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NO.105

 


09/10/2007

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     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.105

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■ 次回のPEKA ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

日時:10月20日(土)14:30〜17:20
ピアソン・エデュケーション(桐原書店)
102/103会議室
(杉並区高円寺南2-44-5
JR中央線高円寺駅徒歩5分/地下鉄丸の内線新高円寺駅徒歩7分)
地図参照
http://www.pearsoned.co.jp/map.html

10月の例会では、J-F.ROCHARDさん(フランス大使館文化部)にお話いただけ
る予定でしたが、急遽ご都合がつかなくなりお越しいただけないことになりまし
たので、以下のプログラムに変更いたします。

◇ブザンソン夏期研修(ingenierie de la formation) 報告:土屋良二
◇12月・2月の例会はゲスト講師をお招きするので、少し早いですが、
今回、2008年度年間テーマの提案を話し合っておきたいと思います。
◇(時間が余れば)ディスカッション「学びの場における教師の身体の役割」

*参加費は無料です。どなたでもご参加いただけます。

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■■■【9/15例会報告】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「発音矯正における体の使い方」
......... 鵜澤恵子さん(東京日仏学院)
(キーワード:発音指導、発音矯正、訂正)

 「日本人が皆同じ話し方をしているわけではない」と鵜澤さんは切り出しまし
た。「体と力の使い方に個人差がある」ということです。たとえば、最近はニッコ
リ笑った口の形を変えないで話す人が増えたそうです。日本語では、舌やのどに
力が入っていても、唇を閉じなくても、話の内容は理解されますが、その体の使
い方でフランス語を発音しようとすると様々な困難が生じます。一番の問題は、
舌根(舌の付け根)に力が入っているという事です。声が前に出にくくなり、フ
ランス語の発音に必要な声の力が足りなくなってしまいます。
今回は、「一般的な音声学による発音矯正では直りきらない発音を体の使い方
に着目して直す」という実践をふまえた報告でした。まず声を出すことから始め、
次に日本人の苦手な音の練習のしかたを紹介していただきました。
 教えるためには教師自身が「自分の体を意識する」こと、ある音を発音したと
きの「感じ」をつかんでいることが大切であるということで、実際にいろいろな
音を体感しながら進められました。発音練習は「一人ではさびしい」ので四人一
組のグループをつくりました。

 発音の基本、これがきちんと出来るとフランス語の発音がうまくいく基本とし
て四点があげられました。
1【フランス語は前に力】まず [a]で試してみました。舌先を下の前歯のうしろに
つけて支えると舌根がリラックスしてのどの力が抜けやすくなります。最近は、
舌根が緊張して[a] が出ない人が増えているということです。ついでに、「上下の
唇を使う[p,b,m]」「上の歯と下の唇を使う[f,v]」事も意識してみました。
papapa.... bababa.... mamama.... fafafa.... vavava... .と繰り返し
言ってみました。私は緊張していたためもあってなかなかうまく言えませんでした。
papapa.... bababa.... mamama.... は上下の唇の力を使う(息の力ではな
い)のですが、唇の力がゆるむと息が漏れて唇が振動しfafafa.... vavava....
と似た音になってしまいます。フランス語では母音の力で子音を聞かせるので、
母音の調音に子音の調音を組み合わせるような感覚です。仕上げに、IL EST MINUIT
MOINS VINGT.を言いましたが、これも舌先を意識して母音を発音しつつ子音を発
音するために、舌先や唇、上の歯を使うという練習でした。

2【縦長の口】口を横に引張る力が強いと、のどがしまるそうです。手で押さえて
両頬を引っこめるようにし、楽に口を縦にあけると、のどが開く感じになります。
フランス語に限らずラテン系の言語はのどを開けて話しているのだそうです。こ
の時、舌根の力も抜けています。このイメージを崩さずに、唇の形や開口度を変
えて母音を発音し分けます。

3【歯を開ける】歯をくいしばらないように気をつけながらSI,RIZを言ってみまし
た。[i][y]のように緊張度が高い母音を発音するときでも、歯は開けておかないと
前に力が入る(舌先が緊張して高い位置に来る)スペースがなくなってしまいま
す。舌先に力が入れられないと[i]だけでなく[s]の発音も難しくなってしまいます。
また、[i]の力が足りないと、[R]を聞かせる事ができなくなってしまいます。(無
理矢理に[R]を出そうとすると、のどに力が入り、のどを痛めます。)一方、[u]
は舌先が後方に置かれるので、舌根の位置が高くなります。この時、歯が閉じて
いるとのどが狭くなり、のどが詰まったような苦しい音しか出なくなってしまい
ます。

