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NO.155

 

 

【例会のテーマ】
「学習者の産出における文法のエラーにどのようなフィードバックを与えたらよいか
 ー筆記による産出の場合ー」

 


09/02/2016

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.155
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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時:2月13日(土)14:30 〜 17:30
場所:アンスティチュ・フランセ東京 Salle105(14h30-16h50)Salle102 (17h-)
(162-8415 新宿区市谷船河原町15 Tel : 03-5206-2500)

【例会のテーマ】
「学習者の産出における文法のエラーにどのようなフィードバックを与えたらよいか
ー筆記による産出の場合ー」

 前回の例会のテーマに引き続き、学習者の産出におけるエラーへのフィードバックを扱います。今回の例会は筆記による産出がテーマとなります。
学習者の筆記による産出に文法のエラーが含まれている場合、教師はどのような説明を与えれば良いのでしょうか。普段クラスで実践していること、または気をつけていることなどを紹介してください。
また、2016年度の年間テーマについても話し合います。

* どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。



☆☆ 2016年度例会日程 ☆☆☆☆☆
後日掲載予定です。


いずれも(土)14:30〜17:30
(会場の都合により時間変更の可能性あり)
場所については、例会ごとに案内をご確認ください。

 

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■■■【2015/12/19例会報告】━━━━━━━━━━━━━━
テーマ:「学習者の産出における文法のエラーにどのようなフィードバックを与えたらよいか
 ー口頭による産出の場合ー」

本例会では、フランス語初学者の口頭による産出における文法的なエラーに対する教員の介入について話し合った。
例会冒頭で、今回扱う産出は口頭によるものと限定した。初学者に求める文法の正確さについて議論が行われるとともに、どういう場合にエラーを取り上げるか、エラーをいかに訂正せるか、エラーにいかに気づかせるかについて意見交換を行なった。

◆介入すべきエラーとは?
教師が学習者のエラーに介入する方法は、授業の目的にしたがって行なう必要がある。
口頭による産出と筆記による産出が区別されるように、エラーへの介入方法は学習環境に左右される。クラス規模(大人数クラスか少人数クラスか)や担当科目(「文法」か「会話(コミュニケーション)」)に応じて、教師の介入の仕方は異なってくる。
また教師は学習者の到達レベルを把握した上で介入しなくてはならない。
初学者に求める能力を明確にしてから、その能力へ到達するためにいかなるフィードバックが有効かをある程度想定しておくことが大切である。
初学者の場合、文法的なエラーかそれ以外(例えば発音や語彙)のエラーかの区別は容易ではない。
発音は初級レベルのうちに徹底的に直した方が良いという参加者もいれば、文法的に正確な文を作れるように文法的なエラーには積極的に介入するという参加者もいた。この点は各教師の考え方に委ねられるところである。
ただし認められたエラー全てを訂正するのか、学習事項に限って訂正するのかについては両論あった。文法的に正しい文をインプットすることが、正確なアウトプットを行うのに有用であるという考えがある一方、新出の学習事項に生じたエラーに対して重点的に介入することで、学習事項の定着を図るという考えもあった。
介入によって学習者の意欲を減退させる可能性を案じるべきであるが、エラーを訂正することによって学習意欲を増幅させることもあり得る。
エラーに介入する場合は学習者の反応に気を配ることが大切である。
また介入することを苦手とする学習者もいることから、介入の意図を学習者と共有しておくことが望ましい。

◆介入するタイミングはいつか?
教師は教育的効果を考えて学習者のエラーに介入している。教育的効果が認められないような介入の仕方はするべきではない。また学習目標に応じて介入の種類も変わってくる。
いつ介入を必要とするかについては、教師が何を重視するかによって異なってくる。
正しいテキストの産出を重視すれば介入の回数は増えるし、メッセージの疎通を重視すれば、理解不能な箇所のみ介入することとなる。この場合はエラーが認められてもコミュニケーションに支障がない限り介入しないため、介入の回数は減る。
しかし初学者レベルでエラーを放置することには懸念が示された。初級レベルでエラーを訂正することは比較的容易だが、一度定着してしまったエラーを直すことは困難である。
語彙や発音も同様に、初学者には正しいフランス語を教えるべきである。初級レベルから言語使用における正確さを要求することは、その後の学習成果に良い影響を及ぼすという意見があった。
他方で、コミュニケーション能力の獲得を目標に掲げるなら、授業活動が正しいテキストの産出以外のことも目指すこととなる。
教師の介入がコミュニケーション活動を妨げてはならない。
エラーを認めた時に一つ一つ介入するのか、産出が終了した時に、まとめて介入するのか、さらには授業の最後にクラス全体でエラーを共有するのか、状況に適したエラー訂正の仕方がある。
正確さの獲得とコミュニケーション活動の実践を両立させるか、別個の活動と考えるかは授業活動の提案の仕方により異なってくる。筆記のエラーを訂正することでオーラルにおけるエラーが修正されることもある。
繰り返されるエラーに関しては、活動後に板書を用いてエラーを共有、解説する。

