリントの空欄に書いてもらう。中には、「PLEUVOIRの意味を知っているのに、それに関連する他のフランス語の単語が思い浮かばない」と言う学生がいる。
このことは、その学生の記憶の中で、その動詞の意味的な語彙ネットワークがフランス語で構築されていないからではないかと発表者は推測している。

*語彙ネットワークに関して、このプリントを使った活動から、動詞が想起させる単語を学生同士で協力して挙げて、それをホワイトボードに書いて線でつなぐ活動に発展させてみてはどうかという提案があった。
さらに、それぞれの動詞の統辞的な特徴(例えば、直接目的語をとるのか、間接目的語をとるのか)を提示するために、ある動詞が想起させる意味的なイメージのネットワークとその動詞が使われた時の動詞の構造のネットワークを分けて提示することで、動詞の意味と統辞が整理され、学習者の理解につながるのではないかという意見もあった。

*このプリントに関して、他の参加者から次のような疑問が挙がった:
-プリントに載っている動詞の中には、ETREやAVOIRがあるが、これらの動詞の意味を知っているかどうかということを聞く意味があるのか
-なぜ動詞が単独で提示されているのか。動詞の意味を尋ねるなら、文の中で使われている動詞の意味を知っているかを問うのが自然ではないのだろうか
発表者によると、このプリントは語彙習得研究でしばしば利用されているVocabulary Knowledge Scaleというテストからヒントを得ている。本来このテストは、単独で提示された1つの単語に関して学習者それぞれが5段階で評価するものである。
「この単語の意味を知っている」というのはこのテストの4段階目にあたる。5段階目は「この単語を使って例文を書ける」であり、これを採用してもよかったかもしれない。

◇ 2つ目のプリントは、同じ大学でフランス語・フランス文学を専攻する1年生(未習クラス)のフランス語コミュニケーションの授業で行われた語彙テストである。
発表者によると、単語を覚えるには、思い出すという経験が重要であり、単語を思い出すときは何らかのヒントとなるものが必要である。
日本人学習者にとって、それは日本語訳であることが多いが、それ以外のものでもよい。画像でも、前後の文脈でもよい。
この語彙テストは、授業で使っている教科書内の会話文を基に作られている。会話文のいくつかの単語を空欄にしており、それに対応する日本語訳はない。ただし、ヒントとして答えとなる単語や表現の一文字目が明かしてあり、さらにそれに関係した画像を添えてある。もちろん、文脈もヒントとなる。
例えば、パン屋の場面において、
UNE BAGUETTE, S’__ _____ ______. という文があり、空欄の近くには、猫が何かをお願いしているように見える画像が添えてある。
答えは S'IL VOUS PLAIT である。授業では空欄がある状態で音読練習をし、授業外で練習するときは発音できるのを確認してから書く練習をすることを勧めた。

このテストの採点は基本的には空欄に正確に単語を書けば一つにつき1点を与える。スペルが間違えていても、発音があっているようであれば部分点を与えることにしていた。
だが、ある参加者からリエゾンが起こるような語彙グループの場合の問題点が指摘された。例えば、Je v___ __ p___. (=Je vous en prie.) の場合、 単独では vous の s は発音されないが、直後に en が来ることによって s が発音される。この場合、この s は無視できない。

発表者は、このテストに関して学習者がどう感じたかを知るために記述式のアンケートを実施した。それによると、「単語を文で覚えられる」などといった意見があった一方で、「日本語でどんな意味が覚えていないことが多いと思う」といった意見もあった。
これは、その学習者のこれまでの外国語学習において、日本語訳を覚えることが主な活動になっていたからではないかと思われる。

◆ 後半は、小学校でフランス語を教えているある参加者からの問題提起で、「生徒たちに多読をさせたいのだが、何か良い読み物はないだろうか」について話し合った。
フランス語を学ぶ上での目標として、生徒たちは児童向けの公式フランス語資格であるDELF Prim取得を目指している。
英語学習の世界では、多読のための読み物(graded reader)が充実している。フランス語でも、英語ほどではないが Lecture facile というシリーズの読みものがある。文学作品が簡単なフランス語で書き直されているのだが、原文で文学を読むという楽しみがなくなってしまうという意見があった。

そもそも多読とは、単純にテクストをたくさん読むことであるが、以下の3つの原則がある。
1.辞書は引かない。
2.わからない単語は読み飛ばす。
3.つまらなくなったらやめる。
多読は、日本に住む外国語学習者にとって不足しがちなインプットを補うことを可能にする。多読の効果は、主に単語の処理速度が上がることである。
たとえ1度学んだ単語であっても、その意味に瞬時にアクセスできるとは限らない。たくさん読むことで、異なるコンテクストで同じ単語に何度も出会い、それを処理する機会を得ることができ、結果として単語の処理が自動化する。

問題提起をした参加者の生徒は小学生で、初級者である。そのレベルに適したテクストは何だろうか。提案として挙がったのは、http://www.lepetitquotidien.fr というサイトで、6〜10歳向けのテクストを読むことができる。
また、フランスの託児所で行われている読み聞かせの動画がyoutubeで見ることができる。(ただし、読み聞かせと読書は同じではないので、読み聞かせで使われている本を読ませるのがよいかもしれない。)

この日の例会参加者の中に、英語で多読を実践している参加者がいた。その方によると、初めはわからない単語を後回しにすることに抵抗があったが、それでも読み続けているうちに読むこと自体が楽しくなり、今では読むことがやめられないほどまでになったという。さらに、わからない単語が出てきても、文脈から「この単語の意味はこれしかない」と自信を持って思えるようになった。これこそが理想の語彙学習ではないだろうか。

他の参加者から、そもそも語彙が少ない初級者に多読は難しいのでは?という意見があった。多読によって語彙を増やすには、それをするためのベースとなる語彙力が必要である。
実際、多読のテクストは辞書なしで理解できるものであることが望ましい。それにはテクストを構成している単語の95〜98%は知っている必要がある。従って、語彙サイズが限られた初級レベルの学習者に適した読み物を見つけるのは困難である。

ある参加者によると、フランス語に翻訳されたマンガを学生に読ませたことがあったが理解できなかった。
若い頃にマンガでフランス語を勉強した経験がある他の参加者によると、フランス語でマンガを読む場合は、すでに日本語で読んで内容が頭に入っている状態でないと難しいのではないかという発言があった。

(Y.M)



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