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NO.100

 


Pédagogieを考える会 NEWSLETTER 100
01/12/2006

 寒くなって来たのに加え、「教師のしごと」がいろいろ立込む時期です。風邪気味の方も、忘年会までには体調万全に整えておいてください!そう言えば、4月の例会では体調管理も「教師のしごと」に数えられていましたね。。。記念すべき100号ですが、10月の例会報告と、忘年会のお知らせを淡々とお届けします。

例会報告1

留学指導について

田中幸子さん


テーマ:その他,研修



 近年、フランス語を学ぶ人に限らず、外国語を学ぶ人にとって、海外留学は切っても切り離せない一つのステップとなっています。留学経験のない人の中には、留学に対して大きな不安を抱えている人も多く、また逆に、留学の楽しいイメージが先行して留学の本質が見えていない楽観的な人もいることも事実です。このように、留学を希望する多様な学習者に、教師の立場から何を指導することができるのでしょうか。留学指導に焦点を当てる前に、留学とはどういう機会なのかを整理するため、まずは、なぜ留学が大切なのかをまとめました。今回の例会参加者は、全員が留学経験者ということもあり、自身の経験をふまえて『留学が大切なのは○○だからだ』という考えを一人一人述べました。

■『留学が大切なのは??からだ』
フランス語で生活するから。/違う環境に自分を置いて自分を見つめなおすから。/異文化理解できるから(異文化に対する許容度が高まるから)。/将来役立ちそうだから。/(漠然と)仕事に結びつきそうだから。/日本を客観視できるから。/出発当時の日本と帰国時の日本の状況の差を肌で感じられるから。/研究材料を集められるから。/精神的に成長するから。/自信がつくから。/出発前の留学先のイメージと実際の様子の差を体感できたから。/どこに行っても自分は自分だと実感できたから。/フランス語を使っても人間は人間だと実感し、会話することのハードルが低くなるから。/日本に関する理解を海外の人々に広げていけるから。/カルチャーショックを受けることができるから。/集中の仕方や、有効な時間の使い方を習得できるから。
 留学の本質を確認しあったところで、本題である留学指導に関する議論へと移りました。実際に留学指導をしている教師の方々からは、留学指導の苦労として、以下のような点が挙げられました。

■『留学指導は何が大変か』
・時間外労働であること。
・生徒の個人的領域に踏み込まなければならないこと。
・授業中は上の空であるにも関わらず、フランスに対しての憧れだけが大きい「夢見る夢子さん」に対して指導をすること/留学の厳しさに耐えられるとは思えない、イメージ先行の学習者に留学指導をすること。
・漠然と『留学がしたい』という生徒に対して指導すること。
・『留学に行ったらどうにかなる』と思っている生徒に対して指導をすること。
・語学力がないのにもかかわらず大学留学を希望する人に対して指導をすること。
・自分で何にも調べずに、留学指導を求めてくる生徒が多いこと。
 様々な意見が挙げられましたが、留学指導をしている教師の苦労している最大の点は、学習者の留学に対する認識の甘さからくる問題であることが見えてきました。最後に以上の話し合いをもとに、留学希望者に向けて教師はどのような指導をしたらよいのかをまとめていきました。

■『留学希望者に向けた指導とは』
・目的が曖昧な学習者には、長期留学ではなくまず短期留学をすすめる。
・教師が留学先を特定せず、できるだけ学習者が主体的に決定できるようにする。
・教師が手取り足取りせず、学習者が本当に何をしたいのかを言語化させる。
・留学ネットワークを確立する。
 →何を調べればよいのかをまとめた情報を  集める。/私費や交換留学の利点、欠点についてまとめる。/先輩などからの体験談を聞く場を設ける。/留学手続きに必要な工程のモデルを作成する。
・「留学するにはどうしたら良いのか?」と聞かれたら、その学習者が留学を考え始めたということを認めるだけでもいい、「どうしたら良いのか」の部分は実際に教えなくてもいい。
・留学から逃げない、戻ってこないようにするための助走態勢を手伝うというスタンスで指導する。

 留学指導の際、重要な点は、学習者に留学の全てを決定させるということでした。ただし決定に困った場合には、教師は情報を提供するなどのサポートをしていくというスタンスで指導にのぞむべきであるという結論に至りました。今後の課題として、質問の答えに困るシチュエーションや、よく聞かれる質問を将来的に蓄積できれば、留学指導をする教師に役立つのではないかという意見が挙げられました。今回の話し合いで出た様々な意見は、留学を指導する教師だけでなく、留学を希望する学習者にとっても同様に、留学とは何かを考えるためにとても有用であったと思います。
(K.S.)

