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NO.108

 


6/4/2008

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.108

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■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
日時:4月19日(土)14:30〜17:20
ピアソン・エデュケーション(桐原書店)B1F 102/103会議室
(杉並区高円寺南2-44-5
JR中央線高円寺駅徒歩5分/地下鉄丸の内線新高円寺駅徒歩7分)
地図参照 http://www.pearsoned.co.jp/map.html
* どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

1.<中級学習者の年度初めの授業について考える>
 一般に中級学習者のクラスは、レベルも、取り組み方もまちまちですが、その差異を
教師が事前に把握することはなかなかできません。年度はじめに出来るだけ早く生徒や
クラスの特徴を知らなければならないけれども、どうやって?その具体的方法を考えま
す。Pékaで以前話し合われたテーマ「授業の引継ぎ」や「年度初めにおける文法項目の
達成感に関する調査」の復習もしようと思います。(神谷貴美子、各務奈緒子)

2.<さて、神谷さんと各務さんの言いたかったことはうまく伝わったでしょうか>
 NLno.106では、今年度のPEKA年間テーマを「例会の構成力」としたのですが、この
タイトルでは年間テーマ決定の際の議論が反映しきれていなかったかもしれません。む
しろ、「教師の思いは伝わっているか」とするべきだったかもしれません。「私たちがあ
る意図を持って授業を構成しても、学習者にその意図はくみ取られているのか?伝わら
ないとしたら、何故?」ということを明らかにするべく、例会では、「教師と学習者」の
関係を「発表者と参加者」の関係に置き換えて考えてみようということでした。今年度
は、発表後に時間を取り、「発表者の種明かし」と「参加者の受け止め方」について話し
合います。

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■■■【2/16例会報告】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
音声障害の臨床〜声の評価法と発声法〜 声のケア方法を中心に
 佐藤麻美さん(国際医療福祉大学 東京ボイスセンター)

2月の例会は「声」がテーマということで、言語聴覚士の佐藤麻美さんをお迎えしまし
た。音声障害や音声外来についての紹介に続いてワークショップというプログラムでし
た。
◇声に現れる病気
東京ボイスセンターは、日本初の「声の」病院。訪れる患者さんは俳優等声を使う職種
の方々だけでなく会社員も多いということです。これまでの6000類の症例は「声帯ポリ
ープ」や「急性喉頭炎」を中心に様々あるそうですが、特にホルモン性障害の患者さん
が多いことがこの施設の特徴です。病状は、声帯の「器質的病変」が69パーセント、咽
頭麻痺が7パーセント、「声帯に見かけ上の病変なし」が22パーセント。主訴としては
1.声がかすれる、しゃがれる 2.喉の痛み 3.歌うときに声が出にくい 4.高い声が出にく
い 5.精査希望等があるそうです。

◇声帯
解剖学的に見ると声帯は「喉ぼとけ」の中にあり、気管から息が上がり、声帯をゆらせ
て声が出ます。そのほか鼻腔共鳴等も加わって私たちの「声」になるのです。「喉頭」と
「咽頭」を含んだ領域が東京ボイスセンターの担当部分だそうです。「声帯振動」の説明
のあと発声時の映像--声帯の動く様子が映し出され、皆熱心に見入っていました。筋肉
の動く様子もよくわかり「皆さんがしゃべっているときにはこのぐらい喉ぼとけが動い
ています」の説明に一同から「へえ...」という声が沸き起こりました。声帯がカーブ状
に動くこと、マッスルテンションが変わる様子、ブーという「原音」の響き等、まさに
貴重な映像と音の連続でした。

◇診断はどのように行うか
診断は画像的診断と内視鏡とで行います。音声の聴覚的評価は、声がかすれていないか、
声がわれていないか、高すぎないか、低すぎないか等の観点で行います。GRBAS評価と
いうもの(G=総合評価、RBAS=0〜3で評価、数字が大きいほど病的要素が強い)
をリハビリの度につけていくのだそうです。正常のものと病例の咽頭画像や音声が紹介
されました。結節(声の使いすぎによっておこる、息もれしているような声)やポリ
ープ、声帯膿ほう等の症例、続いて声帯まひ、発声障害等の例が示され、治療方法も詳
しく紹介されました。音声治療や手術の前と後の患者さんの声の様子も聞かせていただ
きましたが、その差は一目瞭然で治療効果が明らかに感じられました。同時に音声治療
の説明を聞いているうちに、私達は「声枯れ」や「声の高さ」によっても性や年齢を想
像してしまうものだということを実感し、「声」が仕事、学校、社会生活に大きく影響す
るものだということも改めて感じました。

