Pékaトップページ       過去ニューズレターMENU    

 

NO.170

 

 

「困っていること」

*2018年度年間テーマ:
「ひろがる授業」


10/06/2018

┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏

     PEKA (ペダゴジーを考える会) News Letter no.170
┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


*PEKA活動資金カンパ口座
三菱東京UFJ銀行 板橋支店
普通3591136
名義:ペカタントウ ウザワケイコ

郵便振替口座
00120-1-764679
加入者名:PEKA

 

■□■ 次回例会のご案内 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

6月の例会テーマ :「困っていること」

日時:2018年 6月16日(土) 14:30 〜 17:30
会場:アンスティチュ・フランセ東京
001教室(14:30-16:20)206教室(16:20-17:30)
アクセス:http://www.institutfrancais.jp/tokyo/about/contact/

フランス語を教える皆さんの悩み相談室のようなものになる予定です。ぜひお気軽にご参加ください。

*どなたでもご参加いただけます。参加費は無料です。

*2018年度年間テーマ:「ひろがる授業」



■□■

☆☆ 2018年度例会日程 ☆☆☆☆☆
以下の通りです。メモをお願いします。


2018年6月16日、9月15日、10月20日、12月15日、
2019年2月16日(もしくは23日)。

いずれも土曜日の14時30分 〜 17時30分ですが,会場の都合により時間が変更になる可能性があります。
また,開催場所については,例会ごとに案内をご確認ください。

 

上へ

■■■例会報告////////////////////////////////////////////////////////////
======【2018/04/21 15h30-18h30 @アンスティチュ・フランセ東京】

<DIALOGUEをどう扱うか>

◇前回の例会で、「教科書の中でDIALOGUEだけが浮いている。扱いにくい」という声があった。その意見をきっかけに、4月の例会では「DIALOGUEをどう扱うか」をテーマに話し合うこととなった。
通常の例会に比べてフランス語ネイティブの参加者も多く、日本語フランス語が入り混じり飛び交う活発な意見交換が行われた。

◆日本の教科書とフランスの教科書の比較
・日本の教科書だと、DIALOGUEはSENSIBILISATIONとしてレッスンの始めに置かれているが、フランスの教科書だと仕上げとして最後に置かれているという印象がある。
・フランスの教科書では、始めにORALで学び、最後にECRITで確認するパターンが多い。この方法のほうが学習者はよく理解できていると感じる。その課で学ぶ要点をまず示し、ORALで少しずつ理解させていくという方法を取ったほうが、学習者はよりCOMMUNICATIFになる。
・初心者には特にフランスの教科書がよい。日本の教科書を使うとDIALOGUEを翻訳することに終始してしまう。
・日本の教科書のDIALOGUEは音声の読み方が平板、ときには滑稽でさえある。ON NE PARLE JAMAIS COMME CA !
・日本の教科書でも『Moi, je...』(アルマ出版)はフランスのものに近いのでは?
・『Moi, je...』を使用した場合、フランス語を日本語に訳しそれをまたフランス語で言うという作業は、逆に難しくはないか?
日本語をフランス語に訳すのではなく、フランス語をそのまま話せるようにしなくてはいけないのではないか?
・日本語以外で内容を理解させるには、IMAGE, GESTE, MIMIQUE等いろいろな方法がある。日仏でGESTEの意味するものが異なることがあるので理解が難しいこともあるが、そうやってGESTEを学ぶのもおもしろい。

◆そもそも、なぜDIALOGUEが問題になるのか?
・DIALOGUEは意味を理解して終わりではなく、発展させなくてはいけない。例えば、
1)リエゾン等の発音練習に使う、2)登場人物の男女を変える、または片方はフランス人でもう片方は日本人にするなど、シチュエーションを変化させ練習する、3)フランス語を言うときの体の使い方を覚える、等。
・教科書自体、DIALOGUEをどう使うかというコンセプトがないのではないか?だからこそ、教科書の中でDIALOGUEだけ使えない、浮いている、と感じる人がいる。「聞きましょう」「読みましょう」だけでは、教師も学習者も何をするのかわからない。
・学習者の学習目的によっても事情は違ってくるのでは?
自分の専門を続ける上での必要性やそこから生まれるモチベーションの有無で、まったく違ってくる。明確な目的意識がなければ、楽しいなどの理由がないと無理。
・当初モチベーションが高くても、楽しくなければ続けるのは困難では?
教える側も教わる側も、楽しくなければ続かない。

◆文法重視の傾向について
・大学生の中には、がちがちの文法の授業を好み、会話は必要ないという人もいる。だからこそDIALOGUEが浮いてしまう。
・大学のレベルも、それまでの学習環境も関係なく、多くの人が文法偏重の図式から逃れられない。これは日本人だけの問題ではない。パリ郊外で移民を相手にフランス語を教えていても「文法を教えてください」と言われる。
そういう人たちに対しては、「英語の文法を勉強しても英語がしゃべれるわけではないでしょう。だから、ここではフランス語の文法を勉強するのではなく、まずフランス語を勉強するのだ」と言う。

◆他の教師とのかね合い
・大学ではたいていの場合、授業は文法と会話に分かれている。ペアの教員と方針が合わないと、それがフラストレーションになることもある。これは UN PROBLEME INSTITUTIONNELとも言えるが。
・伝統的なやり方は簡単だから、皆がそうしたがるのでは?
CREATIVITEが求められることは面倒くさいのでサボっている。自分たちで書き換えるなどDIALOGUEを使っていろいろなことが出来るのに、訳して終わり、という安易な方向に流れている。