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例会報告2

学習者の個人差に対応できる教師

各務奈緒子さん、安藤博文さん、神谷貴美子さん



キーワード:クラス運営、対人関係


 学習者とひとえに言っても、十人十色、千差万別な人間の集まりです。教師には、学習者間の個人差に対応できる能力が要求されます。個人差に対応できる教師像を探るために、大きく分けて『個人差の種類』、『学習者タイプ別対応策』、『教師の資質や力量』の3点について話し合いました。

■「個人差」の種類
まずは性格に起因する個人差と、能力に起因する個人差との二つに分けて意見を出し合いました。性格に起因する個人差を生得的なもの、能力に起因する個人差を習得によるものと考えて議論を進めていった結果、以下のようになりました。

性格に起因する個人差
おしゃべりな/無口な(外向的/内向的)/物怖じしない/恥ずかしがり屋/ぼーっとしている/プライドが高い、負けず嫌い/すぐにめげる(気の弱い)人/考えもせずあきらめる人/前向き、明るい、ユーモア/几帳面/いいかげん/生真面目/キャピキャピ/生活が不規則(朝起きれない)。
能力に起因する個人差
モチベーションが高い/低い/表現力がある/ない/授業内容をすぐに習得する/しない/4技能のばらつきがある。

しかし議論が進むうちに、果たしてこの2つを区別することができるのか、という意見が多数出てきました。二つが相互に影響を与えている可能性も考えられる個人差が以下のようになりました。
どちらともいえない個人差
順応性がある/ない/グループワークができない、生徒間のコミュニケーションが取れない/集中力がある/ない/病気を抱えている(うつ病など)。

■学習者タイプ別対応策
 短時間の話し合いにもかかわらずたくさんの個人差が挙げられました。それらの多様な個人差に対処するにはどうすればよいか、参加者のうち教師経験のある方々から、実際の授業で実践されている対処法の一例を発表していただきました。
・ グループワークの活用
→個人の性格を生かしグループ内でそれぞれに使命を与える。
→緊張をほぐす。
→教師の介入を減らし、生徒主体の授業にする。
→出席番号順に座らせてペアを仲の良い人ばかりで組ませない。
・ 集中力が切れたら…
→残り時間に体を動かすことや小テストをする。
→授業に緩急をつける。

■教師の資質や力量』
 最後に、教師としての「人間的資質」と「専門的、技術的側面」の2つの観点から、教師の根幹とも言える「資質や力量」について、参考文献からの紹介がありました。(Cf. 吉本二郎編(1989)『教師の資質・力量』ぎょうせい)
「人間的資質」
- 人間への愛情
- 意欲と情熱
- 公平さとバランス
- 絶えざる探究心
「専門的、技術的側面」
- 教科についての専門的な知識
- 授業(クラス運営)の力

 おわりに、まさに今回の例会のテーマにぴったりの名言を紹介していただきました。
「鋭きも鈍きも共に捨て難し 錐と槌とにつかいわけなば」広瀬淡窓(1782-1856)
(K.S.)

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Péka Info

忘年会のご案内

12月16日(土)例会終了後 18:00〜
六丸八
(Tél 03-3339-6823 ;JR高円寺駅北口「中通り」徒歩2-3分
忘年会のみ参加の方には地図をお渡しします。参加連絡の際、お申し付けください)
予約の都合がありますので,参加なさる方は12月10日(日)までに
himetアットマークic.daito.ac.jpまでご連絡ください。


次回のPékaは...


次回のPékaは…

12月16日(土)
14:30-17:20

ピアソン・エデュケーション
102/103会議室 (地階)
(杉並区高円寺南2 - 44 - 5
tel 03 - 3314 - 8181
JR中央線高円寺駅徒歩5分
地下鉄丸の内線新高円寺駅徒歩7分)
http://www.pearsoned.co.jp/


1. 夢の教師像・理想のキャラ作り
(西川葉澄さん、高瀬智子さん)

理想の教師とは、さらに理想の語学教師とはどんなものなのでしょうか。おそらく長年教鞭をとってこられたベテラン教師の皆さんは、教師のキャラクターなど2次的なこととお考えでしょうが、生まれながらの教師など一人もいないのですから、若手にとって「教師キャラ」作りとは、よい教師になるための一つの課題ともいえます。次回はまず学生アンケートから学生にとっての理想の教師像とは何かを分析し、その後数人のベテラン教師の方たちに代表者となっていただきパネルディスカッション形式で討論する中で、理想の教師像および「キャラ」作りについて一緒に考える場を持ちたいと思います。

2. Qu’est-ce qu’une methode de FLE a la fois adequate aux exigences methodologiques du Cadre europeen et adaptee aux apprenants japonais ?
(Gael Crepieuxさん、
Philippe Callensさん,
高瀬智子さん)

A partir de leçons du manuel Spirale (paru le 20 octobre, Hachette), nous verrons en quoi ces activités facilitent l'acquisition du français, malgré les difficultés a priori des apprenants japonais. Nous verrons comment rendre les pratiques de classes suffisamment authentiques pour susciter l'interêt des apprenants tout en leur permettant de développer des savoir-faire dans différentes compétences (compréhension et expression orales et écrites). Enfin, nous montrerons en quoi elles permettent à chacun de devenir plus actif et plus autonome, rendant ainsi l'apprentissage plus efficace et plus rentable.


       

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