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NO.158

 

 

【例会のテーマ】
「学習者と教師の間のギャップを埋めるには?」

 


13/06/2016

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.158
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

日時 : 6月18日(土)・14時30分〜17時30分
場所 : 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階第8会議室

* 今年度の年間テーマは「授業で学習者の理解をうながすには?」です。
* 6月例会のテーマは年間テーマに沿って、「学習者と教師の間のギャップを埋めるには?」です。
学習者はその経験に基づいて、フランス語の授業や教師のイメージを作っているようです。これは、至極当然なことです。しかし、学習者と教師の間に考え方のずれがあると、学習の進行に支障が出ることがあります。教師の意図を学習者に伝えるには、どのような方法また活動が可能でしょうか。
* MARIANNE SIMON-OIKAWAさんが作った LIRE POUR ECRIREという教材の紹介もあります。

* どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

■□■

☆☆ 2016年度例会日程 ☆☆☆☆☆
以下の通りです。メモをお願いします。

2016年4月16日,6月18日,9月17日,10月15日,12月17日,2017年2月18日

いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが,会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また,開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

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■■■【2016/4/16 例会報告】━━━━━━━━━━━━━━

 今回の例会では、年間テーマ「学習者の理解をうながすには?」の第1回として、「発音」をとりあげた。
新しい顔ぶれ、久しぶりの人、遠方から、仕事のフィールドなど、多方面からの様々な参加者により多岐に渡る意見交換が行われた。
新しいテーマであるので、参加者がそれぞれの興味の元にテーマをとらえていたようだ。まず、「うながす」というのは、「学習者が気付くように仕向ける」のか「教えてわかってもらう」のか、ということである。両方で良いのではないか、という意見が多く、特にどちらと限定せずにそれぞれが考えを述べることとなった。以下に、参加者の発言をまとめる。

1. 単音の発音を学習する。

○最初は自分の思う(聞いた)ように発音してもらい、大まかに直す。学習の進度に伴い、だんだんと正確になるようにする。教師は音声学の知識を持っている必要があるが、それを単に説明するのではなく、どのように提示したら学習者に抵抗なく受け入れられるかを考える。
○例えば、アニメのキャラクターや芸能人の話し方に似ているところ(音)を示したり、日常の行動でしている体の動きにフランス語の発音のしかたを関連づけたりする。すなわち、単に「繰り返してください」と言うのではなく、学習者がその音を発音する時の基準(心のよりどころ、イメージ、発音の指針=音の特徴)となるものを提示する。
○そして、フランス語の音は、他のどの言語の音とも違う、新しい(今までに使わなかった)音だということに気付いてもらう。つまり、日本語や英語とは異なった発音のしかた(器官の使いかた)なのだとわかってもらう。
○また、一度では定着しないので、発音する機会(エラーを指摘して改善する機会)が多くなるような授業形態が望ましい。
○発音を直す時には、エラーに対して、直接正しい発音を提示するのではなく、ヒントを出して正しい発音にたどり着くように考えさせる。
○カタカナ使用の弊害の例が挙げられた:「鼻母音は、-an-, -en- (-am-, -em-) で表される音をきちんと教える必要がある。日常の生活で、フランス語のカタカナ表記(パンやケーキの名前など)を目にすることが多く、特に、-an-, -en- (-am-, -em-)で表される音と -in-(-im-, -ain-, -ein-, -yn-, etc.)で表される音とが同じ音として捉えられがちである。」
「カタカナフランス語だと、同じ癖(アクセント、エラー)があるため、学習者同士はお互いのフランス語を理解してしまう。しかし、日本人が発音するフランス語の特徴に慣れていない人にはわかりにくい事がある。」

2. そもそも声を発してもらうにはどうしたら良いのか。

英語の発音も特別教わったわけではなく、まねただけなので、発音に自信を持てない学習者がいる。このような場合、苦手意識から声が出ない。そこで、緊張を解くところから始めて、少しずつ教える。そのためにも、声を出しやすい雰囲気を教室内に作るようにする。

3. 単音と綴り字との関係

まず音そのものを教えて、次にそれに対応する綴り字を少しずつ教えていくという意見がある一方、綴りと発音を同時に教えて、両方が一致するように(文字を見ながら)何度も繰り返すという発言もあった。
同じ音を含む既出の単語を示す事によって読み方を考えさせる(綴りの規則を学習者自らに発見してもらう)という方法が紹介された。