◇病気にならないために
たいせつなことは早期発見、早期治療ですが、「自分の声を知っておく」こともまた重要
です。以下のようにセルフチェックしてみましょう。 1.ハミングを3回くらいしてみて、
出だしがスムーズかどうか、3回とも同じ高さか、痰がからまないか。ただし脱水状態
にあるときはできないので注意。2.V−Fエクササイズ。普通の声と裏声を連結して出
せるかどうか。3.息の量。胸水がたまっていると息は短くなる。息が15秒のびるなら、
発声持続時間のバランスがあるということ。4.声域。ドレミファソラシドを階名でなく
「アの音」で言ってみる。...このようにして声質と発声機能をチェックします。調子が
悪いと思われるときは、水分を補給したり発声量を減らしたりしてみて、2週間たって
も具合がよくならなければ病院へ行きましょう。2週間から4週間が治療のゴールデン
タイムなので、2週間くらい様子をみてから病院へ行くと効果的だそうです。

◇どのくらいで病気になるのか
持続発声を17分、朗読を35分続けると声帯組織は損傷します。(だから教師の場合、1
日に何コマあるか、何分授業か、生徒数は何人か等を考え合わせて治療方法を考えるそ
うです。)また喫煙も問題で、1日の喫煙本数×喫煙年数=400以上で咽頭がんになる確
率が高くなるそうです(ブリンクマン指数)。また発声以外の重荷としては、上肢を使っ
た運動(テニスのショット、剣道のメンのとき等)では声帯が閉じるのだそうです。こ
れらは「量」が問題なので、治療を受けるときにはこのような運動を「いつから」「どれ
くらい」していたかを言う必要があります。ともかく、何かあったら、あるいはある前
に、またはあるかどうか気になったら、専門外来へ!東京ボイスセンター以外にもあり
ますが、地方では少ないそうです。関西では大阪大学等。言語聴覚士が検査に立ち会う
ことができる病院を選ぶとよいそうです。

◇質問コーナー
次々と質問が出されました。
Q:話をするときに声がかすれたり、淡がたまりやすかったりするのですが。
R:加齢によって粘液を自分で出す能力が落ち、ホルモンのバランスが変わるためにあ
る種の声枯れが起こることがあります。しかし、これは水分補給をすることによってあ
る程度防ぐことができます。もし婦人科系の病気治療中である場合は病院で相談してく
ださい。はちみつやプロポリスはアレルギーを引き起こす可能性がありますが、水分や
柑橘類、また黒豆を煮出したもの等は量を気にせず使用しても大丈夫です。
Q:大根のはちみつ漬け、梅干が喉にいいと聞いたのですが。
R:実証されているわけではありません。唾液が出やすいとか体力回復にはよいかもし
れませんが声帯に良いというわけではないので。また海外で良いとされているアガリク
ス(きのこ)、ユーカリやパイン、ベルガモット、ラベンダー等も日本では立証されてい
ません。
Q:声の高さの治療はどのようにするのですか
R:患者さまのヒアリングから始め、音域を広める訓練をします。拡大した音域の中か
ら選べるように、音域を広げ、広げた中で自分の位置をみつけるのです。キーボードを
使う場合もあります。
Q:学生さんで裏声じゃなくソプラノのような声が出る人がいるのですが。
R:そういう人も実際います。就職するとき等本人が困るようなら治療をします。「ふり
をしていないか」等詳しくヒアリングします。(40分以上かけて詳しく聞くのだそうで
す)「声質」だけでなく「話し方」による場合もあります。声はパーソナリティーにつな
がるので「話し方」なのか「声質」なのか分けて考えることが大切。
ここで喉に良い「黒豆の煮出したもの」から作られた「黒豆リボイス」(シロップとタブ
レット)の見本や東京ボイスセンターのパンフレットをいただき、Pause。 休憩中にタ
ブレットの効能を既に感じた人もいらっしゃいました。さて次はワークショップです。