4【下顎が上下する】LA NOUVELLE-ZELANDE で練習しました。下顎がきちんと動か
ないと言えないということで、顎をガクガクと開け閉めしてから言ってみました。
英語訛りの[l] をどう矯正するかという質問が出ました。英語は英語、フランス
語はフランス語、と意識させる必要があるという回答でした。英語の[l]とフラン
ス語の[l]とでは体の使い方が違います。発音は適当でよいと思っていると直らな
いそうで、まず我が身について反省しました。
 
休憩の後、もう少し細かく音をとりあげて以上の四点をさらに確認していきま
した。
【鼻母音-em, -en,- am, -an】
日本語の「あ」から始めました。良い「あ」の場合は声が楽にはっきりと出てい
るのですが、最近は苦しい「あ」を言う人が増えているそうです。その理由のひ
とつとして姿勢があげられました。猫背になっていると首が前に倒れ、バランス
を保つために首のうしろ側に力が入るため、(肩こりをまねくのみならず)舌根
に力が入ってしまうのだそうです。首の力が抜ける姿勢で立って発音してみました。

【[R]】
舌根に力が入ると、息をぬく音にすぎない [R] も言えません。ちなみに [R]
は、RIZ や REGARDEZ ! のように語頭にある場合が一番言いにくいのですが、多
くの場合 [R]よりもそれを支える[i]や[E]がきちんと言えないことが原因という
ことです。
[dR, tR] は下顎を上下させる例です。 LA CATHEDRALE, TRES BIENなどを練習しま
した。
[ R/l ] 舌先が下顎( [R]=母音の舌先の位置に準ずる )についているか、上顎
( [l] )についているかを意識します。 QUELLE HEURE EST-IL ? で練習しました。

【[u]】
舌の先で下顎の奥を感じるように、上を向いて言ってみました。普通に話
す時は、下顎を前に出すようにすると楽に舌先を後方に置くことができます。
[u]は低い音なので声の音程を下げてもみました。(本来低い音なのに高い声
=作り声で言おうとするとのどに力が入り苦しくなってしまいます。)
練習としてIONESCO の LECON DE FRANCAIS POUR ETUDIANTS ETRANGERSの中の
LE FUTURを読みました。単純未来形がたくさん使われているので、[R]の発音に無
理な力を使っているとのどを枯らしてしまいます。

長い文を読んだところで、最後にPROSODIEについて。
【リズム】
フランス語は最後の音を伸ばすわけですが、日本語では一般に力の使い方が逆です。
発話の最初に力を使ってしまうため、文の最後はエネルギーがなくなり、母音がはっ
きりと発音されません。そこで、最初はセーブしておいて最後にエネルギーを使う練
習をしました。「あーー(小さい声で延ばす)あーー(大きい声で延ばす)」とお腹
に力を入れてひとしきり言ってみました。

【イントネーション】
フランス語の文を言うときは、低い位置から始め、だんだん声を高くしていきます。
日本語の力の使い方だと、いきなり高い声から始まり、それ以上高く上がらず
(声が下がる)イントネーションがめちゃくちゃになってしまいます。また、それ
とは別に、本来の自分の声よりも高い声で話す習慣がついている人がいます。特に
女性は(最近では男性も)、高い声を作っているために声が楽に出ていない人がい
るそうです。フランス語のイントネーションに従って声を上げていくためには力が
必要ですが、最初から力が入っているので、もっと力を入れなくてはなりません。
そのため、すぐに息切れして、長い文を言うための息が続きません。このタイプの
人は、単音の発音においても、より力を必要とされる緊張度の高い音の発音が困難
です。声を低くする(自分の本来の声の高さを意識する)と体がリラックスし、発
音しやすくなるそうです。

 教師の緊張は学生の緊張をまねきますから、「ストレスのかかっていない」声を
きちんと出す必要があります。疲労も軽減されそうです。何人ものボイストレー
ナーが「声が楽にきれいに出せると人生が変わる」と本に書いているそうです。
学生さん以上に、声を出すことが生業である教師にあてはまりそうな言葉ですが、
意識して実践してみると言う程簡単ではありませんでした。自分が想像以上に「緊
張型」だと思い知らされた3時間でした。
(Y.N.)


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