4. フランス語の発音は難しいのか。

「音が聞こえない」というが、「聴く」(音を聞き分ける)能力はある。
Ex. -eu-(閉じた方)と -ou- は初めて聴いたときには違うイメージで認識されるが、日本語の音で表そうとするので両方とも「う」と言ってしまう-> 同じだと思ってしまう。
教えて改善されるということにおいては、年齢は関係ない。
そもそも、フランス語の発音は、きちんと扱えばそれほど難しいものではないのに、なぜ、教師も学習者も「難しい」と思っているのか。
フランス語やその発音に興味を持続させる事ができれば、学習の進度と共に発音も改善される。
Ex. 子供は、意味がわからなくても、おもしろがって繰り返すので発音を覚える。

5. 発音と聴く力との関係

「細かく発音を直す必要はない。カタカナ発音でだいたい通じる。」という考えに対して、以下のような意見があった。
○「フランス語を母語とする人は自分の言語体系に外国人の曖昧な発音を当てはめて推測できるので確かに通じる。通じるかどうかという点では、多少の発音の曖昧さは問題とならない。
しかし、聴く能力にとっては困難の原因となる。学習者は自分の発音とかけ離れた音を聞いたときに、それが自分の知っているフランス語の単語や表現かどうか判断できない。」
○では、「音がわかった」というのは受信能力もついたということなのか。->「音」と「言語(意味を持つことば)」は同じではないので、ただ「聞きなさい」というのではなく、聴き方(理解のしかた)を教える必要がある。
○「聴く力」はコミュニケーションをとりながら身に付いていく。自分が発したことが理解された喜びや、相手が発したことを理解できた喜びが学習のモチベーションにつながる。

6. 発音を扱うためのACTIVITES

○逆DICTEE:学習者が発音し、それを教師が「聞こえた通りに書く」と言ってボードに書く。
-> 変な綴りの単語が出現し、学習者は自分の発音が悪い事に気付く。
○暗唱大会など:COMPTINES, POEMES (VALERY, APOLLINAIRE, VERLAINE, PREVERT, MAURICE CAREME…), CHANSONS 発音と語彙の両方の学習になる。音源があるものを選ぶ。
○発音は他の事と組み合わせて学習する。Ex. 語彙を覚えるのだが、実は発音の練習/文法の穴埋め問題で、文を完成させるのだが、実は文をきちんと読む練習。
○まず、グループごとに分担し、それぞれで、ある音を練習する。次に、別のグループの人に、自分が担当した音を教える。この時、他の人よりも練習しているので、その音に自信が持てる。また、情報を共有するための努力をする(教える、教わる)ので、より正確になる。
○録音教材を使う時は、どのような状況で何をやっているか可視化する。体験談や世間へのつながりの話も交えて、具体的に教室内で状況をつくり(演じ)ながら理解をうながし、練習につなげる。
○音を聴き取るための練習という事を全面に出さない。内容を話題にするが、実は音を聴き取ることから意味を明らかにしていく練習。
○録画教材は、最初は音を消して状況を把握する。どんな発話になるのか考えることにより、聴く体勢ができる。
○聴き取れた事を書く(DICTEE)。上級では、DICTEEは良い練習かもしれない。初心者や初級者では、まだ音と綴り字との関係が曖昧なので、既習の単語や表現以外の事項が入らないように注意する。

7. 発音学習のためのメディア

○せっかく教科書に付属の音源(CD、DVD)があるのに、学習者はそれを聞かない。対策として、授業活動にCD(DVD)を使う練習を入れてCD(DVD)の存在を身近な物にする、宿題で音源を使うようにする、などが挙げられた。
○学習者が音源を利用しやすいように手引きを作る。-> この提案をふまえて、「教材の形態を変える」という意見があった。
Ex. CDがメイン教材で、それに教科書(手引きのようなもの)がついている等。
○音源があるものは、そもそも教室の音声環境に左右される。また、フランスで出版されている教科書で使用されるメディアと日本の機材とではシステムが合わないことがある。
○映画などから、学習につながる場面を探して、ネット上で見るように言う。
○学習者が自分でまずメディアを利用し、何かを準備してから臨むという授業はどうか。
Ex. TV5mondeやRFIの利用。
○学習者と教師とが共に授業でテクノロジーを使う。例として、音声ペン(文をペンでタッチすると、音声とそれに対応した波形がコンピュータ上に出るソフト)の紹介があった。ゲーム感覚で、発音に対する意識の壁を取り払う狙いがあるという。
○フランス語のCM, TVゲームなど、学習者に身近なものを紹介し、フランス語の音声が学習者の日常に存在するようにする。

 例会では、参加者の意見は必ずしも一致しないことがあったが、様々な考えを通して、発音の学習に対する意識が深まったように思う。また、「発音」は「聴く力」と関連しているということ、「発音」の学習は「綴り」の学習とは違う物であるということは、多くの参加者の発言の根底にあったようだ。
例会全体の印象として、「発音」を「単音の発音」としていた感があり、実際に発話で使用される「文の発音」(LES SONS + LA PROSODIE)についての言及が少なかったのが残念に思えた。
(K.U.)



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