◆なぜ介入するのか?
教師は学習者のエラーを正す役割を果たさなければならない。エラーが自然と直ることは考えにくい。
さらに文法のエラーにだけ介入すればよいわけではない。例えば質問に、OuiかNonもしくは単語でしか答えない学習者がいる場合には文で答えさせることを求める教師が多くいた。教師と学習者の間にもコミュニケーションがある。コミュニケーションを断ち切らないことや、やりとりを継続することの大切さを教えることも教師の役目である。
コミュニケーションをとることに慎重になる学習者に対しては、積極的に働きかけることが必要である。また、一回目の授業で授業参加のルールを取り決めて、学習者の授業参加を促したり、学習者が発話しやすいように授業内容を構成するのも良い。
そのためには学習者に与える情報を教師が選定し、学習者が容易に学習内容を困難少なく理解できるように準備している。
またproductionとexercicesの関係について、口頭による応答があればやりとりの成立を意味するが、練習による産出と自然なコミュニケーションによる産出は同質な産出ではないという意見があった。
他方、教師がエラーに介入したとしても自然なコミュニケーションであるという意見もあった。
前者と後者の相違は、相互作用を意識しているか、言語学習を意識しているかによるものである。初学者では正確さを重視し、レベルが上がれば細かいエラーより産出の量を重視するといったように、介入の仕方は一様ではない。
大切なことは、教育目的に見合った介入であるかを問うことである。

◆どのように介入するのか?
学習者のエラーに介入する際は正答を教えるのではなく、学習者の気づき、学習者自身が注意を払って理解するという認知活動を活用することができる。
例としてrecastと呼ばれる介入方法が挙げられた。この方法は学習者の発言に訂正を加えて言い直すものである。言い直す時には教師はエラーがあることを学習者に伝えない。自分の発言が変更されて繰り返されることにより、発話者が自身の発言に注意を払い、変更されたエラーに気づく必要がある。
recastのような暗示的フィードバックは授業内容を自己訂正によって理解させ、相互作用を活発化させるという利点が挙げられる。
しかし、学習者間の気づきの度合いの差を教師は意識しておかなければならない。また、言い換えによる繰り返しの連続は、自然な相互作用とは異質なものであることは否定できない。
エラーへの介入方法は様々である。recastが有用な場面もあれば、文法説明が有用な場面もある。大事なことは学習者が自発的にエラーを訂正する意識を持たせることである。エラーを正すことを学習者自身が経験することは学習の自立性を促すことになる。学習者の学習意欲を維持するために教師は授業環境を整えることに努める。
自主性を促すことは教室内での活動に限定されるわけではない。授業ではすべてのエラーに介入することはできない。自主学習において自己修正を行なう習慣をつけさせることも念頭に入れておくべきだ。

◆まとめ
「「初学者」の「口頭」による「産出」における「文法的なエラー」への介入」という限定的だったテーマにもかかわらず、限定要素それぞれに議論が必要だったのが印象的だった。特に介入にも初学者ゆえの特別な配慮が求められることに気づかされた。
学習内容の定着を目指すとともに、自立した学習者の育成を目指すことが重要である。
外国語学習における文法学習の位置づけのコンセンサスを参加者の中に見ることができたが、産出の定義や介入すべきエラーや介入のタイミングなどは参加者の中でもずいぶんと異なっていることがわかった。
共通認識をひとつ持とうとするよりも、色々な介入方法を交換することや介入に対する認識の違いを理解する方が、参加者の授業運営に役立つことだろう。


(A.N)



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