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NO.113

 


6/2/2009

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.113

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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
<年間テーマを決めましょう>
...今持っている問題意識からPEKAで話し合ってみたいことを持ち寄って、
2009年を通じて考えていくテーマを探ります。(司会:井上美穂さん)

日時:2月21日(土)14:30〜17:20
ピアソン・エデュケーション(桐原書店)B1F 103/104会議室
(杉並区高円寺南2-44-5
JR中央線高円寺駅徒歩5分/地下鉄丸の内線新高円寺駅徒歩7分)
地図参照 http://www.pearsoned.co.jp/map.html

*どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

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■■■【2008/12/20例会報告】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
SOS ! Lecture
〜越森彦さん 岡見さえさん

大学でフランス語の授業と同時に、フランス文学の授業を担当している2人の
司会者は、フランス語読解の授業が危機に瀕しているという不安を抱いていま
す。テキストを読むという行為をより楽しく、エキサイティングなものにする
ために、2人がそれぞれ「文学」を素材としてどのようなフランス語読解の授
業を実践しているか発表し、それについて全体で議論しました。以下に例会の
模様を記します。

◆第0部(14:30-15:00)議題の出発点の確認
 2人の司会者は日本の大学で広く行われている伝統的なテキスト訳読の授業
の単調さに危機感を覚え、訳読一辺倒になりがちな読解の授業を変えていきた
いと考えています。テキスト読解の授業は、特に大学のフランス文学系学科に
おいては、フランス語の授業とフランス文学の授業として開講されていますが、
今まで別々に論じられてきたこれらの語学としての読解の授業とフランス文学
演習としてのテキスト読解の授業を合わせて論じることで、語学と文学という
二つの分野で相互に役立つものがあるだろうという仮定から、実践活動の相互
交流を目指す、というのが今回の例会の出発点であるということを確認しまし
た。こうした出発点の確認の説明を、例会参加者全員が納得するまでに時間が
かかり、そのことが今回の例会テーマの切り口の新しさを逆説的に示している
ように思われました。
 まず、岡見さんが語学の授業において文学テキストを使用することの可能性
を紹介し、続いて越さんが文学の授業における読解の授業実践例を紹介しまし
た。

◆第1部(15:00-15:45) 語学授業の実践紹介(岡見さん)
 岡見さんは、講読の授業に付きものの個人作業からどのように脱することが
できるかを探求しました。