◆DIALOGUEの不自然さの問題
・DIALOGUEが文法を学ぶためにあるのだとしたら、その意味では教科書の中で浮いていないのではないか。ただ、文法を入れようとして会話としては不自然なものになっている。
・日本の教科書は、文法のページ、コミュニケーションのページ、...といった具合に構成されているがまったく役に立たないものが多い。DIALOGUEの内容は完全に作り物で面白みのないものに感じる。
・教科書はあえて使わない。例えば、https://agi.to などネット上に、興味深い素材がたくさんある。DOCUMENTS AUTHENTIQUESを使うという手もある。学習者は成長するのだから、教師は同じことを繰り返していてはいけない。
・自分の授業では、IMPROVISATIONを大切にしている。学んだことをもとにして何が出来るのか、何がしたいのかを学習者に考えさせる。例えば、今トイレに行きたいときどう言えばいいのか等、自分がしたいことを言えるようになるために、学んだ文法事項をPERSONNALISERさせる。そのために、DIALOGUEの一部分が必要になることはあるが、DIALOGUEのすべてを思い出すことは必要ではない。
・スケッチをさせる教科書を使っている。マンガのように静止画がコマ割りになっているものにDIALOGUEがついていて、それを学習者たちが演じる。緊張を和らげたり、フランス語に慣れるという意味があるのかもしれないが、内容が子どもっぽく不自然に感じる。
・内容にこだわらず、大きい声で話す練習、イントネーションや発音矯正と思えばいいのではないか。
・不自然なときは教科書を批判することも必要では。Je m'appelle...と出てきたら、「普通はこんな風に言わないよね。(握手するために手を出して)“Bonjour, Taro Yamada !”だよね」と言うなど。
・教科書批判はするべき。教科書を全部やる必要もない。逆に変なフランス語を教えることになる。

◆教科書という制度の問題
・コミュニケーションをやらなければいけないという考えで、DIALOGUEを入れておけばいいと教科書作成者は思っている。
・1980年代初頭に、外国人教員を使うためにそれまで文法一辺倒だった教科書を変えたという事情がある。
・教科書を作る立場から言うと、ページ数等入れなくてはいけないものが決まっているという事情もある。
・Interactions (CLE), Nouveau Rond-Point (Maison des Langues)といった教科書にはDIALOGUEがないが、それで問題ない。例えばInteractionsでは、教師が始めにすべてを説明するのではなく、学習事項が繰り返しDECOMPOSEされRECOMPOSEされた形で提示され、最後には学習者が理解しているという仕組みになっており、それが非常によい。
・最初にDIALOGUE があると、理解できないこともあり学習者は疲れる。終わりにあるとリラックス出来る。

◆DIALOGUEの使い方
・DIALOGUEがどんなものかによる。学習者のレベルにもよる。例えば、
1)必ずしもすべてを使う必要はなく、発音を直すために一部を使う、2)全体を聞かせて聞こえてきた単語を確認する、等。
・PRODUCTION ECRITEの練習として、
1)学習者をペアにしてDIALOGUEに関する質問を作らせ、それを他の人に答えさせる、2)DIALOGUEの内容を説明文にさせる、等。
・穴埋めの形にして、欠けている部分を言わせる。穴をどんどん大きくしていく。最後にはSIGNES DE PONCTUATION だけになるが、皆が言える。
・DIALOGUEを他人事で終わらせてはいけない。DIALOGUEをCONCRETISER, PERSONNALISERすることにより、学習者はより自分のものにすることが出来る。例えば、問い合わせをしている内容のDIALOGUEの舞台をフランスから日本へ移す、それに伴い登場人物のフランス人と日本人を入れ替える、等。
・DIALOGUEは最後TACHE FINALEとしてやる。
・教科書を使わずに、パワーポイントなどを利用して会話練習し、80〜90%わかる状態になったところで、COMPREHENSION ORALEとしてDIALOGUEをやる。
・教科書をほとんど使わずに教科書の内容をやる。授業でやったことを家で思い出すためDIALOGUEを見るよう学習者に指示をする。

◆DIALOGUEから派生するその他の問題
・(学習者の立場から)日本の学校では音節も発音記号も教えてくれない。
・初心者に発音記号は教えない。音、つづり以上に覚えるものがあるのは大変だから。しかし音節は音で教える。あるいは拍で教える。

◇おわりに
教科書のDIALOGUEという焦点を絞ったテーマを議題に、大変有意義な議論がなされた。たかがDIALOGUE、されどDIALOGUE。活用方法(あるいは活用しない方法)は教師次第であると、報告者は身にしみて感じた。

(M.K.)




***************************************
PEKA (ペダゴジーを考える会)News Letter
配信システム:まぐまぐ
http://www.mag2.com/

*PEKAの活動について詳しくは
http://peka-web.sakura.ne.jp/

* PEKAへのカンパは以下の口座でお受けしています。
郵便振替口座 00120-1-764679  PEKA
***************************************

◎PEKA (ペダゴジーを考える会)News Letter
  のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000228585/index.html 
  このメールに返信すれば、発行者さんへ感想を送れます。

上へ


Pékaトップページ     過去ニューズレターMENU