◇よりよく発声するために
*「ティッシュペーパーを顔から15センチ離して思い切りふっと吹いてみましょう」と
いう指示に従いふーっ。これで息がしっかり出ているか調べます。息を吐くことに集中
してリラックスできているか、きちんと口の中に息がたまって発声できるか。唇がしっ
かりまるまっているか。ここで「最近の生徒たちは口をすぼめることができない人が多
い気がします」という声が。唇を閉じるときに下唇だけが動いている人がいるそうです。
すぼめるという動作をきちんとしないと上唇が動かないとのこと。最近は例えば「う」
の音を出すときにアナウンサーでさえすぼめない人がいるので動かさない人が増えてい
て、日本人なのに「う」「ま、み、む、め、も」の発音がきれいにできない人も。これは
当たり前の運動を当たり前にしない人が増えているからだそうです。
*さて、今度は腹式呼吸です。腹圧を使いましょう。ウエストをさわりながら、下腹部
を少しふくらませて「フッ」と息を吐きます。息をすった後で「s---」と出して20秒か
30秒のばしてみましょう。はじめは小さく「s」次に大きく「S」、大きくするときお腹
をへこませたままです。次に「う」の音で。吸って「う」を伸ばしながら大きくなった
ときにお腹を引っ込めて。小さい声で「おーー」、続いて大きな声で「おーー」下腹部に
力を入れて息をサポートしながら。ブレスサポートすると声帯が傷みにくくなります。
次々出される指示どおりみんなで声を出しました。腹式呼吸の練習は寝た姿勢のほうが
よいという話がありますよね、でも筋肉の使い方が全然違うので、ふだん自分が話すと
きの姿勢(立つ、座る等)で声を出しましょう。次にハミングをしてみます。息を先に
出してから音が出る感じで。息が出てから鼻にぬけます。高い音、低い音でやってみま
しょう。次に「ウ」の音で、声の大きさを変えずに「低→高」、「高→低」とハミングし
てみましょう。(全員できましたので病気ではないとのことです。)
*次は声の評価です。立って声を出します。2人組でヒアリング→評価を行います。い
ろいろな方法がありますが、たとえば文章を言わせます。1回目は「今日は寒いですね」
2回目は「今日は寒いですね、でも来てよかったですね」と1つめより長くした例文を
言ってもらい、息継ぎ、イントネーションをみます。あるいは、大きな声を出させる等...
という説明を聞きながらも筆者はよく意味がわかっていなくて「今日は大阪から来まし
た」という例文を繰り返さずに「神戸からです」と勝手に例文を訂正したりしてしまい
ました。先生には「レスポンスをすることも必要ですね」とフォローしていただきまし
たが...。このほか、「1から10まで数えてください」「ウの音をだんだん大きくして言
ってください」等の問題で、リズムが狂うことなく言えているか、滑らかに言えている
か、という柔軟性を見たりしました。「いやーこの一杯のために生きてるなあ」という例
文を言わせたり、日本語とフランス語で自己紹介させたり、みんなの作った例文や問題
そのものもおもしろかったです。
*最後に<フランス語と日本語>についても話していただきました。フランス語の方が
より高い音、奥の位置で出されるより深い音です。日本人が発音しようと思うとかなり
意識しないと母音だけでも大変です。口の中の狭い範囲でたくさん動かさないといけま
せん。しかしアフリカの言語ではもっと多くの動きが必要なものもあるそうです。また
フランス語には鼻母音がありますが、日本語でも鼻母音化ということはあります。「懸案」
「〜が」の音。しかし鼻腔だけの音はありません。日本語は長短(伸ばす音)や高低で
変化をつけるということはあります。最終的にフランス語と日本語、病気の出現率には
差がなく、声の評価も同様で、「負担」の違いも音声上差はない、ということでした。そ
の後、「ず」と「づ」の違い、「じ」と「ぢ」の違いは四国の人しかできない、という話
が出たり、最後まで盛り上がりました。

 佐藤さんに対して「3時間くらい大きな声で話されていますが疲れませんか」と質問
が出ました。本当にクリアで聞きとりやすい声でした。答えは「疲れないようになって
きました。慣れたというのもあります。患者さまと話をした後すぐに水分補給する等気
をつけています。腹式呼吸で「くび」のところに力を入れないで話すようにしています。」
とのことでした。
 「声」のことを色々な方面から学び、考えた2月の午後でした。皆さんからは「明日
からもっと大切に話そうと思うようになった」「ストレスをかけない話し方ができるよう
になりたい」といった感想が出ていました。私達にとってなくてはならない「声」をこ
れからも大切に使いましょう。授業の合間には水分補給を忘れずに!
(N.K.)


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■ □■ 2008年度例会テーマ募集 □■□■□■□■□■□■□■□■
 2008 年今後の例会日程は、6月21日、9月20日、10月18日、12月20日です。
(いずれも土曜日14:30〜17:30、場所についてはメールマガジン各号でご確認くださ
い)。
 9月,12月の例会について、発表者、話題提供者を募集中です。また過去の例会の
アンコールも募集しています。メールマガジン本号への「返信」で件名を「2008」
としてください。過去の例会テーマは、
http://peka.cool.ne.jp/pekaNL/pekalisteJ.html
またはhttp://peka.cool.ne.jp/pekaNL/index.html
でご覧いただけます。


       

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