<対象学生>:第二外国語のフランス語2年目(法学部)
<授業の目的>:フランス語学習の最後の思い出として、有名フランス文学作
品の名場面の抜粋を多読すると同時に、社会人としての教養をつける
<テキスト>:19〜20世紀のフランス文学(有名作家の有名作品をオムニバス
状に紹介、各作品に2〜3回の授業を割り当て)。バルザック、フロベール、
ボードレール、アポリネール、プルーストなど。 <授業活動>:全員で音読/文の構造をとらえるために動詞を探す(クラス全 体で)/教師が作品や抜粋の前後のあらすじなどを解説/学生が2〜3人のグ ループを作って訳す(語彙リストを配布し、辞書を引く時間を節約;教師は各 グループを巡回して質問に答えるなどで補足説明をする)/訳を発表する。 <問題点>: 抜粋テキストを少しずつ読むというコンセプトのため、深みが欠ける。 テキストの選択によって授業の成功が左右される(象徴派の詩は難しい)。 <良かった点>: 文学テキストが学生の興味を引いたようだった。グループワークにより、学生 の参加度が増大した。構文の理解度が向上したのを感じた。 <今後の課題>: 文法のまとめとして、出てきた重要構文を資料にまとめて授業最後に配布する。 訳ではなく、Vrai/Faux形式の問題で全体理解を図る。 例会参加者とのQ&A: Q1.結局この授業は訳読ではないのか? 全体をとらえる作業(スキミング、 スキャニング)はないのか? 最終ゴールが見えにくい。 A1.翻訳を介さずに、読解ストラテジーを与え理解する訓練も必要だったと 思う。 Q2.コンセプトはよくわかるが、プルーストはどこをテキストに使ったのか? A2.冒頭のページとマドレーヌのエピソード。 Q3.画像、映像の併用はするのか? A3.図版や関連する映像を見せることはある。コクトーの「オルフェ」は学 生の反響が大きかった。 Q4.法学部向けの授業なら学生の目的と合致しないのでは? A4.他に法学部用フランス語クラスがあり、担当授業は自由なものを素材に 使うことが許されていた。 Q5.文学作品のその芸術性はどのように扱うのか? A5. 動詞にフォーカスをあてるだけでも、ジャーナリスティックな文体と文 学の文体を比較できる。 Q6.文学作品を読む必要性はあるのか? A6.フランス文学が読まれなくなるという危機感に対して何かするための一 手段であり、学生に作品の抜粋を読むことでフランス文学を身近に感じてもら いたいから。後に文学に対する興味の窓が開くような作品を選んだ。 *その他の指摘: 抜粋テキストによって作業のやり方を変えたらよかったと思う。/有名な訳を 比較して、一番合うのはどれか考える活動も可能。/素材的には、フランスの 文学史等のリセの教科書を参考にするといい。全体理解のための質問も出てい る。/訳の危険性を考慮して、訳はぼかして広い意味にとらせる方がいい。翻 訳をゴールとしない方がいい。/読解の後にフランス語で口頭練習を行うのは どうか(学生(グループ)間で質問しあう、レジュメする、インタビューする、 など)。 ◆第2部(16:00-17:00)フランス文学の授業におけるフランス語学習の実践 紹介(越さん)  越さんは、文学演習の授業が学生の不参加で学級崩壊したのをきっかけに、 実際に学生のレベルやニーズに訴える文学演習の授業を模索しました。 <対象学生>:フランス語フランス文学を専門とする3・4年生 <授業の目的>:テキストのどこに文学性があるのかについて理解する <テキスト>:ゾラ『ジェルミナール』 <授業活動>: -文学史の説明などの前ふりを一切せず、学生を起立させ、フランス語のテキス トを20回音読させる。できたら着席できる。その間教師は教室巡回をし、質問 に答える。 -日本語訳を配り、リレー式に学生に読ませる。5回程度くりかえす。 -1〜2文ずつ、フランス語→日本語の順で読む。(テキストに切れ目が指示さ れている) -教師が学生に質問をする(内容理解問題ではなくテキストの構造をとらえるた めの質問):「上の反対は?−下」「右の反対は?−左」「このテキストの中にもそ ういう対立物はある?」と、探させる。随時ヒント(対立の片方の語、など) を出す。 -テキストを図式として二分する絵を板書。各パーツを読む作業に移行。 -同様の質問を繰り返し、二項対立を使ってテキストを理解させる。 -二項対立の一つの側の行動にフォーカスをあて、分析する。 -語彙の音に注目させて、頭韻(alliteration)を味わう。 -最後に作者についての文学史情報を読む。 -学生はリアクションペーパーに読んだテキストの批評を書く。 <問題点>:時間がかかる(1p読むのに、3回授業する) <良かった点>:学生がテキストを読む行為に集中できる。 <以前の敗因と新しい指針>: 実際の学生と自分の想定したレベルに、大きな断絶があった。 「授業は恋愛と同じ」 →自分が喋りすぎてはいけない、5分以上一人で話さない、文学の概念など、 難しい問題には質問された時のみ答える。/5分に1回は学生にタスクを与え る。/まじめな数人の学生とだけ話さず、教室全体で合意に達する。/自分の 情熱や興味を多く見せると、今の学生はかえって引いてしまう。/指示の出し 方をわかりやすくする。色や図形などグラフィック技術を駆使。 例会参加者とのQ&A: Q1.テキストの内容理解に終始しがちだが、どのように作業を割り当て指導 すればいいかに気がついたのでは? A1.単語の選び方に注目するなどテキストを使って何ができるかに気づいた。 Q2.音読するのでalliterationに気がついたが、音読の効用はあるのです か? A2.音読の効用はとにかく声を出させることです。読んだ後に発音矯正もし て、テキストをみんなで読んで、それを感じてみることもできる。 ◆第3部(17:00-17:30) 全体を振り返って/参加者からの感想・コメント -「いい授業は生徒の活動が多い」と聞いてから、自分の考え方が変わったが、 読解にかかわらず、自分の授業について振り返ってみたくなった。 -越さんの授業を受けてみたいと思った。一歩引くという考え方が面白かった。 岡見さんの方は、文学への愛はわかるが、教室活動や授業の組み立てについて さらに詳しく聞きたかった。 -自分が受けてきた授業スタイルを繰り返しているが、学生は付いてくる。同時 に少し反省もある。訳をする時グループワークは取り入れてみたい。 -学生に語彙集を作らせてはどうか。 -ゴールの設定について考える余地がまだあるように思える。 -やはり文学はいい。愛がないとできない。表現方法は難しいが、時事テキスト にはない味わいがある。 -文学に興味がないが、こういう授業なら受けてみたいと思った。いろいろなア プローチがあるが、教師は目的設定をより明確にすべき。 -文学はどう読めばいいかわからなくて苦手なので、「読み方を教える」という ことが意味あると感じた。 -おもしろかった。楽しさが伝わるのは大切なので、自分が好きなことは見せて もいいと思う。 -勉強になった。 -語学と文学の分け方が理解できなかったのは、基本的につながっているからだ。 岡見さんは、語学的なものから文学への愛、越さんは文学から語学へのアプロ ーチというように。 -取り入れたいと思った。訳の危険性はあるが、精読の必要な場面もあると思っ た。両方大切だと思う。 -文学を素材にするのは出来上がったものがないので工夫が大変だががんばっ てほしい。 このように参加者たちはおしなべて司会者たちの発表に良い刺激を受けたよう だった。議論はこの後行われた忘年会にも持ち越され、活発な意見交換がなさ れた。(HN) *************************************** PEKA (ペダゴジーを考える会)News Letter 配信システム:まぐまぐ http://www.mag2.com/ *PEKAの活動について詳しくは http://peka.cool.ne.jp/ * PEKAへのカンパは以下の口座でお受けしています。 郵便振替口座 00120-1-764679 PEKA *************************************** ◎PEKA (ペダゴジーを考える会)News Letter のバックナンバー・配信停止はこちら ⇒ http://archive.mag2.com/0000228585/index.html このメールに返信すれば、発行者さんへ感想を送れます

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